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体育祭-4

「エルシア!玉入れ頑張りましょうね!」

「がんばろ~」


やる気満々なアンネマリーと一緒に「えいえいおー!」片腕を突き上げる。

最近体力の衰えを感じて沈んでいた私だが、コントロール力には自信があるため、玉入れならそこそこ貢献できる自信がある。と言うか、最低でも一つの競技には参加しないといけないため、玉入れが1番マシかなぁ…と思っただけなのである。


え?消極的過ぎるって?


ただでさえ生徒会の仕事で忙しいのだから、競技にまで体力を割く余裕なんてものはない。


「わたくし玉入れなんて初めてですわ!」

「あの上の方にあるカゴの中に投げ入れるんですよー」


指差した先にあるのは、まあ一般的な玉入れのカゴである。だが、下を見ればそこにいるのは…


『わぁーい』


縦横無尽に動き回る、手のひらサイズのもふもふの生物である。


「きゃー!何ですのこれ!?かわいいですわー!」

「わたげちゃんですね…」


このために私、この子達育てさせられたのか…



「魔法植物の一種で、ある程度成長し切るとこうやって土の中から出て来て、次のお家を探すんです」

「なるほどですわ。ところで…」


『ママ!ママ!』


「エルシア息できてますの!?」

「大丈夫~」


視界はなぜか真っ白で、アンネマリーの姿ももう見えない。原因は十中八九、わたげちゃんの所為だと思うが。


「ちょ…どんどん集まって来ますわ!?」


まじか…


もふもふは確かに気持ちいいが、全身覆われるのは何か違う。


と言うかこれ、他の人からどう見えてるんだ?巨大な毛玉?


どうにかして引き剥がしたいが、もう身動きが取れる状態でもない。もちろん声も出せない。


…詰んだかも?


窒息死とはいかないが、そろそろ重さに耐えきれず立っていられそうにない。まあこのまま倒れ込んだとしても、わたげちゃんがクッションになってくれるとは思うが。


一旦諦めるか


どうにもならないと察して、ひとまず倒れ込もうとしたその時…


「…!?」


突然何者かに腕を引っ張られた。いやまあ、誰かは予想がついているのだが。

絶対今言うことじゃないかもしれないが、よくそこが腕だと分かったな?と素直に感心してしまう。あとあの毛玉の中に、躊躇なく手を突っ込める度胸も。


一瞬で視界が開け、一番初めに目に入ったのは…


「何やってるの…」


予想通りの呆れたようなアイツの顔だった。


「不可抗力」


ぽすりと奴の胸に受け止められ、苦々しく呟く。流石にこれは私も予想外だったのだ。

確かにわたげちゃんは、育ててくれた人を親だと思う習性もあるらしいが…


『パパー!』


「…何でこの子たちの親になってるの?」

「アンタが成長速度早めるために、魔力分け与えるからでしょーが!?」


おかげで実際にお世話した私のことをママ、魔力を分け与えてくれたコイツをパパだと思い込んでしまったらしい。


何でだよ!?


「だって体育祭に間に合いそうになかったじゃん」

「あのまま行けばギリギリ間に合ったわよ…多分」


もう頭を抱えるしかない。この事態どうやって収集するんだ…

アンネマリーはすごいキラキラした目でこっちをガン見しているし、周りは…うん、声にならない悲鳴をあげてる。ちょっと視線は向けれないかな、怖い。そして、周囲にはわたげちゃんたちが、『ママー!パパー!』と言いながら飛び回っているのだ。


シュールすぎる


「と言うか、何でわたげちゃん?普通のお手玉っぽいのでいいじゃない」


急に変更が決まったため、こちらは何も聞いていなかったのだが…何がどうなってこの案が採用された?


「それじゃあ簡単過ぎるから、難易度上げた方がいいだろうって殿下が」


そうか、全ての元凶は殿下か…


思わず肩をがくりと落とす。コイツならまだしも、殿下に文句を言える度胸はない。


「まあ確かに、動き回る…と言うか、飛び回るわたげちゃんをカゴに入れるのは難しいと思うけど」


そう、実はわたげちゃん飛べるのである。綿毛だから。しかも自分の意思で動いているので、最悪カゴに入れられたとしても逃げ出せる。つまりは全てはわたげちゃんの気分次第。難易度の上げ方絶対間違ってる…どんな鬼畜仕様だよ!?と言う感じでしかない。


「この感じじゃ、玉入れならぬわたげ入れは中止かな」

「今からでもお手玉に変えたら?」


例年使っていたはずだから、倉庫に探しに行けばすぐに見つかるだろう。


「俺はそれでもいいけど…」


だが、なぜかアイツは歯切れが悪かった。


「多分時間ないよ?まずはこの子たち何とかしないといけないし」

「…あ」


そこで気が付いた。今自分たちがどう言う状況なのかと。

目も前に広がるのは白い壁、360度見渡しても同じ景色。


「高っか」


見上げると校舎くらいの高さはある。これ乗り越えるの?


「と言うか、なんかあの子達なんか膨張してない?」

「暑さの所為でしょ」

「暑さの所為なんだ…」


詳しくは知らないが多分そのはず。あれだ、暑いと空気が膨張する原理と一緒だ。いやまあ、冬も寒さに耐えるために一回りくらい大きくなるらしいが。つまりはほぼ年中?これが通常?


…まあ考えたところで、分かるわけもないか


魔法植物なんていまだに謎が多いのである。もう、そう言うものだと思っておいた方がいい。


「ちなみにこれ、シアがお願いしたら大人しく聞いてくれる感じ?」

「この前生まれたばかりだから、こっちの言葉は理解できないわよ」

「じゃあ、飛び越えるか…吹き飛ばすかの2択か」


まあ単純なのはその2択だろう。他にも方法がないこともないが、そちらは色々と後処理がめんどくさい。


「飛び越えたところで、また囲まれるのがオチ。この子たちすごい構ってちゃんだから」


この子たちがここにいる限り、永遠に絡まれるだろう。休みの日なら全然いいのだが、あいにく今は学校なのだ。流石に構ってあげれない。


「ふーん、じゃあ吹き飛ばす方向で…」


その瞬間、なぜかアイツがものすごい引き攣った顔でこちらを見て来た。


「何それ」

「扇子」

「それは見れば分かる」


私の手元にあるのは繊細な装飾が施された銀色の扇子。正確に言えば、打撃攻撃も可能な鉄扇だが。


「これなら別に持っていても違和感ないでしょ?」

「そう言う問題じゃない」


真顔で否定されてしまった。


あれか…心配しているのは、私が周りに被害を出さないかか?


相変わらず失礼な奴だ。そのくらいの手加減、ちゃんと出来るって言うのに。

私のむすっとした顔に気が付いたのか、アイツがなぜか真剣な顔で扇子に手を添えきた。


「シアの実力は心配してないけど…」

「じゃあいいじゃん」

「よくない」

「「…」」


しばし無言で見つめ合い…


「隙あり!」


アイツの手が緩んだ隙に、勢いよく扇子を振り上げた。


「なっ!?」


ーーーごーっ!


突然私たちを中心として、突風が巻き起こり…


「よし、これで再開できるわね」

「はあ…」


わたげちゃんたちは、どこか遠くの地へと旅立ったのであった。


…隣で疲れた顔している人のことは、うん!見なかったことにしよう!


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