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初めての体験…

 魔王様と行く護衛道中も問題なく果ての村へやってきました。 道を阻まれた場所から一マスの距離が変わったのか、四季の町の方へが遥か長いはずなのに同じだけかかってしまい魔王様がブツブツと「ワープ(移動)すれば一瞬なのに…」と愚痴っていたり。その度に千ちゃんやみのりさんにちょっかいをかけてじゃれていたのには大変和やかで癒やされました。

 それでもずっと付いてきたんだから楽しんでいるのだろう。 魔王様大好きのプッチンさんとか拗ねてんじゃないかな!

「何から何までありがとう御座いました

 本当は御礼を致したいのですがわたくしにはその余裕がありません…。

 ですので、この道中で使うはずだったモンスター対策剤(こちら)を増額として差し上げます」

 最高の待遇を受けて予定の報酬に上乗せしたいという神官様だが手持ち金も少ないために代わりにしようとしたのがこれだ。

 しかし、ユウナたちには無用の物、一応最低限は受け取るが、そもそも報酬なんて無くてもいいと思っているくらいだ。

「お気持ちは嬉しいですけど、それは次の時にでもとっておいて下さい。使う人が持っておくべきですよ」

「うん!道をおしえてくれてありがとー♪」

 私の言葉だけでは引き下がってしまうところをマルシカクちゃんがフォローしてくれる

「・・これ以上は御迷惑になってしまいますね。 ありがとう御座います、皆様もありがとう御座いました

 貴女様方に大聖女様の加護があらんことを」、悩みがありましたらこの先の中心に建っています教会へとお越し下さい。 では失礼致します」

 神官様が深々と一礼すると建物が交互左右に建ち並ぶ真っ直ぐな道を歩いていきました。 

「クハハハ!ちと丁寧過ぎな奴じゃな

 中々に楽しめたぞ! 妾は戻るが彼奴の相手は任せるぞ!」

 魔王様も颯爽と地面すれすれを飛んで外へ出ると空へと上昇して消えていった。

「あ、バラットと勝負だっけ。めんどくさいね…」

「おねえちゃんは見てて!」「ユウナ様は休んでいて下しゃい、わたくしが代わりにやりますから」「マルシカクちゃんとみのりちゃんと頑張るです!」

 ちょっと呟いただけだったのに仲間が!みんなが気を遣ってくれるよ! なんかダメな人になっちゃう、でも、この状況でやるなんて言いにくい…

「ありがと、うーん、キュアだけかけとくね」

 笑顔と力強いお礼にちょっと心を痛めながら外へ出るとバラットが愉快気に「ふははは! やっときたのか」と言って空からやってきたのだった。


・・・。

 バラットが少しずつだけど強くなっている・・・気がする。 余裕・・なんだけど、今回みんなのレベルも上がっているのに削られるHPが少し上がっていてちょっと心配

「クハハハ! いいぞ! 我も最後だ、受け取れ! 道連れだ!」

 ボロボロになってきたバラットの最後の攻撃、みのりさんも魔法攻撃ダウンを使っているから大丈夫・・あれ?何もしない・・ハッ!?ま、待って!?

 攻撃宣言にも関わらず何もしてこないバラット。自分たちのターンだと思う面々、もうこの状態で一撃で終わるのは知っている


「マルシカクちゃん待って!?」「オメガファイアー!」


「おねえちゃん?」「ユウナ様?」「ユウナちゃん?」

 もう終わりの時。突然、異常な焦りのまま参入してくるユウナに戦っている3人は何事かと振り向く。

 しかし、その視線はすぐに彼女から外れる事となった!


・・・ドサッ


「マルシカクちゃん!!? やだよ…」

 マルシカクが地面に倒れてユウナがすぐに起こして抱いた。

 何が起きたか理解出来ないみのりと千は数瞬間をおいてから理解して慌てて駆け寄る。


「クハハハ!次こそは跪かせてやるぞ!」

「(キッ!)マルシカク様ににゃにをなさったのですきゃ!?」「バラットちゃん!! 酷いです!!」

 立ち去ろうとしたバラットは何故睨まれているかも分からない、敗北したのは自分であるのに?

 みのりはユウナの様子を見てマルシカクの〝状態〟を悟っている、事前にそう(・・)なっても仲間なら大丈夫であるとは聞いてはいるがそれとこれとは別であり、今もユウナは絶望したように涙を流しながらずっと静かに体を合わせていた。

