果ての村
マルシカクちゃんが目覚めたのは死んでから7日経った日の夜である。
前日に集まり当日を迎えたがマルシカクちゃんがそうなってしまった昼前になっても目覚める気配がなく、皆すごく焦って大慌ての絶望状況だった。
「き、きっと!明日だと思います! そうです!」
「マルシカクちゃーん! 起きて! 起きてよ!」
頼りの藁は体温とまだその日が終わっていないことだけで信じるしかなかった。
そんな中、太陽が沈んだ頃になるとマルシカクちゃんがいつも起きた時の行動をし出したのだ
「おねえちゃん、おはよ♪」
まずユウナを確認して起きていたら挨拶からキス、寝てたら抱き付き見守る。
いつもと空気が違う状況にマルシカクはあえて気にせずに大好きなお嫁さんに顔を寄せてチューをした。
直前の記憶は残らないようだと思ったユウナは涙を拭って言った
「おはよ♪ でもねもう夜だよ? お寝坊さんだね♪」
「あ、ホントだ!」
どこまで記憶していて、どう残っているのだろうか。気になることはたくさんあるけどマルシカクちゃんが起きていることがなによりも嬉しく感動でいっぱいだ!
「マル…シカク…(ぐす…)…様…よかった…です…」
「生きかえってよかったです!! マルシカクちゃん大丈夫? バラットちゃん倒そうね!」
分かっていても上手く切り替えが出来ないみのりさんと素直な千ちゃん、マルシカクちゃんの久しぶりの伴った温もりに身を預けつつヒヤヒヤと返事を待っているとパァっと笑顔を浮かべた
「たおさないよ? はての村にまたいくんだよね♪」
・・あは♪全部覚えていそうだね。それを悟らせないマルシカクちゃん天才!大好き!!
その夜にマルシカクちゃんの心音をずっと聴かせてもらいました、最高に安心してドキドキながら存分に甘えちゃった♡
次の日に再び準備を万全にして果ての村へと旅立ったよ!
途中で魔王様とバラット、そして久しぶりのリッシェルラントさんが移動したのに合わせてやって来てバラットは地面に頭を打ちながら本気で謝ってたよ。
「まさかお兄様が魔王様のお城で働かれていたとは驚きました」
「騙しててごめんね、それより、みにょりが聖女になってたなんて、だね」
「み、みのりでしゅよ、意地悪しないで下さい」
「仏頂面のお主もそんな顔をするのじゃな」
初めて会った時から優しいお兄様だったから知らないけど普段は愛想もなく何でも淡々とこなす人らしい、魔王様が笑いながら話していた。
「ぬ!奴が来る」
穏やかな時の中で急に魔王様が立ち止まる
「奴って誰ですか?」
「コライラル…花子…ハングライダー…タインセル…じゃったかな?」
誰!? てか長っ!?
知らない人はヤダなと身構えながら待っていると砂埃を巻き上げながら走って来る存在
「あー! ケイレルナインシュライン・ムート・ナアテンハイマー・ケシーさんですか!」
「おー!そうじゃ!そやつだ、覚えられぬ。 ユウナはよく覚えているな?」
「おねえちゃんだからね♪」
前はどこか間違えちゃったみたいだから間違ってないといいな、魔王様も分からないみたいだし
「魔王様、お会い出来てよかったよ!」
そのまま私たちを見て戦闘態勢に、何故!?
今の並びは横三列でいて前に千ちゃんとみのりさんとお兄様、その後ろに私とマルシカクちゃんと魔王様、更に後方にバラット。
バラットはいつもと違ってずっと大人しくてちょっと可哀想、話しかけても最低限の回答しかしないみたいで私たちへどう接すればいいか分からないよう。謝る前に千ちゃんから敵意を受けた事も関係しちゃったんだよ、マルシカクちゃんに話してくれれば一発解決なのに黙っちゃったからこちらから話しにくい。
「待て! 彼奴はしかと謝罪して許された
いい加減、鬱陶しいから立ち直って欲しいのじゃがな」
「そうかい、分かったよ」
戦う姿勢だったのは後ろのバラットに対してだったみたいだね
「ケシーちゃんはどこ行くの?」
「アタイは勇者の動向を探りに魔王様に居場所を聞きにきたんだよ」
「そっか!」
その必要無いと知ってるけど監視は必要なんだよね。
すると、魔王様は勇者様一行はさかさま洞窟にいると言った。 家を追い出されたか?
「了解だよ、ありがとございます魔王様! 行ってくるよ!
