第十一話
宿でレオとライラの二人と酒を酌み交わしながら夜が更けていった。
そして次の日、夜明けと共に宿を出る。
ギルド長から直接に依頼を受けるのに、あまり人目につきすぎると困ることがあるそうだ。
「待たせたなジャン」
「いえとんでもない。むしろこんなに早く足を運んでもらって申し訳ないです」
「まぁそれはいいが、俺は何をすればいいんだ?」
「はい、少々お待ちを。おいエルサ、こちらに」
ジャンに呼び出されたのはギルド職員だ。
金色の長髪をしたその女性は職員の割には、動きに無駄がない。
おそらくジャンと同じ冒険者あがりなのだろう。
そして俺一人で行動するより状況を把握している人がサポートしたほうが都合が良いということで、一緒についてくることになった。
「よろしくお願いします、レックス様」
「様はやめてくれ、俺はただの初心者冒険者だ。君はギルド職員なので他の人に変な目で見られかねないよ」
「そうですか……では宜しくお願いしますレックスさん」
「ああ、よろしく」
話がまとまったところで、ジャンが頭を下げてくる。
「依頼内容はエルサに教えていますから、後はよろしくお願いします」
「ああ、任されたよ」
少しずつ人の姿が出てきた通りを抜けて、街の外に出る。
「それで今日は何の魔物を倒すんだ?」
「はい、今日はエレメンタルウルフです」
「エレメンタルウルフって……そんな程度は普通の冒険者でいいだろ?」
「はい、そうなのですが最近は増えすぎて群れのボスが進化したみたいなのです」
「進化と言っても大きくなるとか、魔力が少し上がるぐらいだろ? それぐらい関係なくないだろうに」
「レックスさんにとってはその程度かもしれませんが、普通はその少しの差が大きいのです。それに進化したら倍以上強くなるので少しではないのですが……」
「そうか? 元が弱いのだから倍以上になった所で……まぁ、いい。ならさっさと終わらせよう、案内を頼む」
最初の仕事とはいえ、思った以上に弱い魔物が相手ということで気が抜ける。
この程度を倒せないようでは、冒険者の先行きが不安になるほどだ。
「レックスさん、そろそろです」
「ああ、そうみたいだな」
そんな会話をしながら、もう少し進むと普通のエレメンタルウルフが現れる。
エレメンタルウルフはその名前の通り、属性を持ったウルフだ。
火、水、雷、風などそれぞれの属性に合わせた魔法も使ってくる。
「まぁ、よくもこれほどの種類が集まったものだな」
「はい……最初は風そして火と徐々に増えて、今では殆どの属性のエレメンタルウルフがいます」
「なんでこんなになるまで放置したんだ。人手が足りなくても、数年どころの放置ではこうはならないぞ」
「本当に耳が痛い話なのですが、調査担当が仕事を蔑ろにしていたといいますか……」
「はぁ、ここのギルドはそんな奴ばっかりか。ジャンのやつ、本当に大丈夫なのか?」
「ジャンさんは頑張っています。ですがどこのギルドも人材難で、雇った者もそんな体たらくで、どうしようも……」
「ちがうな。いないなら育てればいいだけだろうに。初心者冒険者は毎年にやってくるのだから、人がいない訳ではないだろ?」
「そうですが、それこそ時間がありません」
「それは言い訳だ。やりようは幾らでもある……だが、どうやら俺が本当にやらないといけないのはそこみたいだな」
話をしながら目の前に現れたエレメンタルウルフを全て倒す。
「どういうことですか?」
「どうもこうもない。俺が育ててやろうと言ってるんだ」
「本当ですか!?」
「ああ、ジャンのやつにはこれから暫く世話になるんだから、それぐらいのことはしてやらなくてはな」
「それは非常に助かります。あの剣鬼の指導を受けられるとあっては、色々な人が集まるでしょうし」
「いや、そういう宣伝は面倒なことになりそうだからやめてくれ。それより、遂にボスが現れたみたいだぞ」
それは普通のエレメンタルウルフのゆうに五倍はあろうかというサイズであった。
そして生意気にもこちらに威嚇をしてくる。
「直ぐに終わらせるから、少し離れていてくれ……って言うまでもないか」
再び後方をみると、既にエルサはかなりの距離をとっている。
元より一人で戦うつもりなので良いが、元冒険者なら少しぐらい手伝ってもらいたいものだ。
しかしそれを頼むほどでは無いので、取り巻きのエレメンタルウルフを倒し、そしてボスを手にかける。
こうして戦いを終えて素材を回収し、ギルドに帰るのであった。




