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恋するしゃくデレラ  作者: 咲山けんたろー
第3章 異世界編 〜女たちの嫉妬〜
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8/10

第8話 私だけ見てよ

 自分が、なんでここの場所にいるのか分からなくなる。ポツンと取り残されて、今にも早く逃げたくなる気持ち。


 なんで、私がこんな目に遭わないといけないの……。


 彼らにバレないように、チラッと二人の様子を見つめる。


 距離感が近くて、誰が見ても、華になる。宝塚歌劇団にいるかのような可憐なジュリエッタと、海外映画にいてもおかしくないビジュアルのオルクス様。世界中の人に聞いても、私よりもジュリエッタのほうがお似合いだ。


 おまけに、幼馴染という特大ポイント付き。私は、今日、この世界に来たばかりだから、それぞれの人間関係や思い出なんてこれっぽっちもないから、それに比べたら、ジュリエッタのほうが情が深い気がする。


 入る隙もないまま、近くの薔薇を眺めているふりをしていると、彼女が私の方を見て、口を開いた。


「おっと、じゃあ私はこの辺で。それじゃ、お二人ともごゆっくり〜」


 私の気持ちを察してくれたのかな。やっぱり、ジュリエッタは悪気なんてない。ただの幼馴染で、いい子なんだ。そうに決まってる。だって、私を助けてくれた人だもん。


 彼女が去っていくのを安堵していると、もう一度私たちの方へ振り返り、響くような高い声を上げた。


「あ、オルクス、また惚気話聞かせてよね〜? 待ってるから!!」


「うるさいよ!!! ジュリエッタ!!」


 オルクス様のその声で、肩をビクッとさせる。そんな声も、出せるんだ…。自然体にいられている気がしているように見えた。これが、素みたいな。


 私といる時の彼も、王子様モードで綺麗だけど、ジュリエッタといる時のほうが、なんだか楽そうで、本当の良さが滲み出ているような、そんな気がする。



 そして、彼女の姿が見えなくなるまで、ずっと見送っていた。その視線が、なんだか苦しくて、辛かった。




「……っと、なんか邪魔者が入っちゃったね。どこか座る?」


「ううん。いいの。ここらへん歩いてるだけで、大分気持ちいわ。」


 本当は、もう早く自分の部屋へ戻って帰りたい。今日は、慣れないことの連続で疲れたの。


 嘘。これは、言い訳。


 オルクス様とジュリエッタとの距離感の近さに圧倒されて、辛くなった。今は、彼とも口を交わしたくない。


 だけど、我慢をした。私から外へ出たいと言い出したのに、少しの気持ちの変化で『帰りたい』だなんて言うなんて、自分勝手にも程があると思ったから。



「そっか。」





 私たちは、さらに奥へ進んでいった。茂みのほうには、白のガゼボがあったり、見たこともないカラフルな花々があった。


 ホタルような虫が、私たちを照らしてくれてる。たまに、耳元で羽音がするから、少し怖いけど。



「仲いいんだね。幼馴染だっけ?」


 わざと、ジュリエッタの話題を挙げてみた。本当は話もしたくないけど、でも気になってしまう。めんどくさい人間ね。


「あー。ジュリエッタから聞いた?腐れ縁みたいなもん。」



「昔っからそう。何かと僕の後ろをついてきてさ。この年になっても。」


「へぇ〜〜。」


 適当なリアクションを返しておいた。別に、興味ないし。


 一方の彼は、何も気にしてなさそう。悪気はないんだろうな。いや、誰も悪くはないんだけどね。







「そしたらさ、その時、ジュリエッタが―――」


 それからしばらく歩いて、彼はついにジュリエッタの話しかしなくなった。私たちの距離は、遠くなるばかりだ。


 2人の思い出を私に話して、一体、なにになるんだろう。傷つくってこと、分からないのかな。


「あ、ごめん。コハネ、何か話したいことある?」


「ううん。何もないわ。」


『ジュリエッタの話しないで、私だけ見てほしい。』って言えれば楽なのに。重い女だと思われるのが、怖くて言い出せなかった。どこまでも臆病者だ。


 心が限界に達した私は、ついにその場で立ち止まった。



「ごめん……私、やっぱり今日は帰るね。少し寒くなってきちゃったから。」


「大丈夫?送るよ。」


「ううん。私、一人で帰れるから。それじゃ、ごきげんよう。また明日。」


 最後の方は早口になっていたかもしれない。でも、今はそれでよかった。誰も傷つくことがないから。


 宮殿内に入り、ものすごいスピードでエレベーターへ向かい、連打する。誰も来ないようにと、1人にさせてほしいと願いながら。



 2人はお似合いだった。性格の悪い私から見ても。


 きっと、お互いまんざらでもないと思うのに、彼は、オルクス様は、どうして私を婚約者として選んだのだろうか。一番手っ取り早いジュリエッタにしておけば、お互いのことを知っているし、楽なはずなのに。



 でも、そんな事も言えなかった。彼が、それに気づいて、ジュリエッタの方へ行くのが怖かったから。






 考えすぎなのはわかっている。でも、悩まずには、いらなれなかった。









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