「なにを、貴様ら勇者は神の加護を持っているだろう?」

「勇者じゃない! バラットちゃんの馬鹿!! 帰って!! ユウナちゃんが悲しんじゃう!!」

 すっかり気分は勇者を待ちうける魔王様の配下と気分揚揚だったバラットはこのちょっとした期間で考えが拗れていたのである。

 事態を把握したバラットは青褪めた! 昔だったら考えもしなかったこの行いも今では違う。しかも手にかけたのは盟友とも思っている相手である。

「そんな…我は…」

 オロオロするバラットだが、千なりの彼の姿は見せない方がいいというユウナへの配慮から「帰って!」と言われ続けすごすごと帰っていった。

 バラットが立ち去るとユウナの体からフッと重さが消えて腕をクロスさせたまま地面に倒れる

「マルシカク…ちゃん…」

「ユウナ様!大丈夫ですか?」「ユウナちゃん、マルシカクちゃんが!?」

 みのりはユウナを支え起こす

「だ、いじょー、ぶ。さい、ご、いえ、もど、るから」

「四季の町の夏の家ですね!」「行こう!!」

 即決の千にみのりは冷静に少し考える

1、このまま果ての村で宿をとってユウナの快復してから移動する

2、ユウナをおぶりながら四季の町まで帰る。モンスターは千がいるから大丈夫

3、ユウナの言っていた、誰か死んだら私も死ぬを実行する(マルシカクは迷わずすると言っていた)


 一番現実的なのは1だ、ユウナ様なら家を購入したら一瞬で行ける。 3は冗談混じりだったけど誰の反対も無く仲間で取り決めたことだ。 しかし

「はい! わたくしがユウナ様をお運びします!

 千様はモンスターをお願いいたします! 回復もお任せ下さい!!」

 迷うことなんてなかった、少しでも行動していたかった

「はい!!」

「道は・・お願いしましゅ…?」

「ふふ、任せて♪」

 ユウナを背負うと2人で今まで歩いてきた道を全速力で駆け出したのだった。


・。

・・。

・・・。

 来る時に6日かかった道だけど1日で六割くらいまで進む。

「…みのり、さん?」

「ユウナ様!」

「…ここは?」

「分かりませんが四季の町へと向かっております」

「ユウナちゃん起きた?」

 ゆっくり止まって、迷わないように先導していた千が嬉しそうにユウナの背中から抱き付く。

 ジンワリと人の温もりに挟まれてゆっくりと思い出してくる。

「あ、マルシカクちゃんが『道連れ』に…」

「みちづれ?」

「あ、うん、道連れはね、はつ…使ったすぐ後にそのモンスターを倒すと倒した人も死んじゃうんだよ」

 洋館のステージで出てくる〝ハイゴースト〟とかが使ってきて、使われたらその相手のターンがもう一度くるまで待たないと倒してはいけなかったりして見逃すと大変。

 もう少しはやく気がついていたらマルシカクちゃんが…、 よく四季の町にマルシカクちゃんが居るって分かったな…、 みのりさんは賢いからね

 そんなことよりも言わないと…身体が重い…

「みのりさんありがとう、重いでしょ? 歩くから大丈夫だよ」

「いいえ! 全然ですよ!

 半分は過ぎたらしいですし、このまま行っちゃいますのでユウナ様はゆっくりお休みしていて下さい!」

「はい! 千もまだまだいけます! 任せて♪」

 2人がすごく頼もしい、生き生きしてる

「ん、ありがと♪ お礼はするからよろしくね」

「「はい!」」


 ヒールとキュアを使うとお礼を言われて再び走り出す2人、少し新鮮な気持ちで感じ見ていたのだが思っているより疲弊していたのかいつの間にか眠りについていたのだった。


 2日目の夜にして四季の町に到着

・・・。

 起こされるとそこは四季の町の入り口前

「2人ともありがとう」

「ユウナ様のお役に立てて嬉しいです♪」「千でもユウナちゃんの力になれた?」

 2人ともすごく眠そうだ、無理もない。

 それよりも千ちゃんはいつでも助けられてるよ!?

「千ちゃんにはいつも感謝してるよ♪」

「よかった♪」

 不安だったのかとっても安心したようだった。

「んー…みんなでお風呂入ろうか」

「え…でも、マルシカク様が…」

 すぐにでも会ってそばに居て顔をずっと見て触れていたいけどね

「うん、それも大事だけど目覚めるのはまだ5日?4日?後だから、頑張ってくれた2人とね♪」

 例え疲れなくてもずーっと走り続けるなんて私には出来ないもん、感謝しかない

「ユウナ様!」「ユウナちゃん!」


 というわけで一番近い春の家からカナカナの町の家へ移動して一緒にお風呂タイム

 千ちゃんが裸なのにやたらくっ付いてきたのにはちょっとあれだったけど、そこは我慢だ! 今日は2人のためなのだから。

 マルシカクちゃんとやったように2人の体を洗ってあげる(前も)と喜んでくれて湯船でゆっくりと話し合っていた。

「バラットちゃん嫌い!!」

「そう、ですね…」

 これ、バラットへの印象を戻すのが大変だったとか。 彼に悪気は無かったんだよ、許してあげて!


・・・。

 想像以上にマルシカクちゃんの居ない生活は辛い!

