クロス~失木 各人 作~
こんにちは、失木各人です。
今回はモン娘好きの、モン娘による、モン娘の為の小説ことLim(h→0)さん作『モン娘ワールド!!』とクロスさせていただきました。
今回登場するのは、拙作でサブキャラの、あの二人です!
吾輩は山猫である。名前は羅臼 麗名。つい2ヶ月ほど前までは女子高生をやっていた、元人間現妖怪だ。
さて、私は現在、『生前』着ていた衣服に身を包み、街中を歩いているる。隣には――
「おお、こりゃ降るかな? ならば今夜は雪見酒で決まりだなっ!」
シャツにジーパンと、一応それなりの格好した、生前お世話になった鬼の(妖怪的な意味で)体育教師、大江山 椿先生が歩いていた。歩くたびに胸が揺れているが、ブラジャー忘れてないでしょうね。
「先生、ブラジャー着けてます?」
「ん? キツかったから着けてないぞ?」
頭を抱えた。駄目だこの教師早く何とかしないと……。
「安心しろ! ユリエに言われてサラシは巻いてきたからな!」
ガハハハと豪快に笑う。ヤッパリ鬼だ。なんだかんだ言っても鬼だ。
何で私が椿先生と共にこうして街中を歩いているかというと、発端は1週間前に遡る。
「おーい、羅臼ー! 手伝ってくれー!」
「はー……い……」
椿先生は学校の用務員室に住みこんでいる。
その先生が『”いんたーねっと”を使いたい』と言い出したのが事の発端だった。
「ここを、こうして……」
「ふんふん、なるほど……」
妖怪になってからネットに触れることが無かった私は、調子に乗って様々なサイトにアクセスしてしまった。
そして見つけた、人外専用のチャット。
気がつけば、そのチャットの『しゃる』さんと、『練乳ぶっかけカキ氷』さんに、1週間後にとあるこれまた人外専用のカフェで会う事になったのだった。
正直嫌な予感しかしない。何よ『練乳ぶっかけカキ氷』って、ナニが言いたいのよ、ナニが。
そして現在、そのカフェテリアの前。
「行くのよ麗名。もう後戻りは出来ないんだから……」
「ん? どうしたんだ羅臼?」
「いいえ、何でもありません。」
気分はバルチック艦隊に挑む三笠。本日晴天ナレド波高シ……
私が実は軽い歴女だったことは穂高君も知らない事だ。いつ入るか分からないけど取り敢えず墓場まで持って行こうと思っている事の一つだったりもする。
カフェに入る。途端に満ちる妖気。よく見るとカフェにいる人(?)達は殆ど角やら羽やら獣耳が生えていたりした。
まさに百鬼夜行。まぁ私もだけど。
変化を解くと、温かい感触と共に私の手足は毛に包まれ、尾と猫耳が
生える。隣の椿先生を見ると、肌が赤くなり、角が生えていた。何故に本気モード?
「お客様、予約はされていますか?」
ウェイターと思われる耳の尖った女性が聞いてくる。待ち合わせをしているのですが、と言うと、少しお待ちくださいと言って店の奥に消えていった。
しばし待つ。
「お待たせしました。此方へどうぞ。」
私と先生は、ウェイターに導かれて歩き出した。
「じゃ、自己紹介といきましょうか。」
通されたのは個室。窓の外には知らない景色が広がっているが気にしない事にした。
私は言う。本屋で見つけた雑誌に、初めは自己紹介からって書いてあったからきっと間違いない。
何で調べたかって? 準備には手を抜かない女なのよ。私は。決してボッチだったから分からなかった訳じゃないわ、本当よ。
「じゃあ私から行きますわね。私は白雪 牡丹。雪女ですわ。」
私の目の前に座った、色白の少女が言った。白い和服と長い蒼い髪が合ってる。
「ちなみに、『練乳ぶっかけカキ氷』は私ですわ。」
アンタか。
雪女というから清楚な大和撫子を想像した私が馬鹿だったよ、ちくしょう。なんて性格してやがる!