それと、バラット!しっかりなさい! 魔王様にご迷惑になるんじゃないよ! んじゃね」
慌ただしくも砂埃を巻き上げながら行ってしまった。
「バラットよ、落ち込んでなどいないではやく立ち直れ! と言っておったぞ」
魔王様がかなり柔らかく彼女が言ったことを話す・・これってもしかして…
「ハッ、分かりました…」
「そこは「フハハハ!仰せとあらば御覧魅せましょう」じゃないのか?」
いや、バラットでもそうは言わないでしょ…
マルシカクちゃんが私から離れてバラットの前に行く
「あのね、マルシカクはなんにも気にしてないの!
だからげんきでいて?ね!」
かわいい!マルシカクちゃんからの元気づけの言葉、私もあの時欲しかった!
「今が難しいならば帰って、次見える時に戻っておればよいんだ」
「うむ…、そうか…マルシカク感謝する、ユウナ悪かった。
約束しよう、こんな我を見せるのは最後にするぞ!
フハハハ!さらばだ!」
ヤレヤレと魔王様は肩を竦めていたがその顔は優しいお母さんのようだった。
これで本当に一件落着かな!
「ところでお兄さんもバラットもケイレルナインシュライン・ムート・ナアテンハイマー・ケシーの言葉は分からないのですか?」
「うむ!妾だけじゃな」
ドヤ顔かわいい。 そっかだからあの剣幕しか伝わってなかったんだ。
「ところで何故お主は他のやつらと違って長い名前で呼ぶのじゃ?」
「なんか、呼びたくなるんです」
「・・・ふむ?」
共感されなくて結構ですよ、覚えにくい長い名前ってなんか言いたくなっちゃうんです。
「ねー♪」
「(マルシカクがニコッと微笑む)」
・・そうだね、私だけだね。分かってました。
・・・。
ゆっくりと果ての村に着いた時に待っていたのはプッチンさん、魔王様に会いたくて会いたくて待ちきれなかったと泣きながら飛び込んできていた。
「めーれいがなければすぐにでも行きました!
まおちゃん様不足でこれはしょーがないと思いませんかぁ?」
魔王様の胸にスリスリと顔を当てながら私にきいてくる
「うん、それはしょうがないね。 一日でも離れていたくないでしょう」
「あは♪ 分かってくれるねー♪ さすが『マルシカクちゃんが弱点』だけあるねぇ♪」
うん、ホントに!一日でも無理なことは痛感しました!
それはさておき、魔王様がプルプルと紅い顔で震えているのは怒りなのか羞恥なのか…
「・・・いい加減に「あ、ところでバラット様はどーなりましたか?」…クッ…」
良いタイミングで離れて今回の目的についての離れて質問、魔王様をおちょくりながら可愛がり魅力を引き出している、絶妙に怒らせないのがすごい。
リッシェルラントが微妙に遠ざかっているのを見ると彼女は苦手なのかもしれない、合わせようとすると逃げられる相手みのりさんも苦手だから兄妹気が合うね。
・・・。
果ての村にやってきました! 魔王様一行はみんなでご飯を食べた後に帰っていったよ。 静かな方が好きなのは変わらないけど、他人とワイワイやることに抵抗がなくなったかもしれない。
さて、この果ての村はおそらく・・というより名称は違うけれど最後の村の『滅びの村』だろう。
その名の通り、予めに魔王に滅ばされてた村。建物は壊れて全壊・半壊しており、村人は希望を求めて希うばかり、それなのにお店は何故か通常営業してたりね・・そんな場所。 村の形は〝十〟になっている、中心に村長さんがいて食べ物を配っていたりした。なのでこの村は勇者への依頼が多くて依頼品を持っていないとあちこち戻る羽目になったり大変な場所だったりね。
「教会は中心にあるって言ってたよね?」
「うん!」
なら村長の家はどこだろうか? 神官様にきいておけばよかったかも…
「あの人に聞いてくるね!」
即行動の千ちゃんが歩いている人を見たら走っていってしまった、ありがたいけどもう少し慎重に行こうよ!
その人によれば村長さんは存在していないらしい!
教会がまとめを行っていて家なんかもそこで買えるとか・・私たちが家を買うなんて思って無いだろうからね、ホントに色々きいておけばよかったよ
「お前らか!」
え!? ちょっと後ろから嫌な声が!? おかしくない? だってほんのほんの少し前にさかさま洞窟にって…ねぇ!
「勇者様だぁ!」
ちょっと千ちゃん、知らない人の話しを聞いたらダメだよ!
