↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/143

噂のエル・ドラド 5

何か、お仕事を取り上げられてしまうみたい。


「……どうしても、宮殿に住まわなければなりませんか?」


本当ならものすごく名誉なことだとはわかっているけれど……ついついそんな聞き方をしてしまった。

皇帝は苦笑された。


「ご不便をおかけいたしますが、どうかそうなさってください。そして私達の家族として、共に食卓を囲み、共にお暮らしください。」


皇族の家族は、ほぼ皇族……ってか?

参ったな。


「……やっと、他人様のお役に立てると思って参りましたのに……」


途方に暮れる私を、皇帝陛下はたいそう珍しいものを見るように見つめてらした。


その瞳がだんだんとキラキラと甘い輝きを帯び始めたことには……気づかないふりをした。



***


こんなはずじゃなかったのに……どうしてこうなってしまったのかしら……。

私は、乳母として後宮の臨時女官になるはずだった。

しかしタルゴーヴィ大公さまのご厚意が皇帝陛下を動かし、宮殿で皇族の一員として暮らすことになった。


それからわずか数日後のこと。

皇孫さまにお乳を含ませているところに、皇后さまがお越しになった。

慌てて身を隠そうとしたけれど、皇后さまは鷹揚におっしゃった。


「そのままお続けくださいまし。あなたがいらしてから、皇孫は以前より元気になりましたね。まるまる太って、ご機嫌もよろしくって……フィズさま、ありがとう。」

「めっそうもございません。もったいない。」


確か、シーシアさまのお母様の縁続きでいらっしゃる皇后さまに、そんなふうにおっしゃっていただいて、私はただただ恐縮した。

皇后さまは、柔らかくほほえんで……信じられないことを仰った。


「皇孫だけではありませんわ。皇帝陛下も、フィズさまをたいそうお気に召していらっしゃいますの。本当は後宮にお入りいただきたいのですが、タルゴーヴィ大公さまが怖くて言い出せないでいらっしゃいますのよ。……大公さまの手前、フィズさまを側室や公妾にするわけにはいきませんものね。」

「……。」


返事も相槌も打てない。

急に、何をおっしゃるつもりだろうか。


……これは……言外に釘を刺されているのか……それとも出ていけと言われているのかしら。


身を小さくして、皇后さまの次のお言葉を待った。

すると皇后さまは、くねっとしなをつくり、かわいらしく媚びて私に手を合わせて懇願した!


「お願いします。皇帝陛下の秘密の恋人になってくださらないかしら?大公さまにも、誰にも、わからないように。」

「は?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。