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体育祭-6

そんな感じで上手く誤魔化せ…はしなかったため、先生が倒れた生徒のところに行った時点で私は逃げた。アイツは追いかけてこようとしたが、タイミングよく殿下が来てくれたため上手くいった。ありがとうございます、殿下。まあ全ての原因は、あなたがよく分からない競技を発案したせいなんですけど。


一応、殿下に頼まれて備品と取りに来た体で逃げて出したため、とりあえず倉庫までは来た。だが…


「何持っていけばいいんだ…?」


あいにく「倉庫に備品を…」までしか聞いていないため、何が必要なのか分からない。

やらかしたと思わず頭を抱えるが、今戻ったところでアイツに捕獲されるのがオチだ。ひとまず中に入って色々見て回ったのち、なんかそれっぽいのを持っていけばいいだろう。急ぎではなさそうだったため、いくら時間をかけても問題ないはず。そうして中へと入った私なのだが…


ーーーガチャ


「へ?」


明らかに外から鍵をかけられた音がしたのである。

足音を聞くに複数人…と言うかそもそも、後を付けられていたことには気が付いていたのだが。


「犯罪に片足突っ込むのは感心しないわね~」


別にどうとでもなるかと思って放置してしまった。


だって流石に、倉庫に閉じ込めるまでするとは思わないじゃん?


こう言う適当なところが、アイツに眉を顰められるのだろう。気が付いていたなら始めから対策しておけって。

まあひとまず…


「これで私は遅れて行く大義名分ができたわけだ」


しばらくここにこもっていても、怒られはしないだろう。

本当はこの鉄製の扉を扇子一振りで両断することもできるが、それはそれで騒ぎになるのでする気はない。私だって流石に使い所は選んでいるのだ。


ひとまずその辺にあった椅子に腰掛け、そっと目を閉じ外の様子を伺う。


「…2、3人が競技場の方に走ってる。まあ、この感じは普通に生徒」


多少離れていても、気配を読むくらいなら普通にできる。魔力反応もないため、本当にただの一般生徒なのだろう。


「流石に考えすぎか」


アイツの心配性が移ってしまったらしい。この学園で何もないことなんて分かっているのに、アイツが最近妙にピリピリしているから。だから今日だって気がつくと隣にいるし、離れていてもすごい視線を感じる。私は一体何歳児だって話だ。


「だから神器まで使って…」


私は大丈夫だって言いたかったのに、結果は見事に真逆。むしろ心配される始末だ。普通に笑えない。


「私だって、理由なくほいほい神器使ったりしないわよ」


膝を抱えながらむすっとした顔で呟くが、聞いてほしい奴は今ここにはいない。いや、やっぱり聞かなくていい。アイツのためにとか絶対に知られたくない。


今の状態は自分自身が一番よく分かっている。ギリギリのところで保っているのだと。


「アイツのおかげで…」


傷一つない柔らかな自身の手を見て、ひどくやるせ無い気持ちになる。まるで自分にできることは、もう何もないのだと言われているようで。


「護られるだけのお姫様なんて、真っ平ごめんなんだけどなぁ」


1人の所為か、ついつい情けない声を出してしまう。

分かっているのだ。神々から与えられたこの力が、呪いに変わってしまったことも。神聖術はまだかろうじて使えるが、あの力は…聖女の力を使えば、私は間違いなくもう持たないことも。

今はアイツが呪いを抑え込んでいてくれているが、根本的な解決にまでは至っていないのだから。


「呪いの解呪は神官の専門…でもこれは神官長でも解けなかった」


なら後可能性があるのは、この世で唯一聖女の力を持つ私だけ。でもこの力を使えば最後、私は呪いに侵食されて死ぬ。ひどく矛盾していると思うがこれが現実なのだ。


そう、どうしようもない現実…


「ウィルは私が、聖女の力を失くす可能性にかけていたみたいだけれど…」


結果はご覧の通り。なぜか歴代聖女と異なり、聖女の力はまだ私の中にある。まあほとんど呪いに変異してしまっているため、もう別物なのかもしれないが。


「最後に残った方法は、私に呪いをかけた呪詛師を殺すこと」


だがこれはまず無理だ。

神官長が解けないほどの高度な呪いをかけた上に、その呪いをかけられた場所は世界の最深部と言われている場所。しかもいくら最後の魔王討伐後で疲弊していたとしても、パーティーメンバーの誰もその呪詛師の存在に気が付けなかったのは普通に考えてあり得ない。

それに…いまだに一つ、違和感を覚えていることもある。


「なぜあの呪詛師はウィルに向けて呪いを放った…?」


詳しくは知らないが、呪いにも種類があるらしい。つまりあれは、間違いなく聖女の力を呪いへと変異させるものだったのだろう。にも関わらず、あの呪詛師はウィルに向かってそれを放っていた。私がアイツの間に割って入るとは限らなかったのに。


「そりゃあ、あの状況で私が間に入る以外の選択肢はなかったわけだけど…それでもわざわざウィルに向けるのはおかしくない?」


確実性をとるなら、直接私に向けるべきだろう。あの中では比較的無事だったとは言え、流石に私も不意打ちで来られてはなす術もない。結界術を発動させる間もなく喰らっていたはずだ。


「転移魔法を発動させようとしていたウィルと、ロイさんの治療をしていた先生、レオはその辺で伸びてたし…」


当時の状況を改めて思い返しながら眉を顰めて考え込む。


「ウィルの邪魔をするため?転移魔法で逃げられたら困るから…いやでも、結局その後追撃とかはなかったらしいからなぁ」


あいにく呪いを受けてすぐに意識を失ったため、その後のことは知らない。ただ…


「アイツの泣きそうな顔は見たくなかった」


最後に見た顔がアレとかやめてほしい。思い出してしまい苦い顔をする。

いつも澄ました顔をしているくせに、何でああ言う時だけ…これで本当に死んでたら、死んでも死に切れない。まあ私を死なせなかったのはアイツなのだが。


「無理矢理魔力で聖女の力を押さえ込む…力技だけど、まあ対処療法としては間違っていないか」


それもアイツの実力があってこそだが。普通の魔法使いはそんなこと出来ない。私がウィルの魔力に耐えきれず死ぬか、あちらの魔力が枯渇して死ぬかとのどちらかだ。


「私のために命まで賭けなくていいのに…」


役目は終わった。だから正直、いつ死んでも悔いはない。これが私の嘘偽りない本心なのだから。

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