 千ちゃんはとりあえずカナカナの町に送る。みのりさんは気を遣ってなのか自らケーレさんの元へ行くと言ったのでご飯とおやすみセットをたくさん渡しておいた。

 私はマルシカクちゃんの眠る傍らを離れなかった

「マルシカクちゃん」

 呼びかけても返事は無いんだけどたくさん話しかける、ほっぺたにキスをしても柔らかいし抱きしめても体温は温かいのだから、ただ・・ただただに眠っているようにしか思えないんだ。 たまに涙が出ちゃうのは何でだろう……後、たった4日我慢するだけなんだよ、なのに…

「…それでも、まだマルシカクちゃんがいるだけ我慢出来るんだよね」

 私、弱いなぁっと痛感しました・・・。



「起きたのか!? 顔(色)がヤバイぞ!! しっかり飯は食うのじゃ!!」

 どのくらい眠っていたのか目覚めたら魔王様がご飯を出しながら必死な感じだ、どうしたんだろう?

 自分を確認するとソファに座っていて薄い布団が掛けられていることが分かった。 ふー、何故いるのかを先に感じないあたり重症なのかな…

 魔王様はバラットに決死の報せを聞いてからすぐにとんで来てくれたみたい。

 すると、報告通りに布団で横たわるマルシカクちゃんと、その近くで軽く丸くなって半身捻れて寝ていた私を見て、私がマルシカクちゃんと溺愛し合ってるのを知っているために後を追ってしまったのだと勘違いしたようだ。

「確認したら息があったのでそこで休ませたわけなのじゃ」

 魔王様やさし! でも、本当にそんな気持ちだったよ・・みのりさんたちの気持ちが無ければ絶対してた

「うっ…その…じゃな……。

 ほ、本当に家来がスマナカッタ!!

 奴も悪気があったわけじゃなかったのじゃ! 代わりに妾が罰を受ける! 許されるわけが無いが彼奴は許してやってくれぇ!!!」

 涙を流しての土下座、その身体は震えていた。普段尊大な人である分本気度がすごく伝わる。

 彼奴・バラットもかなり落ち込んでいるのではないだろうか? 多分、魔王様が押しとどめてから一人来たのだと思う

 ・・・だからちょっと気まずい…

「魔王様、あの、私はバラットさんも魔王様も誰のことも恨んでも憎んでもいませんよ…」

「じゃ、じゃが!! ま、マルシカクを…ソナタの、 う…」

 堪えられずに一気に涙が溢れて落ちてゆく

 あー! 逆に私はすごく落ち着いてくる。

 もー!マルシカクちゃん許してね! 私は今にも崩れ落ちそうな魔王様を抱き包む

「魔王様、本当に大丈夫です!

 マルシカクちゃんは私の能力で蘇生するんです!」

 どう言えばいいか分からなかった、「死なない」は間違ってるし、説明にあった「死、になっても復活する」はなんか気持ち悪い・・から蘇生と言葉を使ってみた。

 おそるおそる魔王様に深くツッコまれることを覚悟しながらゆっくり離すと魔王様は私を見上げて目をまん丸くする

「そ、それは真であるのか…? マルシカクは…大丈夫なのか…?」

 う、かわいい!? 見た目相応の子供っぽさがくる。マルシカクちゃん!魔王様にトキメイテごめんなさい!

「はい、仲間にしか使えませんが。4日後くらいには」

「そ、そうなのか? そうなのか!! よかったぞぉぉぉ!!! 本当によかったのじゃぁぁぁ!!!」

 ちょっとうるさいですよ、近所迷惑です


 興奮も醒めて落ち着いて

「では何故お主は息も止まるような奇怪な格好で眠っておった?」

 え?分からないのですか!? 言わせたいのですか? たしかにおやすみセットで寝たのを見てても固定されたようなものだけどさ

「・・・マルシカクちゃんの隣で寝てたけど寝相でそうなったんだと」

「・・ほぅ、ぷはっ!クックックッ♪ そうかそうか♪意外じゃな、クハハハハハハハハ♪」

 ちょ!魔王様笑いすぎ!恥ずかしい…

 一頻り笑い終えた魔王様は私に眩しく見とれるくらい美しい笑顔を浮かべた

「よかったぞ! また落ち着いた頃、彼奴も連れて遊びにこよう

 あの死んだような顔はするな! マルシカク(そやつ)が悲しむぞ?」

「分かってますけど寂しくて、多分また泣きますけど頑張ります!」

「フフ、それでよい! ではまたな!」

 颯爽と窓を開けて去っていく魔王様、どこから帰るのでしょうね… 悪しき人は入れないのだから問題は無いけど防犯がザルに見えるよ。

「マルシカクちゃん浮気じゃないからね!」

 なんとなく言い訳してしまったのは自覚があったからだろう。 大丈夫です、マルシカクちゃん一筋は変わりません! 

 ホント、自分で思ってた以上に(こた)える、はやく目覚めて、恋しいよ!!

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