第十二話
エレメンタルウルフを倒し素材を回収したのちにギルドへと戻る。
あくまでも俺が受注した依頼は素材を集めることであり、討伐依頼では無い。
面倒だがエレメンタルウルフは牙や爪そして毛皮と、多くの有用な部分がある。
だからこそ討伐よりも剥ぎ取りの方が遥かに時間が掛かった。
「素材を確認をしてもらえるかな?」
「はい! もちろんです!!」
受付に行くと、受付嬢のベルが見違えた対応をしてくれる。
あのあとに相当にジャンからお叱りを受けたみたいだ。
「確認してもらっている間にギルド長に会いたいのだが、今はどこにいるかな?」
「今の時間ですと、部屋で仕事をしていますね」
「そうか、なら少しお邪魔させて貰うよ」
「はい、どうぞどうぞ」
「……まぁ、いいか」
下手に出てきすぎて逆に気持ち悪いが、本人がいいなら放っておこう。
目立たないように裏口から入り、ギルド長の部屋に入る。
「失礼するよ」
書類に向き合っていたジャンが、立ち上がろうとする。
「ああ、そのままでいいよ。仕事を続けてくれ」
「思ったより遅かったですが、何かあったのですか?」
「ああ、慣れない剥ぎ取り作業がな……そんなことより提案したいことがあるのだが」
「はい、何で……あっ、剥ぎ取りの人員が必要ですか?」
「いやそうではない。人手が足らないんだろ? なら俺が新人を育てやろう」
「いいんですか!?」
「いいよ、人手不足で困ってるんだろ? それに幾ら一時的に俺が問題を解決しても、根本が解決しないからな」
ランクさえ上がれば、ここの街からは旅立つ予定だ。
しかし魔物が一緒にいなくなってくれる訳ではない。
ここのギルドが抱えている問題を根本から解決しなければ、直ぐに行き詰まることになるだろう。
「レックスさんがそれで良いのでしたら、是非ともお願いしたいです。まさか剣鬼の指導を受けられるとはウチの職員も喜びますよ」
「いや、教えるのは職員ではない」
「えっ!? では一体誰に?」
「新人の冒険者にだよ。教えるとなれば徹底的に鍛えるから、他の仕事をしている時間は無くなる。ただでさえ足りない職員を減らすのは得策ではないだろ?」
「それはそうですが、せっかくの機会なので参加したい人も多いと思うのですが」
「それにだな、下手に積み上げられた基礎を持った冒険者は面倒だし……いや、ジャンのことを言ってるんではないぞ」
「それは分かっていますよ。でも確かに、基礎を蔑ろにした人が多いのも事実ですね」
「それが分かってるなら、なんでこんな状況に陥ってるんだ? 早く手をうてば、変わっていただろうに」
「そうしたい思いはありましたし、最初はそうしていましたが……」
話を聞くと初めは職員をしっかりと指導していたが、規模が大きくなるにつれ仕事量も増加し手が回らなくなったそうだ。
そしてせっかく育てた職員も、他のギルドに引き抜かれたらしい。
「そんなこと言っても育てることを辞めては駄目だろ。何のために俺がジャンたち経験が不足している冒険者と一緒に仕事をしていたと思っているんだ?」
「人手が足りないからでは?」
「はぁ、そんなわけないだろうが。高ランクの魔物を倒せる人材を育てる為だ。初めから何でも出来る人などいないから、その手助けをしていたんだよ」
「そうだったのですか……ではレックスさんも初めはそうだったのですか?」
「いや、俺の場合はだな……まぁ気にするな。それより指導する冒険者だが、せっかくだから前に一緒に同行した彼らにしようと思うんだ」
「分かりました、それなら彼らに声を掛けておきましょう」
「ああ、よろしく頼む」
話を終えた俺はカウンターに戻り、受付嬢のベルに話しかける。
「鑑定は終わったかな?」
「はい、勿論です。全くもって問題ありません。それとこちらが報酬になります」
「ああ、どうも……ってこんなもんなんだ」
かなりの量のエレメンタルウルフを倒したからもう少し高いと思っていたが、金貨数枚であった。
不思議に思っていると仕事に戻っていたエルサが答えてくれる。
「今回は素材を手に入れるというだけの依頼で討伐費用は含まれていませんからね」
「ああ、そういえばそうだったな……ならこれは君に上げよう」
「えっ!?」
「今回は色々と世話になったし、俺には必要ないからな。これで美味しいものでも食べてきな」
「ありがとうございます……でしたらこの後、一緒に食べに行きませんか? まだレックスさんはこの街のことをご存知無いでしょうし」
「いいのか? それならお願いしようかな」
確かにこの街のことはまだよく知らないし、それに他にもギルド職員だからこそ知っていることも聞いておきたい。
「それならもう少しで仕事が終わりますから、待っててください」
もうそんな時間なのかと思い外をみると、既に日が暮れ始めていた。
慣れない素材の剥ぎ取りも、もう少し練習しなければいけないな。
こうして夜の街にエルサと二人で消えていったのであった。




