噂のエル・ドラド 12
シーシアさまは、私の両手をぎゅっと握ってくださった。
「……そうでしたか……大変でしたね。とても、とても、つらい想いを重ねて……こんなに、やつれて……かわいそうに。フィズ。……かわいそうに……。」
胸が……つまった……。
……本来なら、皇帝陛下に望まれてお側にお仕えすることは、大変に名誉なことだ。
それをこんな風に嫌がり逃げてしまうのは、とてもわがままな、不道徳なことで……どんなに叱られても仕方ないことなのに……。
「……ありがとうございます。でも、こうして、大好きなシーシアさまのお側にまたいられることになって、却って、得した気分です。」
そう申し上げたら、シーシアさまは微笑んでくださった。
それだけで、私もまた笑顔になれた。
***
神宮での療養生活は、私にとって心休まる幸せな日々だった。
かつてのようなお仕事はなく、ただただシーシアさまとともに、神様にお祈りを捧げ、毎日を丁寧に送った。
すぐに私は食欲を取り戻し、心身ともに回復し始めた。
季節がめぐり、冬の寒さが厳しくなった頃。
実家の父から思いも寄らない書状が届いた。
……ウーノさまが、お亡くなりになった、と。
幼少の頃から優しく温かく導いてくださった大好きなウーノさま。
トミルお姉ちゃんのところに逝かれたのね……。
書状を読むのを中断して、涙ながらに神にお祈りした。
しばらく祈りを捧げて、ようやく涙が止まったのを待って、再び書状の続きを読んだ。
そこにはウーノさまの生前の状況が記されていた。
ウーノさまの体調がすぐれなくなってから、ご長男のシェナミさまがディーツアさまと共にしょっちゅう行き来されてお世話をされていた……。
ん?
ディーツア?
女性……よね?
あら?
シェナミさまが勝手に結婚された奥様って、そんな名前じゃなかったわよ?
確か……シズーリさまとか申し上げたような……。
ん?
んんん?
さらに読み進めると、モーリおじさまが、シェナミさまにちゃんとしたお家から後妻をお迎えして、お家の再興をするようにおっしゃってるとか……。
ウーノさまに長年お仕えしていたカナヴィも、そうなると別のお家に移るだろう……。
はあ?
どういうこと?
えーと……、シェナミさまには勝手に結婚したシズーリさま以外に、ディーツアさまという内縁の妻がいらっしゃるのに、再婚されるの?
だから、かつて関係のあったカナヴィを追い出すの?
じゃあ、シズーリさまとディーツアさまは?
離婚されるのよね?
え?
追い出されるの?
追い出さないの?
意味が分からない。
わからないけれど……ものすごく嫌悪感を覚えた。