「そういえば雪女って、やっぱり熱い物とか駄目何ですか?」
やっぱり気になるよね。これ。
ちなみに敬語なのは、万一相手が自分より年上だった時の事を考慮してである。
「ええ、時々溶けてしまう事もあって…」
そそそ、そうなのか…!?
「だから×××された時なんて、本当に内側から溶けて仕舞うのではないのかと…」
「わーわーわー!」
い、イキナリ下ネタを放った!?
「次はアタシだな。アタシは大江山 椿。見ての通り鬼だ。宜しくな!」
椿先生は平常運転。残念な雪女さんは先生に任せよう。
後で取り返しがつかなくなりそうだが、まぁ放置。
「次はボクかな?」
私の目の前に座った、黒いゴスロリ服を着たボブカットの女の子が言った。
ボクっ娘か……面白い素材と聞いている、期待させてもらおう。
「ボクはマルギッテ・フランソワーズ。ヴァンパイアなの。」
紅い目がキラリと光る。
「え、えーと、好きな物とか有るんですか?」
「うー……ん、やっぱり血なの!」
やっぱりかぁぁ! 即答だったよ!
それにしてもヴァンパイアか……どうしよう、この席に二人も鬼がいる……!
「羅臼、大丈夫か?」
椿先生に声をかけられ、ハッとする。第一印象、第一印象が大事!
そう自分に言い聞かせ、私は口を開く。
「こんにちは、私は羅臼 麗名。種族は山猫。よろしくお願いします。」
ニコリ。最後に微笑む。
……決まった!
しかし私を待って居たのは何故か沈黙。
馬鹿な!? 私のプランは完璧のはず! 何処だ、何処で間違えた!?
「えーっ……と、羅臼さん。山猫って、妖怪……なの……?」
ああ、そういうことね。
「へぇ〜、羅臼さんって元人間なんだ〜。」
あの後何とか立て直した私は、取り敢えず自分のエピソードを語った。そうしたらようやく理解してもらえたらしい。
頼んでいたアップルティー(アイス)を飲む。林檎の匂いが脳に染み渡る感じ、嫌いではない。
「さて、何を話しましょうか…」
自己紹介が終わった所で、急に静かになった。
わ、私、落ち着くのよ私! 昨日の晩に姉さんの布団の中で何度もシミュレートしたじゃない!
「じゃ、じゃあ手初めに趣味の話でも「ん? んなもん男の話に決まってんだろ?」
や、やりやがった! この鬼必要な過程全部ぶっ飛ばしてラスボス行った! さすが椿先生だ、私たちに出来ない事を平然とやってのける! そこにシビれる憧れ――
「――るかぁっ!」
叫んだ。またの名をシャウトした。
「せせせ、先生何てことしてくれたんですか!? 私がソフトな話題から始めようと思ったのに! これじゃあ初心者がバイハザいきなりHARDやらされるような物ですよ!? タイ◯ントに追い回された挙句You are deadですよ!? セーブポイントからやり直させろ!」
タイプライター欲しい。マジで。
「いやぁ、だってよ……」
コレの話、興味あるだろ?
そう言って椿先生は小指を立てる。
お、鬼だ、鬼がいる……!
反対側の席を見ると、フランソワーズさんは顔を赤くし俯き、白雪さんは何故か鼻息を荒くしている。
もう、これでいいや……。
私は、考える事を、やめた。
「じゃあ、私達から話しますね。」
白雪さんが言った。
こんなの言って失礼かもしれないが、正直言って非常に興味がある。
「うーんと、彼は……」
言葉に詰まる。そりゃそうだ、人を一言で表すのは難しい。
白雪さんの隣のフランソワーズさんも、考え込んでいた。
数分だろうか、考えた末に出た答えがーー
「勇者、ですわね。」
「勇者、なの。」
勇者?
