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第三十二話


 ドワーフ王のカザフの館に招待され、俺たちはドワーフの里の中を移動する。

 初めて見る物が多いケインたちは目を輝かせながら周囲を見渡す。

 しかし里の全体はどこかピリついた雰囲気に包まれおり、そして不安そうな顔をしている者が多くいた。

 そしてその理由は、館に着きカザフの口より聞かされる。


「……先日、変な男が突如訪れてな。直ぐに取り押さえようとしたのだが、色々と喚きよったのだ」


「その男は今どこに?」


「いや、捉えたあと直ぐに自害しおった……」


「そいつは……やはりノモマなのか?」


「知っておるのか?」


「ああ……知っているが、知らない。そんな奴らだよ」


 騎士団でさえノモマ教団について分かることなど殆どない。

 これまでに脅威ではなかったので、ドワーフ王と言えども知らなくても仕方がないだろう。


「何だそれは、結局何も分からんのではないか」


「そうだよ、だからこそ厄介なのだ。しかし、その男は何を言ったんだ?」


「たしか……『魔神の復活の時は近い。ノモマを信じる者は救われる』などと言っていたな」


「魔神? なんだそれは?」


「ワシも詳しくは知らぬ。だが、どうやらそこのエルフは知っているようだぞ?」


 カザフはディアを指し示す。


「知っているのか、ディア?」


「……詳しくは分かりません。ですがエルフに伝わる古い言い伝えの一つに、魔神に関するものがあります……」


 ディアが教えてくれたのはエルフの里に伝わる、古い古いお伽話だ。

 エルフの中で魔神は全ての魔物を従えて世界に厄災をもたらし、顕現したとしたら世界を破滅に導く存在として扱われているらしい。


「そんな奴が本当にいるのですか?」


 ケインが驚き声を上げる。

 それもそのはず魔神の存在などこれまでに聞いたこともないし、降って湧いたような突然の話なのだからそれも当然だろう。

 俺も全く同じ気持ちで、ケインが先に声を上げなければ俺が声を上げていた。


「本当にいるのかは分かりません。ですが遥か昔に現れた魔神は世界を滅ぼしてまわり、そして眠りについたとされています……」


 魔神が眠りについた理由分かっていないらしいが、今に繁栄を築いている人々は滅ぼされた文明の後から生まれた種族なのだそうだ。

 しかしだからこそ、人々にはその歴史が伝わっていないのかも知れない。


「しかし、なぜノモマは魔神を復活させようとしているんでしょうか?」


「分からんが、少なくとも今の世界に不満を抱いているのは間違いないだろうな」


 ノモマ教団は魔神の復活の為なら自らの命すら賭す。

 だからこそトカゲの尻尾切りで、これまで情報を掴めきれなかった。

 しかしこれだけ派手に動き出したということは、何かしらの手掛かりを掴める可能性が高い。


「カザフ、男がどこから現れたなどは分かっているのか?」


「うむ……どうやって里に入り込みおったかは分からんが、拠点とされていた場所は見つけ出したわ」


「……俺をそこに連れて行ってくれないか? 何かしらの手掛かりを掴めるかもしれないしな」


「それなら、私たちもついていきます!」


 レイナが声を上げるが、それは難しい。


「それは難しいよ。今の状況で顔を知られていないお前たちを連れて行けば、良からぬ混乱を生んでしまうだろうしな」


「そうですか……」


「まぁなんだ、せっかくドワーフの里に来たんだから色々と武器を見せて貰うといい」


「本当に見せて貰えるんですか!?」


 ドワーフが作った装備は冒険者の中でも一流の者のみが身につける物だ。

 それに市場に出回る数も少ない物なので、自由に見ることが出来るなどドワーフの里に来なければ出来ないことである。

 それにその中でもカザフの屋敷にある装備はどれも一級品だ。


「ああ、問題ないよなカザフ?」


「勿論だ、直ぐに手配をしよう。それとレックスの案内には、現場に立ち会った兵と……コンフラットよ、行けるか?」


「勿論でございます、父上」


 こうして俺はケイン達、そしてディアと一旦別れ、コンフラットと共にカザフに呼ばれた兵と会う。


「レックス様、コンフラット様、私はガルドフでございます。案内を致しますので、付いてきて頂けますでしょうか?」


「ああ、よろしく頼むよ」


 現場に向かう道中、現れたというノモマ教団の男の言動についてさらに聞く。

 後々に考えれば、その男の言動は再びこの地に訪れることを暗示していたのだが、しかしこの時はまだドワーフの里に忍び寄る影に気付いてはいなかったのであった。

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