「あぁ、(パーティーで)王様と一緒にいた」
「(ヴェルちゃんとの挨拶で)はい、千です・・・1000だ!」
千で馴染むくらい使ってたから仕方ない・・・え?もしかして王子様関連? でも、ちょっと前までははじまりの村にいたし…
「仲間にならないか?」
「うーん、いいえ、ユウナちゃんの仲間だから♪」
分からない! ちょっと、マァマさんは!! 「何で」が多過ぎて困ります!
「お前らは・・果ての村へ何しに来たんだ?」
「あ、えっと、家を買いにと観光?」
「よく無事だったな」
モンスター対策剤を使ってここまで来たとは思っていない様子、実力は認められてるんだ
「みんなで力を合わせて何とか」
「そうか、やっぱり仲ま…「なりません」…残念だ」
「それより、マァマさんは?」
その質問に勇者様が一気に暗くなってしまう。マァマさんに何かあったのか? 死んだら戻るのに?
「実は…な・・」
勇者様が語ったのはついさっきのことだった。
さかさま洞窟を抜けようと割と余裕で進んでいた時のこと、出口の場所に運悪く複数モンスターがいてマァマさんと左右に分断されてしまったらしい。
そんなことは慣れていて、敢えて離す為奥へ引きつけそれぞれで倒すべく相手をしていたら勇者様はモンスターに体当たりされてしまい壁に飛ばされてしまった、すぐに起き上がろうと剣を構えながら地面に手を着くと
「土だったんだ」
「「え?」」
どういうこと? 洞窟の地面は石みたいな…
「この村のすぐ外に居た、村が近くて助かった。 だからあいつがどうなったか分からないんだ」
意味が分からない! そんなワープは無いだろう、だって私でさえ制限有りの家間だけだし、バグか?
その後、この村で確認していた最中で私たちを見かけたと語った。
「マァマ様、心配していますね…」
「あぁ、はやく戻らないとな」
千ちゃんが期待した目で見てくる。けど、ごめんね…、勇者様のこと信頼してないんだ…『アイテム』に入らないと思う!
「一応言っておくと、この辺のモンスターははじまりの村近くのモンスターの200倍くらいは強いからね」
さっきの言葉もこの村までってことじゃなかったことが分かったから伝えておいてあげよう。 死に戻りが最善って暗に教えたとは違うからね!
「は…? 果ての村って…
よく無事だったな…」
やっぱりどのくらいの位置にあるか把握してないね、魔王のお城に最も近い村だよ!
私たちは協力しません・・あ!
「これあげるよ」
「い、いいのか!」
「頑張ってね! 南東の方向だよ」
「分かった、ありがとう」
あげたのはモンスター対策剤2本、到底足りない。距離を知らない勇者様、しかし勇者様は伝説になるヒーローだ!多分大丈夫!敵も(ここよりは)弱くなるしね!
「ユウナ様…?」
勇者様を見送りながらみのりさんが「いいのでしょうか…」という不安の視線を向けてきた。
「おねえちゃん♪」
「うん♪おいで♪」
唐突に入ったマルシカクちゃんの抱っこ要請に応えるとみのりさんはもう忘れたかのように見蕩れてました。 嘘は言ってないし、バグ?にかかった勇者様を(今よりは)大幅に助けてあげてるのだから褒められることしたよね?
さあ、先にある教会だ! あ、ここのユニーク装備みのりさん向けのだ、さすがにやばいかな…
・・・。
「本日はどのような御用向きでしょうか」
村の中心にあったのは小さな教会だった。 見た目はちょっと大きな白壁の家で屋根が紺、入り口の扉は両開き扉になっていてすぐ上に十字架が見える。
ちょっと、大きくて綺麗なステンドガラスとかを期待していた私はガッカリだったり。
「はい、この村に住める家を購入したいと思いまして」
迎えてくれた40くらいのシスターさん、色々羽織って見えないから分からないけどそれくらいだと思う。購入の意思を伝えたらびっくりすると同時に目が輝いたように見えた。
「それは素晴らしいことですね!