「勇者ですよ、彼は。」
牡丹さんが、少し遠くを見ながら言う。
「誰にでも優しくて、紳士で、何時も人の気を遣ってくれる。ですけど……」
「女の子としては嬉しいけど、恋人としては不満……なの……?」
「? どういうことですか?」
私は尋ねる。
「やっぱり、旦那様は自分だけの物にしたい、というか、ボクだけを見て欲しいというか……」
フランソワーズさんが呟く。
「それをすると周りの女の子が傷つく。だから彼は中立を保っているのです。」
複数の人を同時に想う、か。
アイツは、私の事をどう思ってるのだろう?
「でも、言い方変えると八方美人――なの?」
「ですわね。まぁ仕方が無い面もありますが……」
白雪さんとフランソワーズさんが苦笑いをする。しかし、それは何処か嬉しそうな表情だった。
「僕も牡丹も、彼が好きなの。」
フランソワーズさんが言う。
「だけど、一線は越えないの。越えて来るのは、彼だから。」
…『彼』も、大変そうだな。
「ふふふ、その時は私のテクニックで彼を骨抜きにして魅せますわ……!」
妖しい顔で白雪さんが呟く。それは同時に恋する乙女のそれであり、戦う覚悟の現れでもあった。
……私は、あんな顔、出来るのかな……?
「大江山さんは好きな人がいるのですか?」
白雪さんが先生に尋ねる。
「うーん、気になってる奴はいるな。」
先生はその金色の、『誰か』を思わせる瞳で私を見た。
「ど、どんなお方ですか?」
白雪さんが身を乗り出すようにして聞いてくる。となりのフランソワーズさんも興味がありそうだ。
ここは先生に任せよう。『彼』との付き合いは、先生の方が長いはずだからーー
「だってよ。羅臼。」
噴いた。
ゲホゲホと咳き込む私を心配して、フランソワーズさんがティッシュをくれた。ありがとうと言って鼻をかむと、アップルティーの臭いが鼻腔を埋め尽くす。
もうやだ、死にたい。
白雪さんは標的を私にロックオンしてるし、フランソワーズさんも興味心身だ。
「えええ、えーっと、アイツは……」
「「「アイツは?」」」
頭の中を掻き回す。出てきた単語を並べる。
あと椿先生、何チャッカリ交ざってやがる。
「ヘボい。」
「「え?」」
「……ククッ」
思い付いた単語を並べる。自然と口が動く。
「髪はボサボサだし、服装に気は遣わないし、変にチキンだし。」
何故か悪口がつらつらと出る。
「おまけにこっちの気には全然気づかないし、それに弱いし――」
まるで台本を読んでいるかのように、口が動く。
「――だから、身体張る事しか出来ないヘボよ。」
椿先生が、ニヤリと笑った。そんな気がした。
「アイツ馬鹿よ。弱いくせに、平気で人の問題に口出して、それで大怪我しても解決して!」
涙混じりになるのも構わず、言う。
「そんなことされたら、好きになっちゃうじゃないっ……!」
手に温かい雫が落ちた。
「だけど、アイツの心に私は居ない。アイツの隣に私は居ない。」
代わりに――いや、代わりは私か――居るのは、アイツが助け、アイツが助けられた少女。
部屋がシンと静まり返る。涙は止まってくれない。
もうお開きにしようかな。そう思った時だった。
「で、それが何か問題か?」
椿先生が言った。全員がポカンとした表情をする。
「んなもん、がっつりハメ回して骨抜きにしちまえばいいだろ。」
「で、でも、そんな事したら…」
「これは女の戦いだ。拳はすっこんでな。」
椿先生がグラスを煽る。酒飲みてぇとボヤいた。
「居ないなら割り込めばいい、見てないなら首でも掴んで降り向かせればいい。あれだ、NTRって言うんだよな。そういうの。」
椿先生は鬼だ。
きっと、恋愛も失恋も、何度もしてきたのだろう。
彼女は一体どれだけ笑い、どれだけ涙を流してきたのだろうか?
