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第三十八話


 オークエンペラーを倒しきり残るはハイオークとオークロードの群れとはいえ、それは掃討戦と呼ぶには余りにも厳しい戦いだ。

 オークは数え切れないほど多く、油断ならない相手との戦闘の連続で体力と精神力が少しずつ削られていく。

 さらに魔石を回収する時間が無い為、倒したオークが次々に共喰いされ進化もしくは強化されていくばかりである。

 そして肉壁のように密集したオークの軍勢を倒し、乗り越えた先にようやくコンフラットたちの姿を発見した。


「コンフラット!」


「レックスさま……無事でよかっ……」


 駆け寄ると安心して力尽きたのかコンフラットが倒れこむのでそれを受け止める。


「大丈夫か、コンフラット?」


「ええ、何とか。鉱山には一匹たりとも通していませんよ……」


 己が傷付いても心配するのは同胞のことなのは立派だが、自身の命も大切にして貰いたい。

 おそらくバラバラになって戦うのでは分が悪いので密集陣形で戦っていたのだろうが、怪我人が多く出る中でコンフラットとディアを中心に守りを固めていたのだろう。

 陣形の中心ではケインたちを含め傷ついた兵士が休息をとり、残った兵がボロボロになりながらも辛うじてオークたちの進行を食い止めている。

 そしてそのお陰で知能を有したオークが鉱山に向かうのを防げているのだが、しかしこれ以上は厳しいだろう。

 コンフラットたちドワーフもケインたちも、既に満足に戦闘を行える状態ではない。


「お前たち、俺が殿を務めるから一旦鉱山まで引け」


「そんな! 流石にこの数を相手に一人では……」


「気持ちは分かるが動ける人員が残ってる今に引かなければダメだ。いいかこれは提案ではなく命令だ」


「……分かりました」


 コンフラットの気持ちは分からなくもないが、ここで判断を誤れば全てを失うことになりかねない。


「なら急いで準備を進めろ。動ける奴は怪我人に手を貸すんだ!」


 一通りの指示を済ませて防衛線を保っていた兵士達と交代し、オークとの戦闘を再開する。


「お前たちも早く行け!」


「はい!」


 急ぎ後退していくドワーフ兵であるが、オークたちも簡単には逃すまいと迫ってくる。

 俺はその間に入り込み、順々に食い止めていく。


「死にたいやつから前に出てこい。ここから先に簡単に進めると思うなよ!」


「ブモォオオオオオ!!」


 言葉を理解したのか分からないがどうやら言わんとしたことは伝わったようで、挑発に乗せられたオークが突っ込んでくる。なので一体ずつ相手をしていくのだが、学習をしたオークが周囲に広がり複数体で一度に襲ってくる。


「上等だオーク共!」


 流石に一振りで倒しきるのは難しいので、徐々に後退をしながら確実に倒していく。

 皆が退却し終えるまでの時間を何とか稼ぎながら戦い、牽制を続けながら戦う。

 しかし徐々にそれすらままならなくなり、圧倒的な数の差を持ってして遂には懐近くまで侵入を許してしまった。


「舐めるなよ!」


 懐近くまで入られると剣は振るい難いが、それでも体術を持ってして戦う術は身につけている。

 だがそれはあくまでも緊急回避にしかならず、このままでは分の悪い戦いに持ち込まれてしまう。

 オークの進行を許してしまうことになりかねないが一旦距離を取り直して戦い直そうかと思ったその時、背後から一人の人影が現れオークに斬りかかる。


「苦戦しておるようじゃのう、レックスよ」


「カザフ!? なんでお前がここに?」


 王は民草の心の支えである。だからこそ万が一があってはならないので戦うことなく鉱山に籠っていたはずなのに、なぜここに現れたのか。


「必要ないやもしれんが、コンフラットに頼まれお主を助けに来たのだ。なに遠慮することは無い、手を貸すぞ」


「いやそうではなく、お前に何かがあってはドワーフの里がだな……」


「何だワシのことを心配してくれておるのか? だがなに簡単なことよ、既にその役目を引き継げる者がおるとわかったでな。何も心配はしておらんわ」


「それは……いや何でもない。それならさっさとここを片付けてしまおう」


「ああ、その通りだ。いつまでもワシの里で好き勝手させるわけにはいかんでな!」


 こうしてドワーフ王であるカザフと共にオーク共を駆逐していく。

 カザフはかつて俺が新米であった頃に共に戦ったことのある戦友だ……というより手違いで直接戦ったこともある。

 だからこそカザフの力量はよく分かるのだが、一人では一振りした後の隙に距離を詰められてしまうが手練れが増えた二人でならば戦いは安定していく。


「腕は鈍っていないようだなカザフ!」


「当然だ……と言いたいところだが、歳には勝てん。そう長くは戦えんぞ」


「ハハハ、お互い歳はとりたくないものだな。ならさっさと終わらせようか」


「ああ、そうだな」


 こうしてようやくまともにオークと斬り合える状況になり、今度はこちらから斬りかかりオークを押し戻す。

 そして治療を終えたコンフラットたちが再び駆けつけた時には、既に戦いは終えてオークの死体の山が築かれた。


「レックス様! それに父上、大丈夫ですか!?」


「ああ、問題ない。だがもう腕が上がらんわい」


 カザフは地べたにへたり込み、コンフラットにそう告げた。

 そして俺も立ってはいるが、既に力はかなり消耗してしまっている。


「コンフラット、悪いが後は任せていいか?」


「ええもちろんです。レックス様と父上は、休んでいてください」


「そうか、ならよろしく頼むぞ」


 既に危機的状況とその原因となる脅威は倒したがまだ完全にスタンピートの影響が無くなった訳では無い。

 それに残された魔石をそのままにしておく訳にはいかないのだ。


 こうして残る処理をコンフラット率いるドワーフ兵に任せ、ようやく事態は収束に向かっていったのであった。

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