是非、此方へ!」
内側に招き入れられると奥側が舞台のようになっていて、その中心に一段高い円形の台座がありそこに見覚えのあるちょっぴりふくよかな裸の女性像が置いてある。
「皆様に愛する者はいらっしゃるでしょうか?」
何が始まるんだ、家を買いたいだけなのに
「はい」「うん!」「はい!」「は、はうぃ」
ここにいる全員が肯定するとは思わなかったのかシスターさんは軽く驚きながら話を続ける
「それは素晴らしいこと! 全ての人は等しく愛する権利を与えられ、愛される権利を持っているのです!」
はぁ…そうですか、宗教勧誘で聞いたことあるような…。「あなたは神って信じますか?」なんて言われて「いいえ」って言って終わると思ったら終わらせてくれないで永遠と30分くらい相づち打ち続け疲れた記憶が…
「・・今の世に魔王なんかが現れた事で混沌と制限を強いら・・「魔王ちゃんは優しいよ!」れ?え?」
勇者様は大聖女の導きだとでも説こうと思っていたのだろうか? 分からないけど千ちゃんストップだよ! みのりさんが抑えている、止まったしチャンス!
「あ、あの家の購入をしたいのですけど」
「あ、ええ、あなた方がここに来られたのも偶然では無く大聖女様のお導きなのです!
かつて遥か昔、この世界は魔王の手で闇に呑み込まれようとされました、そんな時に!・・」
もういいよ!!興味無いんだって!家買わせろ!
多分その内あやしい商売人さんが代替策でなんとかしてくれると思う
「行こっか、家は諦める」
「わかった!」「は、はい」「今の魔王ちゃんかわいいもん!」
ただの教徒を逃させるなら分かるけど、家を買うって言ってる金づるの話を無視ってなんだろうね、あの神官様だったらよかったのに…
入り口の方に進む私たちにシスターは「待って下さい」と止めるので一応振り向く
「い、家はよろしいのでしょうか?」
第一声でわかる、これ不快なやつ!
「諦めますので大丈夫です」
今度は振り向かずに教会を出るのだった。
「ユウナちゃん格好よかった!」
「おねえちゃん大すき♪」
「ユウナ様よろしかったのですか?」
褒めてくれてありがとう! うん、すごく恥ずかしい、マルシカクちゃん癒やして♡
「んー♪ 勝手にごめんね、果ての村の家は諦める
買い物したら魔王のお城に行こうと思うけどいい?」
みんな気にしてなくて了承、勇者様の件といい今といいすごく疲れたね。
・・・。
「あ、あの?何も入っていないの…ですが?」
「何言ってんだい? みのりおバカさんなのね?
ねぇー、ユウナは見えるわよねぇ♪」
防具屋の褐色肌のお姉さんが箱に入っている服を摘まむと持ち上げた。
「そうですね、中々素敵な服ですよね♪」
「ふぇぇ…?」
ここではちょっと安い一つ8460Gだったのでお買い上げしました。
みのりさんと2人でお店を出るとマルシカクちゃんと千ちゃんが迎えてくれる
「何を買ったです?」
千ちゃんが楽しみにきいてくるけどみのりさんは冴えない表情だ
「そのぉ、ご、ごめんにゃひゃい! よく分かりませんのです」
「?、買ったんじゃないの?」
「そうなのですけれど…」
みのりさんの困った対応に笑ってしまったので、2人には見せるつもりはなかったけど出してあげることにする
「セット装備のこれだよ、効果は敵の攻撃が殆ど当たらなくなるけど防御系が1になるんだ」
「???、何も無いよ?」
ですよね!?みたいにちょっと救われたようなみのりさんに更に笑いが抑えられなかった
そんなことより私、のマルシカクちゃんを堪能しながら2人に触ってみるように言うと、私の手に自分の指を当てるように触ろうとする
「!?」「!!、何かあるね」
何かを二つ指で擦るように触っていて、それが布だと気付いたようで、ワクワクと答えを求めて私を見つめている
「それは〝透明服セット〟だよ」
そう、体感では敵の攻撃の命中率が5%くらいになっていて、卑しい能力を持つモンスターなんかに使えた装備で結構活用していた。 まぁ、当たっちゃった時は死にかけるか死ぬかなんだけどね、HP1残る効果のアクセサリーとかと併用でかなり有用だったりして。
「透明かぁ、服だよね! 着てみたい!」
「ふぇ!? そりぇって! あ、は、あぅ…」
だよねー、だからみのりさんだけ連れていったんだけど
「他の人には何か見えてるっぽいから大丈夫だと思うけどここでは止めとこうか」
「はい、分かった」
素直でいい子ですね。
「あ、あのぉ? ユウナ様にも見えているんですよね?」
「見えないですよ? 透明だもん」
「ふぇ? あの時に…?」
口に出さないが悩んでしまった。店員さんの前で見えないと言った物を買わさせてくれるわけがないでしょう、本当に素直でいい子ですね
「この服についてはまた後日確かめようね
魔王様に会いに行こう♪」
魔王のお城に出発だぁ!




