アドミニストレータ
この世界が夢……そういえば、僕がこうなる前に、必死でメイセキムってやつを見ようと必死になってたっけ。結局失敗に終わってたけど。
この世界、いろいろおかしかったんだ。まず、学校に生徒が6人。少ないよね。
授業の内容もおかしい。やっぱり夢だって気づけないもんなんだな。でも、みづほさんは何でこのことを知ってたんだろう。聞いてみようか。……いや、やめておこう。また変なことになる。
……そういや僕は、夢の世界に定住できている。文字通り夢にまで見たメイセキムじゃないか。こうなったら、この世界を満喫してやる。で、その時が来たら元の世界とやらに戻ってやろう。……っていうことは、こんなに恋愛に本気になっても意味ないじゃないか。気楽な気持ちでやってやろう。
「おはよう!」
「なんだ、明日から夏休みだからって元気だな」
「ちょっとウザいよ。ハヤトくん」
みんな何俺に歯向かっているんだ。この世界は俺の作ったものだぞ。
「明日から夏休みだが、あんまり変なことせず……」
1ミリも聞いてない。……そうだ。ここが本当に夢なら、ちょっと試してみよう。
(先生、黙れ……先生、黙れ……)
その瞬間だった。先生が急に倒れた。
やってしまった?僕は悪くないぞ?ただ考えただけだ。
すぐに罵声が襲いかかってきた。僕のせいじゃない!やめろ!
(落ち着け……先生、元に戻れ……)
すると先生は何事もないように立ちあがった。
「これで力を使いすぎると怖いって分かったでしょ」
みづほさんだ。
「ちょっと考えただけなのに」
「夢における自意識ってのは、予想以上に強いのよ。たとえるなら、パソコンのアカウントの中でも最も強い、アドミニストレータね」
よくわからなかったが、とにかく凄いのだろう。
「もう少し力を抑えれば、あなたはこの世界の支配者になれる……でも、私にはちょっかい出さないでよね」
そう、なんでも自分の思い通り……。
(今日も一の谷さんと一緒に帰る……)
「雨だ……」
「予報じゃ降らないって言ってたのに」
傘がない。これじゃびしょぬれ。一緒に帰るどころじゃない。
……ん?かばんの中に傘が入ってる。やった!
「……ねえ。僕傘持ってるから、一緒に帰らない?」
「ありがとう」
やっぱりこの力ってすごいかも。
……あいつ、また変なことしてる。この世界の支配者は私なの。あなたの夢だからって、好きにはさせない……




