〜イサム音質編〜
休み時間
クラスの休み時間の風景は、女子たちがクソみたいなガールズトークを繰り広げ、イケイケグループがサッカーの話をし、イサムたち陰キャ集団はカードゲームだとか声優さんについて語り合っているのが常だ。
最近、そんな風景に馴染まない男がいた。
窓側最前列の席のシャニカマだ。
彼は最近、休み時間になる度にCDプレーヤーとそれを接続したヘッドホンを装着し、自分の世界に入っている。
「あれは突っ込んだ方がいいのか?」
イサムがキノコに尋ねる。
「でも、自分の世界に入ってるみたいだし。。。やめた方がいいよ。。。」
キノコが言う。確かに誰もが自分の世界には入りたくないわけである。
「でもアイツ、チラチラ俺たちの事見てるよな」
デュラ田が言う。その通りだった。
「それなら自慢したいんだよ。あのヘッドホンを。突っ込んであげるべきかなぁ」
キノコがそういうや否や、イサムはシャニカマの元に寄る。
「なんだか、すごいもんを持っているな」
イサムがそう言うと、シャニカマは、え?、という表情をしヘッドホンを外した。
「なんだか、すごいもんを持っているな」
よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、シャニカマが目をギラつかせて語り始めた。
「これは真空管アンプとかのメーカーのヘッドホンなんだぜ?高かったなぁ。んでんで、もう音質はイヤホンなんかよりダンチよ。ダンチ。重厚感っていうのかなぁ?分かる?ちなみに、今ってデジタルのプレイヤーが多いだろう?俺はCDプレイヤーなわけよ。なんでか分かるか?イサム、お前には分からないかもしれないけどさ、CDをインポートしてデータにするとさ、細けぇンだけど、ある音域がカットされちゃうんだよねー。分かる分かる?お前さ、ちくわ食べるだろ?ちくわの両端が1mでも無くなってたらなんか嫌だろ?いや、食べるには変わらねーかもしれない。そういう意見もわかるぜ。分かる。でも俺たちは完全なちくわを知っちまってるわけ。それならあの丸みを帯びた両端を食いたいだろ?音域もそうだよな。やっぱちょっとの端っこが無くなったらナンセンスだろ?まぁ、聴けば分かるかもな。イサムに分かるかなー?この音質、でも素人さんなら素人さんなりに違いは分かりやすいかもな。ほら、重厚感を気にして見て、貸してやるよ、ほら、つけてみな」
流れてきたのは落語だった。




