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エデンは遠くなりにけり 6

いや、違うか。

ジョージオさまだけに限ったわけではない。

そもそも皇族は存在するだけで価値があるとされている。

最大のお仕事は皇統を守り、繋ぐこと。

労働は、庶民のすることですものね。


カリスマ性も事務能力にもけた舅のほうが珍しいんだわ。

カピトーリの宰相ティガのように、代々政治家や将軍を務める優秀な上級貴族との姻戚が功を成したのかしら。


……宰相ティガといえば……シーシアさま……お元気になられたかしら。

あんなに楽しそうにしていらしたのに、見る影もなくへこんでしまわれて……。


それに、ヘイー先生。

雑魚の実験と、お使者に来たと言ってたけれど、シーシアさまとご一緒に来られた一団にいらっしゃったのかしら?


さすがに広報誌に随行員の名簿までは記載されてなかった。



***


執事さんが夕食の時間を告げに来られた。

後ろ髪を引かれながら、食事に向かった。

しかし、ジョージオさまはいらっしゃらなかった。

御気分が優れないと言ってらっしゃるらしい。

さすがに放っておくわけにもいくまい。


食事もそこそこに、ジョージオさまのお籠もりされたお部屋へ案内していただいた。

ジョージオさまは完全に拗ねてらした。

なかなか扉を開けてくださらなかったけれど、言葉を尽してお願いしたら、ようやくお部屋に入れてくださった。


「……遅かったですね。」


しかも、非難されてしまった。


「申し訳ありません。お一人になりたいのかと勘違いしてしまいました。」

「私が?まさか!……当然キトリはついてきてくれると思っていましたが……図書室は、そんなに楽しかったですか?」


……怒ってらっしゃるわ……。

困ったな。


私は、慌ててふるふると否定した。

ジョージオさまは、ふんと鼻を鳴らした。


「まったく……私には、あなたがわかりません。女性が読書など……ましてや、広報誌?新聞?……あなたは外の世界にばかり好奇心旺盛で、私には興味がないのですよ。いつもいつも。私がどれほど傷ついているか……。」


また、始まった。

うんざりだわ。


しおらしく聞いているふりをしてみたけれど……


「せめてタルゴーヴィ大公府の発行物と新聞ぐらいは、館に届けていただきませんか?他でもない、お義父さまのご活躍だけでも知っていたいじゃありませんか。家族ですもの。もしかしたら、私達でお義父さまをお手伝いできることもあるかもしれません。」


ついつい持論を展開してしまった。


ジョージオさまは盛大にため息をついて、額を手で押さえ、頭をふった。


「もうけっこうです。頭痛がまた酷くなりました。……休みます。」

「あ、はい。……ごめんなさい。では……」


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