第二十話
ワイルドボアキングの討伐報告を終えた時、アジン、ドゥヴァ、トゥリーの三人がギルドに戻ってきた。
何やら伝えたそうにこちらを見てくるがバツが悪いのかこちらに近づいてこない。
仕方がないので素材の売却などはケインたちに任せることにし、俺は話を聞くためにアジンたちの元に行く。
「遅かったな」
「いえ……その……」
「何か言いたいことがあるのだろう?」
「僕たちはどうすれば強くなれますか……いえ、強くなる方法を教えて下さい!」
ドゥヴァとトゥリーがお願いをしてくる。
しかしアジンは憮然とした表情を崩さず、距離を保ったままだ。
「俺は……俺は……」
Eランクのケインたちが自分たちよりも強くなっていることを未だに信じられないのだろう。
「強くなる方法は人それぞれだ。別に無理に変える必要はない。ただ変わろうという気持ちがあるなら俺も、そしてジャン……ギルドも手を貸してくれるはずだ」
決めるのは他の誰でもない、自分自身だ。
強要するつもりはさらさらない。
「俺には無理だ。あんな馬鹿げた鍛え方をするつもりなんてない。ドゥヴァとトゥリーが参加するならパーティーは解散だ」
アジンは決断した言葉を残し踵を返して去って行く。
ドゥヴァとトゥリーは足早に受付へ向かい依頼の失敗報告をし、こちらに頭を下げてからアジンを追う。
本来であれば失敗報告には状況説明などをギルドから求められるが、今回は俺たちと重複しており既に報告を済ませてあるので問題ない。
「アジン、待ってくれよ」
しかし、やはりアジンはCランクにまで上り詰めた下手なプライドが邪魔をしているようだ。
変わる意思を見せたドゥヴァとトゥリーがそれに巻き込まれるのは可哀想だが、仲間との信頼を大切にすることもまた重要だ。
そしてこのあと、彼らをここファスタの街で見かけることはなかった。
「話は終わったのですか、レックスさん?」
「ああ……彼らの道は彼らで決めるさ」
少し重たい空気になったところで、受付嬢のベルが話を変える。
「ところで皆さんに、良い知らせが二つあります!」
「はい? 一体なんですか?」
先頭にいるケインがベルに聞く。
「一つは先ほどの彼らが依頼を失敗したので、代わりに達成したことにすることで報酬がさらに増えます!」
「おお、やった!」
四人とも喜びの声を上げる。
ここまであまり依頼を受けてこなかったので、懐事情が寂しいことも関係しているだろう。
しかしこれは予想出来たことなので、もう一つの知らせが何なのか聞く。
「それで、もう一つとは一体なんだ?」
「皆さん、Dランクへの昇格条件を満たしました! ……と言っても達成した依頼数が少ないので何か簡単な依頼をいくつか達成してきて貰わないといけないのですがね」
「ほ、本当ですか!?」
お金で喜んでいたレイナが慌てた様子で聞く。
「ええ、私は嘘を言いませんよ……ごめんなさい、間違ったことはあります」
偉そうに言うのでジッと見ると、最初から間違った情報や不足した情報を渡していたことを誤ってくる。
「今回の昇格は間違いないんだな?」
「はい、それはもちろん。以前のキラーマウスも依頼ランクの見直しをしてDランク相当になり、今回もD、もしくはCランク相当の依頼を達成したことで昇格条件の最大の難関を達成したことになります」
話を聞くと昇格条件は大きく二つあるらしい。
一つは依頼の達成数と達成率だ。
何と言っても日々ギルドに届く依頼を確実にこなしてくれる人材ほど評価されるということだろう。
そしてもう一つは現行のランクよりも上のランクを複数回達成することだ。
達成数と率だけでは、昇格しても依頼についていけない可能性がある。
だからこそ問題ないということを証明しなければならない。
そして一度ではたまたまの可能性もあるので、最低二回は達成して見せなければならないらしい。
「本当に俺たちがDランクになるんですね!」
「ああ、そうみたいだな……ってそんなに嬉しいのか?」
ただDランクに昇格するだけだというのにケインが涙している。
「それはそうですよ。Dランクということは、俺たちが晴れて中級冒険者の仲間入りするということですよ!」
「ああ、そういえばそうか」
冒険者はFからSまでランク付けされる。
そのなかでFとEが初心者冒険者、または初級冒険者と呼ばれ、DとCが中級冒険者、BとAが上級冒険者、そしてSが特級冒険者と呼ばれるのだ。
ここははじまりの街と呼ばれる場所でもあり、Dランクに到達することが一つの目標みたいなものなのだろう。
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
「感謝なんていらないが、それよりまだ幾つも依頼を達成しないといけないんだろ? それが面倒だな……」
「それは僕たちに任せてください! ……というよりキラーマウスは調子に乗っていましたが、本来はそういう依頼を受けるのが初心者冒険者ですからね」
「お前たちがそれでいいなら、任せるが──」
「ダメです。レックスさんには別に受けてもらう仕事が一杯ありますから」
エルサが話に入ってきて、そう告げる。
「……さいですか」
ケインたちの育成にかまっている間にもギルドには仕事が溜まっている。
そして以前エルサとお酒を酌み交わしたとき、時間があるなら仕事を手伝うように頼まれていたのだ。
「なら、これからしばらくは別々に行動しよう。お互い、Dランク昇格に向けて頑張ろうな」
「「「「はい!!」」」」
こうしてDランク冒険者になるために、それぞれで依頼をこなす日々が始まる。
そして中級冒険者になった時、思わぬ来客がやってくるのであった。
──第1章完──




