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恋するしゃくデレラ  作者: 咲山けんたろー
第3章 異世界編 〜女たちの嫉妬〜
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第7話 私が婚約者だよ?


 ローズに怪我の手当てをしてもらい、ディナーの時間へ差しかかっていた。1日が過ぎるのは早いと感じるのは当然のことである。だって、こっちの世界にきたのは、昼からだったから。


 本来ならば、今日オルクス様の婚約者になったため、パーティーを行う予定だった。しかし、私が、宮殿の場所や人の名前も、何一つ知識がないため、また後日に改めて行うことになった。その日が来るまで、オルクス様の家族構成や、その他の上下関係まで理解しておかなければ。王妃となる最初の役目である。


 異世界へきて、最初の食事は、オルクス様と二人きりでの夕食だった。大人数が苦手な私は、この体制でものすごく助かった。いきなり、たくさんの人と夕飯を共にするのは、緊張とプレッシャーで何一つ食べれない。



 洋風なローテーブルに囲まれて、彼と二人きり。まだ、ほんの少ししか話していないので、慣れない。


 本日のディナーは、真珠貝のクリームスープ、月鱗サーモンの香草焼き、若鹿のロースト、赤果実ソース添え、焼きたて白パンだ。


 さすが貴族。種類も豊富で、一つ一つのメニューがお洒落だ。真珠貝なんて、初めて食べた。独々なダシと、なんともまあ、コクが深い。たぶん前の世界じゃ、食べれなかっただろうな。


 もちろん、これはどんな食べ物かと、一つ一つ、オルクス様に聞きながら食べている。


 彼は、ナイフとフォークを器用に使いながら、ローストビーフを口に運ぶ。この世界にずっといるからなのか、食べ方が綺麗。一方の私はというと、ごく普通の一般家庭で育ったため、高級料理の食べ方すらわからない。肉も、上手く切れなくて、苦労をした。




『オルクス様とは、0歳からの幼馴染ですね。』



 先ほどの、ローズの言葉がずっと頭をよぎる。



 こんなイケメンな方と幼馴染だなんて、今まで、好きになったりしなかったのだろうか。



 前の世界の私だったら、間違いなく自慢してたと思う。というか、していた。大学の友達に、仁の写真を見せたら、『こんなイケメンと幼馴染なの!?』

 って驚いてたっけ。私は、いつもその反応を見ながら、『でしょ?彼氏(になる予定)なんだ。』とふざけた返答していた。実際、めちゃくちゃ脈無しだったんだけど。


 女子大だったから、恋の話を始めたら、ずっとノリノリで楽しかった。明日から私はいないけど、皆、どう思うんだろうな。



 ぼーーっと、彼を見つめていたら、不意に、目が合った。




「コハネ? どうかした?」



「え!? …いや、別に……」



「何か、苦手な食べ物があった? 言いにくいなら、僕がシェフに伝えるよ。」



「ちがう! 違うの! ありがとう。」



「それなら、いいんだけど。料理は、美味しい?」


 私は、変な回答はできまいと、つい、早口で喋りだす。


「もちろん! どれも最高よ。今、食べてる、ローストビーフの牛肉がものすごく柔らかいし、こっちのスープも良いダシがきいてて、何杯でも飲めちゃうの!!あとはこっちのパンも柔らかくて、最高!これ、おかわりはないのかしら。」


