95 昼食を食べながら
2学期も1の曜日、2時限目は金属性魔法の授業だ。
俺やフィン、危険人物先輩等への課題はかなり高度な内容になった。
本日は鋼の組織構造だ。
『一口に鋼と言っても組織構造によって脆くもなるし強くもなる。これは不純物の量と温度変化で……』
なるほど。
今までは経験と勘、試行錯誤で炭を載せたり叩いたりして材質調整をしていた。
でもこういった理論があるのか。
これで剣や盾を自作する際、より理論的に作れる。
そんな事を思いながら授業を終える。
さて、選択授業が終わったら食事して午後の活動だ。
フィンと一緒に教室を出る。
「今日は強化習得をやって、更に職業変更だよね」
もちろん範囲秘匿魔法をかけている。
この内容が一般に広がるのは避けたい。
「でもこれで一気に強くなるのも最後なんだね」
「後は自分で出来るだろう。フィンなら問題無く」
「その辺は明日の結果次第だよね。どんな魔法適性がつくのかまだわからないし」
確かにそうだ。
なおミリア特製の『職業選択の手引き』は既にフィンにも配ってある。
「それで職業に何を選ぶか決めたか?」
「あの範囲だと探索者だけれどね。実は少し試してみたい事があって」
何だろう。
「何か他に職業があるのか?」
「技術士とか研究士という職業があるかもしれないと思ってね。どっちも古い古い伝説にある職業だから実在するかはわからないけれど」
聞いたことがない職業だな。
「どんな伝説に出てきたんだ?」
「伝説というか御伽話だよ。人は遥か昔、この大陸に大きな船でやってきたって話。その時にその大きな船を整備したり、この大陸を住めるようにしたのが技術士や研究士なんだって」
ちょっと待ってくれ。
それって俺が調べたウラートの話と同じなのではないか。
だから聞いてみる。
「その船が出てきた場所って、遥かなウラートと呼ばれた場所じゃないのか?」
「その名前は知らないなあ。それに歴史とかそういう話じゃないよ。単なる御伽話みたいなものだから」
そこでフィンは何かに気づいたように少し間を開けて、そして続ける。
「そう言えばハンス、ドワーフの里でそんな内容の本を買ったって言っていたよね。あの時は剣を調べるのに夢中だったから詳しく聞かなかったけれど」
「ああ」
そう言えばあの時、ミリアに聞かれて本の内容を言ったような記憶がある。
「それじゃその本に技術士と研究士は載っていなかったかな?」
思い返してみる。
「おぼえがない。もう一度読み直してみる」
「まあ伝説みたいなものだしね。話がまったく同じじゃなくても不思議じゃないよね」
そんな事を話しながら食堂へ到着。
既に俺とフィン以外はテーブルの方にいる。
金属性魔法で使う特別教室は学校の端にあるので、どうしても他の皆さんより遅れてしまうのだ。
すぐに料理が並ぶカウンターへ。
並んでいるメニューは日替わりだ。
今日も一番安い定食にしようかなと思いつつ並んでいる見本を見る。
一番安い定食は野菜炒めとスープとパンで正銅貨2枚。
次に安い定食は成型ミンチ肉ステーキとサラダとパンで正銅貨3枚。
後者が正銅貨1枚分高いが、その分美味しそうだ。
久しぶりにそっちを選択して、お盆を持って皆の処へ。
テーブルを見て皆さんどんな食事を選択したかちょっと確認。
モリさんが一番安い定食なのは想定通り。
あとはフィンも1番安い奴だ。
ミリアとアンジェは俺が選んだのと同じ2番目のお買得な奴。
ただしアンジェはデザートでヨーグルトをつけている。
ライバーのメニューは合計正銅貨7枚と高い。
これは成型肉ではない肉の塊のステーキとサラダ、スープ、パンという内容。
標準でも肉の量は成型肉の定食の5割増しとボリュームたっぷりで正銅貨6枚。
ライバーはこれにパンを追加している。
さて、範囲秘匿は既にこのテーブルにかかっている。
それを確認して俺も席に着いた。
「今日でいよいよ俺、最強形態か。楽しみだぜ」
ライバーらしい感想だが少し違う。
「これで最強って訳じゃないんだからね。今まで教えた方法を自分でやればもっともっと強くなれる筈よ」
「そりゃそうだろうけれどよ。でも俺にハンスやミリアのような器用な魔法が使えるようになると思えねえぜ。それに職業も決めたしよ」
ミリアとライバーの掛け合いは予想の範囲内。
でも何か凄く嫌な予感がする。
だからつい俺も話に加わる。
「参考までに何を選んだか聞いていいか?」
「当然、狂戦士だろ。何も考えず敵をぶん殴ればいいだけ。体力も怪我も自動回復なんて最高だぜ」
ああ、やっぱりそうなってしまうのか。
危惧していた、いや想像していた通りだ。
「私は魔法騎士かなやっぱり。今と同じようなスタイルで戦えるしね」
「私はまだ迷い中だなあ。探索士があっているとは思うけれどさ。戦闘に便利なのは魔法騎士か魔導士だよな」
「でも自分にあった職業の方が能力を伸ばしやすいし戦闘でもそれ以外でも楽だと思うわ。それに探索士を選んでも、今のモリさんと比べれば魔力も体力も使用できる魔法属性も増える筈よ」
確かにモリさんは探索士向きではあると思う。
探索が得意で身が軽く、武器は弓が得意である程度魔法も使えるし。
ただ職業で弱点を無くすという方法論も確かにある。
俺自身はそうだ。
獣人で身体強化以外の魔法が使えなかったから、魔導士を選んで魔法関係の適性を手に入れた。
そんな経験者として言っておこう。
「弱点を無くすためあえて逆の職業を選ぶなんて方法論もある。だからその辺はモリさんなりによく考えた方がいいかもしれない」
「ならモリさん、俺と同じ狂戦士がいいんじゃね」
おいライバー!
「流石にそれはやめておくよ」
うんうんとライバーとモリさん以外全員が頷いた。
「僕もまだ迷い中かな」
フィンはそう一言だけ。
ここでは詳細は話さないようだ。
「でも皆、まずはレベル50にならないと話にならないんだからね。その辺は大丈夫なの?」
ミリアが問いかける。
確かにそうだ。
多分大丈夫だろうと思うけれど本当にそうかはわからない。
モリさん達と言えども他人を鑑定しないようにしているし。
「俺は問題ねえ。今49だ」
「私も大丈夫かな。あと2で50になる」
「私も多分大丈夫だと思う。あと3つだけれど」
「僕も大丈夫かな」
皆さん問題ないようだ。
具体的に言っていないフィンは既に50を超えているだろうし。




