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噂のエル・ドラド 4

「あの、陛下?いったいこれは……」

「失礼いたしました。フィズどの。いえ、キトリどの。たった今、伯父から書状が参りまして、キトリどのが伯父の嗣子のお母君さまにあたると教えられました。知らなかったとはいえ、このような扱い……まことに、申し訳ありませんでした。」


……なるほど。

大公さまは、私だけじゃなくて、皇帝陛下にも書状をお送りしたのか。


しかし、皇帝陛下のこの畏まりよう……大公さまってば、どれだけ怖い存在なのかしら。

私は苦笑した。


「頭をお上げください。もったいない……。大公さまのお気持ちはありがたいことですが、私は、ただのフィズとして、……ギルド長のモーリおじさまのご紹介で参りました、商人アイダンの娘のフィズです。」


皇帝陛下は顔を上げて、マジマジと私をご覧になった。

……決して美形ではないけれど……優しい……穏やかなお顔を至近距離で拝見したら、すーっと私の心も落ち着き凪いだ。

自然と出たほほ笑みが、おそらく恐れ多くも皇帝陛下にも同じ効果を与えたらしい。


「あなたは……つらい想いをされてきたとうかがっていますのに……とても穏やかな優しい瞳で私を見つめてらっしゃるのですね……。強いおかただ……それに、とても美しい……。」


皇帝陛下はそうおっしゃって……頬を染めた。

ドキッとした。


「買いかぶりすぎですわ。」


そう言って、後ずさりした。

けれど、皇帝陛下は逆に私に歩み寄って来られた。


「……伯父は、キトリどのに、」

「フィズです。」


無礼とは存じながら、訂正した。


「失礼。フィズどのに、孫の乳母になっていただくこと自体には、反対されていらっしゃいません。しかし、後宮に女官としていらっしゃることは看過できないと言ってます。もちろん私も、伯父の大切な家族でいらっしゃるフィズどのを、女官にしておくわけにはいきません。すぐにお部屋を準備いたしますので、どうか皇族の一員として、後宮ではなく宮殿でお暮らしいただけませんか?」

「……え……でも、皇孫さまは後宮でお育てするならわしではございませんの?……皇孫さまのお側にいることがお役目でしょうから、私も、後宮でけっこうですよ?むしろ離れると、不便ですし。」


皇帝は、ちょっと考えて、それからおっしゃった。


「わかりました。では、皇孫にはもう1人、世話係をつけましょう。フィズどのは、乳母として母乳を与えることのみ、お願いできますか?……それなら決まった時間に、皇孫を宮殿のフィズどののお部屋に連れて行くだけで事足りましょう。」


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