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恋するしゃくデレラ  作者: 咲山けんたろー
第3章 異世界編 〜女たちの嫉妬〜
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第6話 人生イージーモード?


 オルクス様との会話が終わり、私は彼の部屋をあとにする。



「送らなくて大丈夫?」


「大丈夫よ。ここの階だし。ありがとう。」


 私はクスッと笑顔を交わす。ドレスの裾に躓かないようにしながら。


「わかった。それじゃあ、気をつけてね。また、ディナーで。楽しみにしてるよ。」


 彼のその笑顔は、なんだか心に響くものがある。初めて会った気がしない。なんだか、落ち着くような。そんな気持ち。これが、運命というものなのだろうか。



 というか、現世であんなに苦労していたのが馬鹿みたいね。だって、この世界では、このしゃくれた顎さえも、『愛おしい』と想ってくれる、仁よりハンサムな王子様がいるんだから♡



 私は、誰にも見られてないことをいいことに『グフフ』と気持ち悪い顔を浮かべる。



 人生イージーゲームじゃない! やっぱり、私は最初からこうであるべきだった! 元からこちら側の人間だったのよ。




 ふふん、素晴らしいシンデレラストーリーね。




 ステンドグラスに映った自分を見つめ、さらに気分が高まる。


 この場所は、女の子の夢が詰まった場所。見る場所全てがメルヘンチックで、絵本の中に入り込んだみたい。天井はシャンデリア、床はレッドカーペット、アーチ窓や、紋章が彫られてる両開きのドア。その情報全てが、私を興奮させた。


 本当は、すぐ戻れるのだが、せっかくなので少し冒険したい。ローズも多分怒らない人だろう。


 エレベーターの直ぐ側には、階段があった。ここへ来るまでは、ローズに部屋を案内されただけなので、4F以下は何があるか分からない。




 ちょっとくらい、いいよね。





 私は、ドレスの裾を上げながら、ゆっくりと階段を一段、一段、降りていく。




 その時――体がふわりと浮いた。





 ドンッ!!!





 衝動で、されるがまま、私は、地面へ転がり落ちた。一瞬の出来事だから、何も考えられなかった。




 足がグキッとくじいた音がして、咄嗟に手で押させる。痛くて、すぐに立ち上がることができない。近くにある手すりを触ることぐらいしか、できなかった。







「あらぁ〜。 手が滑ってしまったわ。」


「まあ、この方。次期国王様のご婚約者ですよ〜? 私たちが悪いみたいじゃない〜。」


「やだわぁ。よそ見してるのが悪いんじゃなくて?」



 声の先を、恐る恐る見上げる。3人の女性が私の姿を見て、笑っていた。


 彼女らは、皆、髪が長く、毛先をくるくると巻いてる。ドレスは、赤、黃、オレンジと、派手めである。片手に持っている扇子がシャンデリアの光で反射で、少し眩しかった。



 私を見るその目。ゴミを見る目かのようなバカにした表情。私が姫なはずなのに、立ち位置が逆転しているようだった。


 その事実を自分で言い聞かせ、震える手を抑えながら、口を開いた。言いたいことは、ちゃんと言わなきゃ。




「よそ見なんて、してません……。」





「は?」






3人のうちの1人が、眉間にしわをよせていた。


 その後、他の女らも、次々に痛い言葉を私に投げかける。



「歩き方すら分からないのぉ〜? ほんと、この人が次期王妃で大丈夫かしら〜?」



「それに、貴女、他所ものなんでしょう? 一体、どんな場所でどういう生き方をしてきたのかっ。 オルクス様も、よくご承諾したものよねぇ〜〜。」




 その言葉、訂正するわ。私はね、王子様にご指名されたのよ。その言い方じゃ、まるで私が婚約したくて、この宮殿に来たみたいじゃん。



 ちょっと前まで、マチアプの男と通話する予定だったの。まあ、この人たちに言っても、出会い系アプリなんてことを話したら、さらにバカにされそうだから、言わないけど。


 そんなことを、心の中でブツブツ言いながら、挫いた足を触る。痺れて簡単には立てない。ジンジンして、痛い。


 悔しい。言い返したいのに、どこか怖い。






「「「やんなっちゃう〜〜。」」」




 彼女らが、扇子で口元を隠しながら笑っていると、遠くからヒールの男がかすかに聞こえてくる。


 コッコッ…と、鋭い音。その音は、だんだん私たちの方へ近づいてくるようだった。


 そして、そのあとは、私たちを察知した途端、ピタリと止まった。



「何の騒ぎ!!」



 階段は、よく声が響く。その瞬間、先ほどまで嫌味を吐いていた女らが、一瞬で静かになった。



「ジュリエッタ様……!!」


 女らにそう呼ばれた彼女は、私の下へ全速力で階段を駆け下りる。


 この宮殿内で大分珍しい、ショーットカットの黄金の髪色の女性。ドレスもキラキラと光り輝く黄色のドレスを纏っていた。


 彼女の姿を見つけたとき、この人は、他とは違うという確信を持っていた。私をまっすぐ見つめ、ニコッと太陽のような眩しい笑顔を向けてくれたからだ。


 そして、すぐさま私の肩を抱きかかえる。



「貴女…大丈夫?」


「はい……えっと……」



 そして、自然と視線は嫌味を言ってきた女3人組に目を向ける。『コイツらにやられました』と言わんばかりの顔をジュリエッタに向けてみた。女の世界は、顔だけで、一体何を言いたいのか分かるものである。




