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土曜日のクイズ

クイズを作るのは楽しいですけど、難易度の調整が難しいですね。

# 土曜日のクイズ


土曜の昼は、少し賑やかになる。

今日はカウンターに一人、窓際に親子連れが一組いた。子供が二人いて、どちらもホットミルクを飲んでいた。親がときどき「静かに」と言うが、子供たちはあまり聞いていなかった。

「ねえ、なんでコーヒーって苦いの」と下の子が聞いた。

「苦いから大人の飲み物なんだよ」と親が言った。

「大人になったら苦いのが好きになるの?」

「なる人もいる」

「なりたくない」

「今はそう思うんだよ」

下の子が私を見た。「おじさんは苦いの好き?」

「好きですよ」と私は言った。

「いつから好きになったの」

「さあ」と私は言った。「気がついたら好きになってました」

「気がついたら?」

「ええ」

子供が「ふーん」と言って、ホットミルクに戻った。親が「すみません」と言った。「いえ」と私は言った。

そこへ、大学生らしい四人組が入ってきた。男女混合で、全員リュックを背負っていた。以前も来ていた、クイズサークルの学生たちだった。

「四人いいですか」とリーダーらしい男子が言った。

「奥のテーブルへどうぞ」

四人は奥に陣取って、それぞれバッグから紙を取り出した。手書きのメモや、印刷した紙もあった。

「持ってきた?」「持ってきた」「私は三問」「俺は二問、めちゃくちゃ難しいやつ一問含む」という声が聞こえた。


コーヒーを四つ持っていくと、一人が「作ってみたら難しかった」と言っていた。

「難しいって、解くのが?」と別の一人が聞いた。

「作るのが。問題として成立してるかどうか、自分じゃわからなくて」

「あーわかる。答えを知ってるから、ヒントが多すぎるのか少なすぎるのか判断できない」

「そうそう。知ってると簡単に見えちゃう」

「相手の目線で考えないといけないから難しい」


出し合いが始まった。一問目は「日本で一番深い湖は?」で、田沢湖と全員が即答した。二問目は「江戸時代に橋の上で人の人相を観察し、犯罪者を見分ける役目を担ったとされる存在は?」という問題で、誰も答えられなかった。

「なにそれ」

「目明し、という職業で、実際に橋に配置されてたこともあるという話があって」

「本当に?」

「本当かどうかは、ちょっと怪しいけど」

「怪しい問題を出していいの」

「ぎりぎりセーフ」

「アウトだよ」

「じゃあボーナス問題ということで」

「ボーナスって何」

みんな笑った。


三問目は「オリンピックで、選手が競技中に実際に食べたものとして記録に残っているのはどれ? ①バナナ②チョコレート③梅干し」という問題だった。

「③はないでしょ」と一人が言った。

「あるかもよ」

「梅干しを食べながらオリンピックに出る人がいるの」

「マラソンとかだったら、あるかもしれない」

「じゃあ②で」

「私も②」

「俺は①」

「私も①かな」

正解は①のバナナだった。

「バナナかー」「食べやすいからか」「栄養もあるし」という声が続いた。


しばらくして、リーダーらしい男子がカウンターの方に声をかけてきた。

「マスターも一問どうですか」

私は手を止めた。

「一問だけなら」

四人が少し相談した。

「じゃあこれ」と一人が問題を読み上げた。「フランス語で『信じない』という意味の言葉が語源とされる、英語の否定的な接頭語はなんでしょう」

私は少し考えた。

「ディス、でしょうか」

「正解です」と問題を出した学生が言った。

「え、なんで知ってるんですか」と別の一人が言った。

「たまたまです」と私は言った。「どこかで読んだかもしれない」

「強い」と誰かが言った。

「もう一問どうですか」と別の一人が言った。

「一問だけと言いましたので」

「えー」

「えーって言わない」とリーダーの男子が言った。「マスター、ありがとうございました」

「どういたしまして」

「悔しい」と問題を出した学生が言った。「もっと難しい問題にすればよかった」

「次はもっと難しいのを用意してきます」

「次があるんですか」と私は言った。

「ありますよ」とリーダーの男子が言った。「マスターが不正解するまで、続けます」

「それはプレッシャーですね」

「そうですよ」と男子が言って笑った。


親子連れが帰った。子供の一人が「また来たい」と言って、親が「またね」と言っていた。


四人はその後も問題を出し合って、一時間半ほど過ごした。途中で「難しすぎてわからない」「それは問題として成立していない」「ヒントが答えそのものになってる」「この問題、自分で作って自分で解けなくなってる」という声が何度も聞こえた。


帰り際に「また来ます」とリーダーの男子が言った。「次はマスターに正解させない問題を持ってきます」とも言った。一人が「絶対正解するよ、あの人」と言って、四人で笑いながら出ていった。


問題を作る、というのは、相手のことを想像することだと思った。どこで引っかかるかを、答えを知らない状態で考えなければならない。コーヒーを出すことも、たぶん似たようなものだ。この人は今、何を必要としているか。言葉なしに、ずっと考えている。わからないけれど。


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