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婚約破棄されたので離縁裁判所で働き始めたら、壊れた関係の“理由”が見えるようになりました  作者: すずり


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第34話 結果が出るということ

 それから、数日が経った。


 短いようで。


 だが。


 ——長い時間だった。


 リシェルは、記録室で一枚の報告書を見ている。


「——経過報告」


 あの案件。


 自分が“選んだ”結果。


 その続き。


 手に取る。


 だが。


 すぐには開かない。


 胸の奥に、わずかな緊張がある。


 ——これは。


 自分の選択の結果だ。


 ユリウスが、横から言う。


「来たか」


「……はい」


 短く答える。


「開けろ」


 命令ではない。


 だが。


 促す声。


 リシェルは、ゆっくりと紙を開く。


 視線を落とす。


 そして。


 読む。


 ——数日間のやり取りの記録。


 最初は。


 ぎこちない。


 形式的な会話。


 だが。


 徐々に。


 言葉が増えている。


 内容が、具体的になっている。


 感情が、混じり始めている。


 リシェルの指が、わずかに止まる。


 そして。


 最後の一文。


「——関係の再構築は困難と判断し、合意の上で解消」


 静かな結論。


 リシェルの視線が、止まる。


 ——終わった。


 結果としては。


 レオンと同じ。


 関係は、解消された。


 リシェルは、ゆっくりと紙を閉じる。


 数秒。


 何も言わない。


 ユリウスが、静かに言う。


「どうだ」


 問い。


 リシェルは、すぐには答えない。


 思考を整理する。


 結果。


 関係は、終わった。


 自分の提案は。


 ——結果を変えなかった。


「……結果は」


 一拍。


「変わりませんでした」


 正確に言う。


 ユリウスは頷く。


「そうだな」


 それだけ。


 評価はしない。


 ただ。


 事実を確認する。


 リシェルは、続ける。


「ですが」


 一瞬、言葉を選び。


「過程は、変わりました」


 その言葉に。


 ユリウスの視線が、わずかに動く。


「……ほう」


 短く返す。


 リシェルは、報告書を指で軽く叩く。


「最初は、形式的な会話でした」


 一拍。


「ですが、途中から感情の共有が発生しています」


 指で示す。


「不満、違和感、そして——」


 少しだけ間を置く。


「理解」


 その言葉。


 ユリウスは、黙って聞いている。


「結果として、関係は解消されました」


 リシェルは、はっきりと言う。


「ですが」


 一拍。


「“納得の上での解消”になっています」


 その違い。


 静かだが。


 確実なもの。


 ユリウスは、少しだけ口元を緩める。


「……そうか」


 それだけ。


 だが。


 十分だった。


 その時。


「で?」


 軽い声。


 マルタが、いつの間にか近くにいた。


「どう思った?」


 リシェルは、少しだけ考える。


 そして。


「……意味はありました」


 短く答える。


 マルタは、ニヤリと笑う。


「でしょ」


 軽く言う。


「結果が同じでも、中身は違う」


 一拍。


「それが人間関係」


 その言葉。


 リシェルは、静かに受け取る。


 確かに。


 今回の案件。


 終わりは同じだった。


 だが。


 そこに至る過程は、まったく違う。


 女性は、理解していた。

 男性も、言葉を交わしていた。


 ——“知らないまま終わる”ことはなかった。


「……後悔は」


 リシェルは、ゆっくりと呟く。


「少ないはずです」


 その言葉。


 ユリウスが、わずかに頷く。


「そうだな」


 短く肯定する。


 リシェルは、静かに息を吐く。


 胸の奥にあった緊張が、少しだけ解ける。


 結果は変わらなかった。


 だが。


 意味はあった。


 その感覚が。


 確かに残っている。


 その時。


「まあ」


 別の声が割り込む。


 レオンだった。


 壁際に立ち、腕を組んでいる。


「非効率なのは変わらないがな」


 淡々と言う。


 リシェルは、視線を向ける。


「……そうかもしれません」


 否定しない。


 だが。


「それでも」


 一拍。


「価値はありました」


 レオンは、少しだけ目を細める。


「結果は同じだ」


「はい」


「なら、意味は薄い」


 合理的な指摘。


 リシェルは、静かに答える。


「意味は」


 一拍。


「結果だけでは測れません」


 その言葉。


 レオンは、わずかに沈黙する。


 そして。


 小さく笑う。


「そういう考え方もあるか」


 完全には否定しない。


 だが。


 認めてもいない。


「次は」


 レオンは続ける。


「結果も変えられるか、見せてもらおう」


 その言葉。


 挑発でもあり。


 期待でもある。


 リシェルは、静かに頷く。


 胸の奥で、何かが定まる。


 結果か、理解か。


 その選択。


 まだ、答えは出ていない。


 だが。


 少なくとも。


 ——一つは証明した。


 理解には、意味がある。


 たとえ。


 結果が変わらなくても。


 リシェルは、報告書を閉じる。


 そして。


 次へと視線を向ける。


 ——ここからが、本当の勝負。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


今回、「結果は変わらないが意味はあった」という、

この物語の核心に触れる回になりました。


ここからはさらに一段階上がり、

「結果も変えることができるのか」というテーマに入っていきます。


主人公の選択はまだ途中です。


もしここまで読んで面白いと感じていただけたら、

ブックマークや評価をいただけるととても励みになります。


次話では、ついに“最終案件”が動き出します。


引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

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