 すると、彼女は、私のメッセージを察したのか、無言の圧を3人組にキッと向けた。





「私は、なにもしてませんわ!! イーノ!貴女がやったわよね?」


「は!? やってません!! …ちょっと、リィナ、ウソをつかないでくださる? そうよ! やったのはアンネよ!! 早くジュリエッタ様に謝って!!」





 フレネミーな人たちを、私は心の中で嘲笑う。



 ふん。ざまぁ見ろ!!


 お姫様に楯突くと、外野が黙ってないんだから。さぁ、ハエは帰った帰った!!





「謝るのは私じゃないでしょう。 この方に謝りなさい。」



 ジュリエッタが、そうはっきりいうと、彼女らは別人かのように人格が変貌し、私の前に跪いた。



「「「……申し訳ありませんでしたっっ!!!」」」






 ※ ※ ※


「ありがとうございました…。」


 私は、手すりをうまく掴みながらゆっくりと身体を起こす。


 それにしてもすごかった。私が言い換えしても、火に油を注ぐだけだったのに、ジュリエッタが来たら、すぐ頭を下げるんだもん。



 彼女は、私の姿を隣で見つめながら、腕を組んでいる。



「私は、正しいことをしただけよ。」


 ペコリと軽くお辞儀をし、身体を起こして、階段を登ろうとする。


 …がしかし、余程おかしい方向に挫いたのか、足が思うように動かない。階段を登りたいのに、震えてうまく上がらないのだ。


 両手で手すりを掴み、ゆっくりと上がろうとすると、彼女が私の元へ近く駆け寄ってきた。



「……私の肩を貸すわ。部屋まで、送ってあげる。」



 何から何まで申し訳ない。今回ばかりは仕方がないので、お言葉に甘えることにした。







 階段を登り終え、私たちはローズがいる私室へと向かう。


 彼女は、私より高く細いヒールを履いているのに、一切よろむいていない。むしろ、肩を借りられているのに、モデルような歩きだ。姿勢が良い。ものすごく。


 すると、彼女は私の顔を見つめた。不意に視線が合って、目を逸らす。




「私は、ジュリエッタ・ランベール。生まれたときから、この宮殿にいたわ。何かあったら、何でも言ってちょうだい。」


「コハネです……その、ありがとうございました……。」



「お礼を言い過ぎよ。貴女、次期王妃になったんですって? 見たわよ〜、さっき。ここは、意地悪な人も多いから気をつけなさいね。」


 そして、クスッと笑った。有名モデルかのようなこの美しさ。ローズも巨乳で可愛いなって思ったけれど、ジュリエッタは、また違う良さがある。162センチの私よりも、ずっと背が高くて、腰も細い。


 おまけに狐のような瞳。ファッション雑誌の表紙に載っていてもおかしくない。



 なんだか、いい人っぽいな。私のことを気にかけてるみたいだし。








「私、もっと知りたいわ。貴女のこと。オルクスがどんな人を選んだのか、この目で確かめてみたいのよ。」




 しばらくして、彼女の独り言のような言葉に、心臓がドキンとする。




 今、オルクス様じゃなくて、オルクスっていった……?






 私の部屋の前につき、ノックする前に、ジュリエッタが3回ドアを叩いた。


 しばらくして、ローズが私たちの姿を見て、目を丸くする。



「ジュリエッタ様!?…と、コハネ姫!! お待ちしておりました! 」


「ローズ。久しぶり。コハネが足をくじいてしまったの。手当てをしてあげて。それじゃ、私はこれで。それじゃあ。」



『久しぶり』?


 2人は知り合いなの?


 まあ、でもそんなもんか。宮殿内にいれば、嫌でも関わるわよね。


 状況が整理できない私に、ジュリエッタは手を振り、背を向けた。









「コハネ姫、ジュリエッタ様とお知り合いになったんですね!」


 ローズが、私の左足に消毒液を垂らしながら、そう呟く。その液体が傷口に触れて、かなり染みる。痛い。




 私の傷は、軽い擦り傷によるものだった。




 やれやれ、異世界転移初日で、怪我をするなんて。これから先、すぐ死んじゃうんじゃない?




「ローズこそ。知り合い?」



「当然でございます! 彼女は、思ったことをはっきりと言う、ご令嬢さんです。あとは……」




「あとは?」





 嫌な予感がした。別に、ローズが変な表情をしているわけじゃない。この変な間が、なんだか気持ち悪くて、恐ろしかった。勘というものだろうか。


 彼女は、ガーゼをチョキチョキとハサミで切りながら治療を続けている。その音が、ものすごくはっきりと聞こえ、不気味だった。




 生唾を、ゴクリと飲み込んだ。







「オルクス様とは、0歳からの幼馴染ですね。」













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