たった十数年しか生きていない私には、想像出来なかった。
だからこそ、その先生の言葉はーー
「寝取り寝取られ、か…」
――非常に、心に響いたのだった。
「泣かないで、なの。」
フランソワーズさんが心配そうに、私にハンカチを渡してきた。
高級感漂う、レースのハンカチ。そっとそれで涙を拭うと、ありがとうと言って返した。
「恋するおとめは笑顔が一番、なの!」
フランソワーズさんが微笑む。それにつられて、何だか私も笑ってしまった。
「さて、今日は飲むぞー!」
「先生、私未成年です!」
陽気な鬼に当てられ、笑顔が溢れた。
「白雪さん、いいですか?」
「? 構いませんよ?」
椿先生と座席を替わる。椿先生は空気を読んでか、フランソワーズさんに猥談を持ちかけていた。
「私にとっての『アイツ』は、多分スターなんです。」
「スター、ですの?」
「そう、スター。」
画面の中にいて、手が届かない。それでも憧れる。そんな存在。
「ふうん……いいじゃありませんか。スターがアイドルと結婚するとは決まってはいないでじょう?」
「ですよね、はは。何やってたんだろ、私。」
アイツを手が届かない存在にしていたのは、私だった。
「ま、片想いなんてそんな物ですよ。何せ『片』想いですからね。」
「はは、確かに。」
「ですからこそ、両想いよりも燃えるのです。」
燃えるって何よ。
「ふふ、NTRですか……イイですね……溶けちゃいそうです……!」
何か地雷を踏んだらしい。
「此処は逢えて他の方を泳がせ、あの人の心が傾きかけた所で寝とる。ふふ、イイですね、イイですね。興奮してきちゃいました……!」
ポタポタと何か水滴が落ちる。あ、溶けてる。
水も滴るイイ女、なんてね。
あとフランソワーズさん、なんでいつの間にこっちの会話に混ざっているんですか……?
「ふふふ、寝とる、かぁ。他の娘に染まりかけている時にボク色に染めるの……フフフ……」
しまった、腹黒だった。
「おぅおぅ、面白い事になって来たなぁ。」
無責任に笑う鬼教師。
救援は望めず。ナンテコッタイ。
あの後、私達は彼氏の悪口で非常に盛り上がった。なんでだろうね。
その後、チャットのプライベートルームのパスワードを教え合い、別れた。もしかしたらまた会う事があるかもしれない。
外に出ると、すっかり夕方だった。綺麗な夕焼けが空を燃やしている。
商店街を歩く。
「なぁ羅臼、気分はどうだ?」
椿先生が尋ねてくる。
「スッキリしましたよ。突っかかってた物が取れた気分です。」
笑顔で返す。ふと商店街のガラスを見ると、見覚えのある笑顔をした私が映った。
「そうか。」
先生が、微笑む。夕日に照らされた角がキラリと輝いて――
――角?
先生の顔を眺める。整った顔の、
額の上部には、少し婉曲した、一対の角。
「せせせせ、先生っ!」
「ん? どうかしたか?」
どうかしたかもあるかぁ!
私は先生の手をとって駆けだす。
「先生、今日は飲みます! 朝まで飲みます!」
「お、いいねぇ!」
カラカラと笑う鬼教師。まだ気付いてない……!
「あぁー、もう、最悪っ!」
そんなわけで、私の平穏な日常は相変わらず行方不明のままだった。
ご拝読ありがとうございました!
いや、知っている方は、『ああ、またか』という感じで、知らない方は『え、そうなの?』という感じで。
失木各人は、魔物娘が大好きでございます。
なので、今回、この小説とクロスできて非常に嬉しかったのを覚えています。
小説のメインヒロインもドラゴンですし。
上手く書けているかわかりませんが、自分としてはキャラを維持するのに必死でした(汗)。
では、この辺で。




