第十九話
ケインたちの戦いを邪魔しようとしてきたCランク冒険者のアジンたちを一蹴した。
というより、アジンがただ全力で突っ込んできたのでいなしたら木に突っ込んだのだ。
そして残るとドゥヴァとトゥリーは……以下、略である。
「お前らは少し、そこで反省しておけ」
完全に伸び上がってしまっているので返事は無い。
「さて、あいつらはどうなったかな」
問題は起こっていないと思うが、急ぎ元いた場所に戻る。
すると、ちょうどレイナの魔法で動けなくなったワイルドボアキングが、ケインの剣によって仕留められる所であった。
「あっ! レックスさん、見てくれましたか?」
「……ああ、見ていたよ。よくやったなみんな。逃げ出さずに最後まで良く戦った。ほら、これを飲んでおけ」
最後はほとんど見ていなかったのだが、それを伝えるとガッカリされそうなので嘘をつく。
そしてボロボロに傷付いた彼らに、飲み慣れた回復ポーションを手渡す。
普通に飲んでいるが、これはそこら辺で売っている物より遥かに質が高いのだが、それは言わない方がいいんだろうな。
この回復ポーションによって筋肉の再生を促すことで、普通に鍛えるよりも遥かに早く強くなれる。
Eランク冒険者がおいそれと手を出せる代物では無い。
「さぁ残る仕事を片付けて、早く帰ろう」
「はい!」
周囲には倒されたワイルドボアの死体がたくさん転がっている。
当然、最大の目的はワイルドボアキングの素材ではあるが、その他の素材も高く売れるので、Eランクの彼らにとっては貴重な収入源だ。
俺であれば魔石だけ回収し後は全て燃やしてしまうが、牙や毛皮も回収していく。
「剥ぎ取りが終わったら声を掛けてくれ。残ったものは全て燃やすから」
魔物の死体は放置すると色々な問題を引き起こしかねない。
燃やせないのであれば、せめて埋めるなどの処理をしなければ後々に面倒なことになる。
たとえその場で処理できないのであれば、ギルドに報告して処理を代行してもらわなければならないほどだ。
これを怠るとアンデッド種が溢れ出したり、死体を貪る他の魔物が増える可能性もある。
処理に手間は掛かるが、討伐したのであれば行わなければならない義務なのだ。
「これで最後だな。早く素材を回収しよう」
「……そうしたいのですが、キングはデカすぎて僕らには難しいといいますか……」
「何が言いたいんだ、ケイン?」
「すみませんが俺たち代わりに、牙と魔石の回収をお願い出来ないでしょうか?」
「ああ、そういうことか。ちょっと待ってろ」
キングの牙は普通のワイルドボアと比べるとはるかに硬い。
生半可な力では剣の方が折れかねないだろう。
そして大きすぎて剥ぎ取りも難しいだろうから、不必要な傷をつけないように解体する。
「ほら、これで手が届くだろう? こいつを倒したのは君たちなんだ。魔石を取る資格も君たちにある」
魔石は魔物を倒したものが取ることが、騎士団そして冒険者の慣わしである。
盗まれるなどのトラブルを避けるためもあるが、魔物から魔石を取り出すことが勝者として名誉なことなのだ。
なのでケインたちで処理しやすいよう牙は根元から折り、そして四肢をバラバラにした。
「ありがとうございます!」
「なら俺は残った死骸を燃やしてくるから、後は任せたぞ」
こうして倒した魔物の処理を終えた俺たちは街に戻る…………のだが、すぐ近くでのびている奴らを放って帰る訳にはいかない。
寄り道してアジンたちの元に行き、レイナに回復魔法をかけてもらう。
「はっ……ここは?」
「起きたか、なら後は自分の足で帰れよ」
何があったのか気にするケインたちだが説明するのは面倒なので、足早にこの場を去ろうとする。
「ま、待て!」
「あ?」
「黙れアジン! すみませんが、待って頂けませんでしょうか?」
自ら自滅したアジンは未だに調子に乗っているが、直接叩きのめしたことで身の程を弁えたドゥヴァとトゥリーがアジンの頭と口を押さえて言い直してくる。
「……なんだよ一体」
「ワイルドボアキングは一体どうなったのでしょうか?」
「倒したよ……ああ、勘違いするなよ俺は一切、手を貸していないからな」
「まさか、そんなわけが──」
「信じれないか? だが事実だ。信じないでそこで立ち止まるか、彼らの強さを認め、己を改めるかは好きにすればいい」
未だにEランクのケインたちだけで、巨大化したワイルドボアキングを倒したことを信じられない彼らは立ち尽くす。
答えは自分たちで出さなくてはならない。
これ以上は掛ける言葉もないので、街へと歩を進めることにする。
「さぁ、帰るぞ」
「いいんですか、放っておいても?」
「彼らが自分たちの弱さを認めない限り、俺にはどうすることも出来ないからな」
邪魔をしようとしてきたことは問題だが、彼らはまがいなりにもCランクまで到着した冒険者だ。
このはじまりの街と呼ばれる[ファスタの街]では貴重な戦力に違いない。
そして冒険者の育成は何も新人だけに限る必要もないので、彼らにも頑張って貰いたい思いもある。
だが下手な自信を持ち己の過ちを認めない人を、俺は教えるつもりはないし関わるのも面倒だ。
本気で変わりたいと思えるならその手助けはするが、そうでないなら俺が目を掛けることはない。
こうして俺たちは戦いを終えて、ギルドへと戻り報告をしに戻る。
そして報告を終えたころ、決意した表情をした二人と、未だに納得のいっていない一人が姿を現わすのであった。




