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騎士団から追放されたので、冒険者に転職しました。  作者: 紫熊
第1章 初心者冒険者
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第十五話


 レオに事情を話したところ、快くご馳走を作ってもらえることになった。

 ただし宿に連れてくるのはお客さんのために避けたいと言うことなので、ギルドの中で振舞ってもらう。


「ここで作れそうか?」


「そうですね……狭いですし、火を使う場所はなさそうですが、それはこっちで何とかします」


「そうか、まぁ何か困ったらジャンに言えば何とかなるだろ」


「ハハハ、相変わらずジャンはレックス様に頭が上がらないんですね」


 レオの宿を紹介してくれたのはジャンだが、とうぜん二人は知り合いだ。

 ジャンがまだ冒険者で俺が騎士団にいた時に、何度となくレオのいる食事処に連れて行った。

 だからこそ俺のこともジャンのことも、そしてその力関係もよく知っている。


「なら後は任せたからよろしく頼むな。俺はちょっとあいつらの様子を見てくるわ」


「はい、わかりました。ですが、程々にして上げて下さいよ」


「ハハハ、それはどうかな」


「悪い顔してますよ……その初心者冒険者たちはジャンとか、鍛えられた冒険者とは違うのですから死にますよ」


「そこまではしないよ。だが俺の訓練が走らせて終わりな訳がないがな」


 本気で心配した顔をするレオを放置し、俺は街の外に向かう。

 その途中、すれ違う冒険者たちがクスクスと笑っていたので何があったのか聞くとケインたちのことを馬鹿にしていた。


「そんなにおかしいと思うのか?」


「それはそうだろ、あんなことに何の意味があるって言うんだよ。あんなの馬鹿のすることだろ」


「君たちは随分と自信があるみたいだが、それほどランクが高いのか?」


「当たり前だろ! オッサンは俺らのこと知らないのか? 俺たちはこの街で最も期待されてるCランク冒険者だぞ?」


 アジン、ドゥヴァ、トゥリーと名乗った三人組が、ここファスタの街では最も優秀な部類に入る冒険者らしい。

 初心者冒険者が多く集まるこの街では優秀なのかもしれないが、彼らを見るにジャンの気苦労が偲ばれる。


「そうか……だが君たちが馬鹿にした冒険者は、きっと直ぐに君たちを追い抜くぞ」


「何を言ってんだオッサン、そんなわ──ヒッ!」


 あまりにも馬鹿にするので思わずキレそうになったら、三人組は怯えて逃げ出してしまった。


「いかんいかん、俺としたことが」


 Cランクに到達するぐらいだから、彼らは弱いわけではないのだろう。

 だが努力する者たちを笑うほど才能に恵まれているかと言われれば否だろう。

 そしてケインたちを馬鹿にされると、俺まで馬鹿にされている気がしてイラっとしてしまった。


「さて、あいつらも頑張っているみたいだし、そろそろかな」


 走りださせてから数時間が経過しただろうか。

 流石にヘトヘトになっている彼らを順次止めていく。


「ラストだぞ、ケイン!」


「ああ、くそぉ!」


 ケインが倒れこみながら、俺の目の前まで到着する。


「ほら、これを飲め」


「はぁ、はぁ、ありがとう、ござい、ます」


 走り終えた皆に、体力を回復させるポーションを飲ませる。

 それは強制的に肉体の疲労を回復させるアイテムだ。

 しかし精神まで回復するわけではない。

 そして疲れ切った彼らにさらなる試練を与える。


「さぁ、お前ら全員立て! これから戦闘訓練だ。俺に一撃でも攻撃を与えてみろ!」


「えっ!? そんなの無理です!!」


「何が無理なんだレイナ?」


「私たちが、レックスさんに攻撃を当てるなんて無理ですよ。それに今は疲れていますし」


「そう思うのか……だが問答無用だ! そっちがこないならこっちから行くぞ!!」


「いや、ちょっ、まっ!」


 剣を抜き威圧をすると、流石に彼らも動き出す。


「待てと言われて待ってくれる敵がいると思うのか? 死にたくなければ手足を止めるな、考え続けろ!」


 冒険者として依頼を受けていけば、困難な場面は幾らでもくる。

 そして気力、体力が無くても戦わなければ死ぬのだ。

 今回はレオに頼まれたから体力は回復させたが、騎士団であればそんな甘えは許さなかっただろう。

 技術は教えれば身につけられるかもしれないが、死に直面した時に動けなければ意味が無いのだ。


「どうした! そんなんじゃ、ゴブリンにも殺されるぞ!!」


 徐々に意図が伝わったのか真剣に立ち向かってくるも、まだまだ足りないものばかりだ。

 全くもって攻撃が届く気配がない。

 だがそれでも手足を動かし続けることにこそ意味がある。

 しかし日が暮れてきたので、そろそろ終わりにしなければいけない。


「さあ、最後にそれぞれ本気で攻撃を放ってこい!」


「「「「はい!!」」」」


 そうして四人とも力尽き、再び倒れこむ。


「まったく、だらしがないぞお前ら」


「はぁ、はぁ、そんなこと言ったって、もう、無理」


「そうか、ならお前たちの為に晩御飯を用意してたが無駄になるな」


「マジで!!」


「なんだ、ケイン。もう動けないんじゃなかったのか?」


「それとこれは──ひゃう」


 必死に立ち上がり震える足をリアーナが突き、ケインが変な声を上げる。


「ハハハ、焦らなくても料理は逃げないよ。少し休んでから向えばいい」


「うう、回復用のポーションはもうないんですか?」


 レイナが絞り出すように聞いてくる。

 ある事はあるのだが、しかし渡すわけにはいかない。


「そんなに飲み過ぎると食べられなくなるからな。レオの料理は美味しいから、お腹をとっておけ」


「レックスさんがそこまで言うなんて、それは楽しみですね。分かりました、美味しいご飯の為に頑張ります」


 こうして皆でゆっくりとギルドに戻り、レオの用意してくれた料理に舌鼓をうつ。

 疲労回復のために考えられた料理なのだろうが、ケインたちはそんなことを知る由もなく平らげてしまった。


「明日からも続けるから、今日はゆっくりと休めよ!」


「うぁーい」


 ケインが嫌な顔をするが、本気ではないだろう。

 そして嫌がっても基礎体力が身につくまでは、しばらく続けるつもりだ。


 こうして訓練は、地道だが順調に始まったのであった。

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