第十八話
想定外の大きさをしたワイルドボアキング。
その体躯の大きさだけであればトカゲどもにも匹敵するだろう。
そしてその強さはケインたちが確実に倒せる保証が出来ないほどだ。
しかし成長のためにも今回は手を貸すことはしない。
「ゴルドフ、受け止めなくてもいいから進路を逸らしてくれ」
「うむ」
ケインがゴルドフに指示を出し、ワイルドボアキングに立ち向かう。
「リアーナ、私たちはケインの援護をするよ」
「ん、分かった」
そしてリアーナとレイナがその援護をするようだ。
「……頑張れよ」
俺は戦いの邪魔にならないよう後退し、少し距離をとって見守ることにした。
ワイルドボアとの戦いはここに到着するまでの間に伝えてある。
そしてそれはキングとの戦いにおいても変わることはない。
リアーナが放った矢が眉間に突き刺さる。
「ありがとう、リアーナ!」
弱点である場所への攻撃で怯んだ隙に、ケインが突っ込んで剣を振るう。
「プギュアァァア!」
ケインの渾身の一振りは致命傷を与えるには至らないが、確実にダメージを与えた。
しかし逆にそれは危険な状況に陥ることに繋がる。
手負いで捨て身も厭わなくなった敵ほど、厄介な相手はない。
「ケイン、危ない!」
レイナが油断したケインの背後から迫り来るのを見て叫ぶ。
暴れ出すワイルドボアキングによってケインが踏みつけられそうになっているのだ。
「ふん!!」
それをゴルドフが間に入り受け流す。
「ありがとう、ゴルドフ!!」
「そんなこと言ってないで、一度距離を取る!」
「光の精霊よ、光を放て、フラッシュ!」
レイナが目眩しの魔法を放って時間を稼ぐ。
しかし対処すべきはワイルドボアキングだけではない。
アジンたちを追って先に飛び出したキングに遅れ、普通のワイルドボアが周囲に集まってくる。
「「「「「プギャァァァア!!!」」」」」
「やばい、やばい、やばい、どうすんだよこれ!」
ケインは慌てふためき、動きを止め剣を下げてしまう。
「落ち着いてケイン! レックスさんの言葉を忘れたの? 死にたくなかったら、手足と頭を止めない!!」
レイナが叱咤し、すぐに次の行動に移させる。
そう、最善の答えが見つからないのであれば、もがいてもがいて、そして突破口を探すべきだ。
闇雲に動くのでは意味がないが、どうすれば良いか考え続けて動けば答えは見つかる。
「そうだな……よし、ならまずは──」
「リアーナ、一度に攻撃されないように牽制して! 一匹ずつなら私でも倒せるから。その間にケインとゴルドフであのデッカい奴の攻撃を防いで!」
「ん、任せて」
「お、おう」
ケインの言葉を待たずしてレイナが指示を出す。
どうやらケインよりもレイナの方が、皆を率いるリーダーに向いているのかもしれないな。
この調子でいけばおそらく問題なくワイルドボアキングを倒せるだろう。
しかし……。
「ここから先は通行止めだ」
俺はワイルドボアキングのいる場所から更に離れた場所に降り立つ。
「なんだオッサン、Eランクのくせに俺たちの邪魔をするのか?」
俺の目の前にいるのは、戻ってきたアジン、ドゥヴァ、トゥリーの三人組だ。
「お前たちは戦えないと判断して逃げ出したのだろう? 今更何をしに戻ってきたんだ?」
「うるさい、俺たちは逃げてはいねぇんだよ! 一度態勢を整えただけだ!!」
そんなはずがないことは、明白だ。
こそこそと遠くからこちらの様子を伺っていたのが何よりの証拠だ。
おおかたケインたちが逃げ出してこないから様子を見にきたら、ワイルドボアキングが倒せそうなのを見て手柄を横取りしようと戻ってきたのだろう。
「たとえそうだったとしても、今戦っているのは彼らだ。獲物の横取りなんて恥ずかしい真似をするつもりなのか?」
「ハッ! 何を言ってるんだ。俺たちは苦戦して魔物に返り討ちに合いそうなEランク冒険者を#助ける__・・・__#んだよ」
アジンはニタニタとしながら、そうのたまう。
ケインたちは今、Dランクよりも上の可能性がある魔物に挑んでいるのだ。
Cランクのアジンたちが助けだしたといえば、話を聞いただけであればそう思われるだろう。
だが事実はケインたちの己の力だけでその魔物を打ち倒そうとしている。
そしてその手柄を横取りしようとしているに過ぎない。
「それは有難い提案だが、あいにく間に合っている。問題なく全ては終わるが、心配ならそこで見守っていてくれないか?」
「聞き分けが悪いなオッサン! 俺たちはそこを退けと言ってるんだ!!」
「なら力づくでどかしてみろ。Eランクの俺よりCランクのお前たちの方が強いなら出来るだろ?」
「はっ! 死んでも後悔するなよ、オッサン。先に喧嘩を売ったのはそっちだからな!!」
「ああ、問題ない。それに無駄な遊びに付き合うほど、俺は優しくないからな」
こうしてアジンたちの思わぬ横槍を軽くいなし、ケインたちの戦いの行く末を見守るのであった。




