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だから僕は夏が嫌いだ。  作者: 匿名で悪かったな
最五(さいご)
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21/24

シャットダウン

 それからいくつかの日が立っていった。学校にもずいぶん慣れ、かなり上々の生活を送っている。

 そして嬉しいのは、今日は一ノ谷さんと一緒に家に帰ることになっている。

 城ノ内さんのスパルタ教育で、緊張なんて飛んで行ってしまっている。

 学校の授業は夏休み前と言うこともあり、少しずつ難しくなってきている。

 夏休みの宿題。漢字1000回。かなりきつい。でもやるしかない。

 ワークにドリル。やる気がそげる圧倒的ボリューム。これがもしゲームなら、速攻クソゲー扱いしているはずだ。無駄に長くて、焼き直しコピペばっかり。

 もうあと3日で夏休み。夏休みになるともうチャンスはないかもしれない。

 一ノ谷さんにアタックしないと。


 下校時間が来た。僕は一ノ谷さんを待つ。

 そこには、妙にがらんとした靴箱が並ぶ。いつもの光景だ。

 全校生徒は6人。おかしな学校だ。

 タケちゃんを見送り、ついに一ノ谷さんだ。

「じゃあ、帰ろっか」

「……うん」

 最近気づいた事だが僕と一ノ谷の家は結構近い。なので最後まで見送っても十分余裕なのだ。

 しかし、なにも話すことがない。そうだ、城ノ内さんの時は向こうからリードしてくれてた。なら、こっちも何か話を……

「もうすぐ、夏休みだね」

我ながらアホみたいな問いかけだと思う。だからなんだと言いたくなる。

「夏、ですか。私は夏は好きですよ。あの感じがとても好きです」

夏。夏?そういえば夏ってなんだろう。どんなものだっただろう。

「夏は、夏にしかできないことがありますから」

 なにも耳に入ってこない。分からないんだ。夏って何?暑いのはわかってる。どんなものなの?

知らない。分からない。ああああああああ!


 気が付くと家のベッドに横たわっていた。記憶がない。もしかしたら、一ノ谷さんを置いてきぼりにしちゃったかも知れない。

 もういい。自分でいつまでも悩んでいよう。もしかしたら心が病んできてるのかも。もうなんにも分からない。

……。……?

 確か、みづほさんが何か言ってたような気がする……

『私はあなたの敵じゃないわ。あ、そうだ。一つだけ教えてあげる。あなたがこの世界を理解した日が、この世界の終りだから』

みづほさんに聞いてみよう。あんな変なこと言ってるくらいだから、何か知ってるんじゃないか?


 7月19日。あと2日で夏休み。

「あ、あの。家守さん。ちょっと聞きたいことがあって……」

「……へぇ。聞いちゃうの?やめた方がいいよ」

「もうダメなんだよ!覚悟はしてる。全部教えてくれ」

「簡単なことよ。この世は全てあなたの創造したものってこと。誰もが持つ世界。夢よ」

「夢?」

「ここはあなたの夢の中。でも聞かない方が良かったわね。もう崩れてきている」

崩れる。それは実体として襲いかかる現実の壁だった。

「このままここにいれば私は消えて、あなたは現実に戻される。どうする?逃げるか、とどまるか」

「逃げるに決まってる!現実なんかに戻ってたまるか!」

僕はみづほさんの手を握り駆け出して行った。

 崩れる。学校が、地面が、全てが。

「みんな、逃げてくれ!」

「ハヤト、落ち着いて!しっかりと考えて、この世界をイメージしなおすのよ!」

「え? ……イメージ、イメージ……」

そうすると、元に戻って行った。崩れた壁も、元通り。そこはただの朝の学校の風景だった。

「こら、ハヤトに家守。勝手に校庭に出るな!」

「い、いや……地震かな、って思って、外に出ちゃいました」

「はあ?変な奴らだなあ」

先生も元通りだ。


「ねえ、この世全てが夢って、ホントに言ってんの?」

「さっきの見たでしょ。絶対にこれからこの世界が夢であると考えちゃいけない。考えた瞬間、あなたの世界は崩壊する。さっきみたいにね」

「……分かった」

「これほど深い世界なのだから、現実のあなたは昏睡……あるいは、もう死んでいるかもしれない。……またなにかあったら、私に相談してね」

「……あの、みづほさんって、何者なんですか?」

「そんなのこっちが聞きたいわよ。でも、まともな人じゃないってことは分かってる」

そう言って、バカみたいに笑いだした。


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