噂のエル・ドラド 11
「ありがとうございます。……でも、少しはお勤めさせていただいたほうが、気が楽かもしれません。」
神宮院に戻れたからだろうか。
私は、神宮修士としてお仕えしていた日々を懐かしく思い出した。
「まあ!」
シーシアさまは目を丸くされた。
大公さまは、苦笑された。
「……無理はせんようにな。……ああ、ここでなら、好きなだけ読書して勉強できるんじゃないか?」
「ありがとうございます。でもこちらの本は全て読んでしまいました。」
ケロッとそう言ったら、今度は大公さまが目を丸くされて、シーシアさまが苦笑なさった。
「そうでしたね。……では市井の私塾から学者を招きましょうか。」
市井の私塾と言われて、私はあのへイー先生のことを思い出した。
そうだわ!
あの壮大な名前の塾がいいわ!
「あの……ここまで来ていただくのは気が引けますので、少し落ち着いたら、私が私塾へ行かせていただいてもよろしいでしょうか?」
大公さまが渋い顔をされた。
「それは危険すぎる。この神宮内だからこそ皇帝の力が及ばないというのに。」
……大公さまのおっしゃるとおりだ。
反論できずしょんぼりしていると、シーシアさまが助け船を出してくださった。
「わかりました。それでは、ティガに相談いたしましょう。信頼できる護衛を付けてくださるか、こちらに学者を招聘するか……いずれにしても、ティガなら最適の方法を示すことでしょう。」
……なんか……大事になってる気がする。
護衛付きで私塾に通うとか、嘘でしょう?
そんなたいそうなことじゃなくて……へイー先生の塾で傍聴させていただくだけで充分なんだけどなあ。
***
「もし答えたくなかったら何も言わなくてけっこうですが……どうしたら、そんなに面窶れするの?……昨夏から、何があったの?」
大公さまがお帰りになられてから、シーシアさまにそう尋ねられた。
……なるほど、シーシアさまは、理由も聞かされないまま私を預かることを承諾してくださったらしい。
寛大なお心に感謝するとともに、……私をシーシアさまに押し付けた宰相ティガの胸の内をますます知りたくなった。
「えーと……ジョージオさまの御子を出産しましたが離婚しました。子供は大公さまに託しましたが、お乳が豊かに出ていたので、皇孫さまの乳母になりました。そこで皇帝陛下に秘密の恋人になることを強要されまして……不敬ながら、しんどくなってしまいました。」
なるべく簡単にお伝えしたけけれど、シーシアさまの瞳に恐怖と悲しみが広がり……ほろほろと美しい涙をこぼして泣いてしまわれた。