 喋りだして、はっと我に返る。彼が、驚いたかのように口をぽかんとしていたからだ。



「……コハネって、よく食べるんだね。」



「そういえば、前の世界でもそうだった……。ごめん、そんなつもりなくて。」


 高校の修学旅行のバイキングで、皆はお腹いっぱいなのに、私だけ何度も食べ物を取りに行っていたのを、急に思い出した。呆れてたっけ。確か。


 確かに、ヨーロッパの王妃や、2次元のお姫様も、皆細いし、あんまり食べてないかも。大食いの姫なんて、聞いたことないわね……。


 真剣な表情で、悩んでいると、彼は優しく笑った。



「いいね。よく食べる女性、僕は好きだな。」



『好き。』


 そう言われて、飲んでいたワインを吹きそうになる。


 さすが、王子。恥ずかしいような言葉も平気でサラッと言ってくる。言い慣れているのだろうか。



 そ、そ、そこまで言うなら、オルクス様の分も食べちゃうぞ〜〜?? …なんて、思ったり。言えるわけないけど。



 ワインガラスを机に置き、思わず我に返る。私は、もう20歳になったから、普通にお酒は飲めたけど、オルクス様は何歳なんだろう。同じものを飲んでるっぽいし、少なくとも20歳以上ってことだよね…? いや、でもこの世界は、何歳でお酒が飲めるんだ…? まったくわからない。




「オルクス様って、何歳なの?」



「あはは。急だね。じゃあ、逆に何歳だと思う?」


「えー……25歳?とか」


「ちがうよー。」


「じゃあ、24?」


「ちがうちがう。」




 何度言っても当てられないので、彼は諦めたのか、間を置いて、こう答えた。


「正解は、20歳。みんな見えないって言うんだ。老け顔なのかな…。」


「そんなことない! きっと、オトナっぽいってことよ。私にもそう見えるもん。」


 彼の言葉に、私は、咄嗟に反応する。今日初めて会ったのは確かだけど、老けてるなんて思わない。むしろ、輪郭も男らしくシュッとしていて、20歳にしては、顔が整いすぎてるんだ。


 彼は、『ありがとう。』と言いながら、デザートのガトーショコラを口に運んでいる。ちなみに、私はもう食べ終わった。いつだって、お腹が空いてるもの。


 デザートは毎回日替わりなのかしら。それなら、毎日が楽しみになっちゃうわね。作ってくれた方に感謝しないと。




「コハネは? 何歳?」


 彼も聞いてきたので、先ほどに聞き返した方を真似しようと思った。


「じゃあ、何歳に見える?」


「いいよー。じゃあ、20!」



 自分の年齢が、一発で当てられたことにびっくりして、思わず、声を上げた。



「え!当たり!どうして?」


「あはは。普通に勘。」


「じゃあ、私たち同じ年ってことだよね? やったやった!」



 私は、『うんうん』と頷きながら、残りのワインを喉に流す。お酒が弱くないほう。だけど、これは度数が高いほうだ。体がほてって、気分が良くなってきた。いまなら、何を言っても、笑える気がする。


 やっぱり、私たちは運命の赤い糸で結ばれてるのかもしれない。こんなに想いが通じ合って、息が統合して。楽しい。


 口元がニマニマするのを隠そうとしても、隠せないくらいに、今は上機嫌。楽しい。もっと、オルクス様のことを知りたいし、知ってほしいな。そう思えた。




「嬉しい?」





「へ!?」





「僕と同じ年で。」



 メロい。急にメロいな。突然でびっくりした。



 彼も、恐らく、酔っていないだろう。私より余裕があって、悔しいけど、かっこいい。



 目が合って、彼はニコッと笑った。



 別に、甘い言葉を言われてるわけじゃないのに、なんでこんなに彼にはドキドキさせられるんだろう。やっぱり顔?顔がいいから?



 見透かしたような、その瞳から、どうにも目が離せない。




「えへへ〜もちろん。同じ年って話しやすいもんね。」



「………コハネ、酔ったの?」


 話し方が変わったのだろうか。自分じゃ、なにもわからないや。


「逆に、オルクス様ってお酒強いんだ。全然何ともないね。」


「うん。強いほうかも。そろそろ行こうか。大丈夫? 歩ける?」


「大丈夫ぅ。あ、外の空気吸いにいきたいかも。案内して?」


「いいよ。気晴らしに行こうか。」




 ※ ※ ※



 私たちは食事を後にし、廊下へ出た。少しよろめいた私の体を、優しく支えてくれる。好き。





 夜の宮殿は静かだ。私たちの足音だけが、鳴り響く。ステンドグラスに映る景色が、美しい。星がよく見えそうだ。



 ほかの人達は、どこで食事をとっているんだろう。それぞれ別のフロアなのだろうか。まだ関わってない人もたくさんいるから、挨拶とかもしないといけないよね。



 それにしても、極楽極楽♡ 超イケメンなオルクス様と、こんな急接近しちゃって♡ ぐふふ、こっそり匂いでも嗅いじゃおうかしら♡


 私は、さりげなく彼の首元に近寄り、鼻をスンと吸い上げようとした。


 すると、彼が私の動きに気づいたのか、即座に目が合った。





 !?





