エデンは遠くなりにけり 5
ジョージオさまは、すぐに辻馬車を拾い、温泉地宮殿へと急がせた。
またベッドに連行されるのかと覚悟していたが、今回はそうはならなかった。
むしろ1人になりたいらしく、私を放置してどこぞのお部屋へか消えられてしまった。
おーい……。
途方に暮れたけれど……まあ、いいか。
むしろ解放感で楽になった。
窓辺で気ままに泳ぐ雑魚を眺める。
……あら?
赤い子がお腹に卵をいっぱいくっつけたまま泳いでいることに気づいた。
わあ!産卵したのね!
これ、どうしたらいいのかしら。
このまま放置していいの?
よくわからないので、……図書室に案内していただき、自分で調べることにした。
この宮殿の図書室は、観光地に相応しい楽しそうな本で溢れていた。
どれもこれも気になったけれど、目指すはお魚の図鑑……かな?
大きく分厚い本をようやく書架から取り出して、該当するお魚を探してみた。
……よくわからないけれど……大きさと特徴から「メダカ」と呼ばれるお魚じゃないかと思われた。
さすがに飼い方はなかったけれど、有精卵の成長が詳細に描かれていた。
無精卵は白く濁って、カビが生えるのね。
あら。
親と引き離さないと、食べられちゃうの?
それは、大変。
何か別の容器をお借りしなきゃ。
……さて。
用事は済んだ……けど……他の本も、読んでみたいわ。
あ!
大公府の広報誌も官報もある!
わ!
この公国だけじゃない。
カピトーリ宰相府や、タルゴーヴィ大公府のも揃ってる!
久しぶりに触れる国家や社会の情勢は、ものすごく新鮮に感じた。
特に舅であるタルゴーヴィ大公のご活躍には、胸がいっぱいになった。
噂に違わぬやり手だわ。
公国に何が足りないか、何が必要か、常に目を光らせて、動いてらっしゃる。
お飾りではない統治者ぶりが伝わってきて、ただただ尊敬です!お義父さま!
……と同時に……ご家族の誰も、公国のため、お義父さまのために働こうとしないことに、腹立ちを覚えていた。
私がジョージオさまの御子を産んだら……嫁としての役目を果たしたら、今度は、舅のお手伝いをできないだろうか。
本気でそんなことを考え始めていた。
……いや。
差し出がましいと、他の家族からは、さらに嫌われてしまうかもしれないけどさ。
てか、実際差し出がましいと思う。
本当は……私じゃなくて、ジョージオさまがお手伝いしてさしあげてくださるのが最善だと思う。
でも……うちの旦那様には、働くという観念はないようだ。