 やばい……オルクス様の顔がすんごいドアップ。少しでも動いたら、キスできちゃう距離。




 ど、どうしよう……。



 私、ちょっと責めすぎちゃったかな!?心臓の音とか、いろいろとバレそうで、恥ずかしい。



 すると、彼はニヤリと笑いながら、私のおでこをツンっと人差し指で突っついた。


 反動で体がよろめきそうになる。確かに酔ってるかもな、私。




「こら。前を向いて歩かないと。」



 夜風で、彼の白髪が揺れて、美しい。絹のようにサラサラで、絵に描いたような王子様のようだった。


 月と相まって、より一層儚さを感じさせる。緑色の優しい瞳が、キラリと輝いていた。


 彼は、『こら。』なんて言ってるけれど、実際全く怒ってない。だって、耳がこんなに真っ赤なんだもん。もしかして、私と距離が近かったから、緊張したのかな?なんて♡



 私は彼の後を追うように、早歩きでついて行った。





 ※ ※ ※



 歩いて、数分。1Fのドアを開け、庭へと案内された。



 待っていたのは、一面中お花畑。その中でも、薔薇が特に印象的だった。赤薔薇はもちろん、白、黄色、そして―――




「え! 青薔薇だ! すごい!」




 私は思わず、咲いている場所へ駆け寄り、青薔薇を手に取る。これは、人工物なのだろうか。自然勾配ではまず作れないので、どうやってできたのか非常に気になる。美しく、青く燃え上がるような、そんな情熱を持っているようだった。



 彼が私の元へ駆け寄り、そっとつぶやく。



「この薔薇は、チューディッシュ王国を象徴する花だよ。僕も結構気に入ってる。」


「へぇ〜…。それにしても、風が気持ちいい。なんだか、落ち着くな。ありがとう。連れて行ってくれて。」


「あはは、これくらい普通だよ。婚約者なんだから。」





 彼は、私の顔を見つめる。


 ずるい。私が照れる言葉を全部知ってるみたいなんだもん。




「もう、オルクス様ったら……。」








「オルクス?」



 その時、聞き馴染みのある声が聞こえてきて、思わずハッとなる。心はすっかりピンクモードに入っていたから、咄嗟に夢から覚めたような気分だった。


 声の方向を見つめると、先ほど私を助けてくれた、ジュリエッタの姿だった。


 彼女は、私たちの空気を気にすることなく、ヘラヘラした表情でこちらへ近づく。



「えー! すごい偶然じゃない? てか、意外。オルクスって、こういう場所来る人だったっけ?」




 彼は、『ジュリエッタ、やめてくれよ……』といいながら、笑っていた。彼女は、彼の肩をガシッと掴み、私の時よりも近距離で目を見つめている。



「なになにぃ〜? 婚約者ちゃんができたから? ヒュ〜、お熱いことで。」


 そして、彼女は、私の方をちらっと見た。私のことを『婚約者ちゃん』と呼んでいるのは、分かっていた。





 なんか……やだな。こんな感じ。



 オルクス様の隣は、私なのに。





 婚約が決まってるのに、そんなに近づかないでよ。




「お? 照れてるぅ? このこのぉ〜〜?」


 そして、オルクス様のセットした髪を拳でグリグリ当てていた。彼は、苦笑している。





 でも、嬉しそう。






 なに……これ……。




 さっきまで、あんなに楽しかったのに。幸せの楽園だったのに。一瞬で、ガクンと階段を踏み外したような、そんな気分。








 ねえ。








 なんで、私が婚約者なのに、一番邪魔ものみたいになってるの……?





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