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日曜日の午後

# 日曜日の午後


二時を過ぎた頃だった。


日曜日の午後は、のんびりとした空気がある。


健太が奥のテーブルを拭いていた。


ドアベルが鳴った。


男子大学生が三人、入ってきた。どこかで昼食を食べてきた帰りのような、少し満足した顔をしていた。それでもまだ食べ物の話をしていた。


「いらっしゃいませ」


「ブレンドを三つ」


カウンターに並んで座った。


コーヒーを出した。


「白米に一番合うおかずって何だと思う」と一人が言った。


「なんだよ急に」ともう一人が言った。


「いや、さっき定食食べてて思って」


「卵かけご飯じゃないですか、やっぱり」と三人目が言った。


「卵かけご飯はおかずなの?」と最初の男が言った。


「おかずでしょ。白米にかけるんだから」


「混ざるじゃん。おかずって、別々に食べるものじゃない?」


「定義から入るの?」ともう一人が笑った。


私はカウンターを拭きながら、聞いていた。


「まあ、卵かけご飯は置いといて」と最初の男が言った。「俺は塩辛だと思う」


「塩辛」と三人目が言った。「渋いな」


「渋いけど、最強だよ。あのねっとりした旨みがご飯に絡んで、噛むたびにイカの風味と塩気が口の中に広がって、最後に少し甘みが来る」


「甘み?」


「塩辛の甘みって、食べたことある人にしかわからないやつ。塩気の後ろに隠れてる甘さで、あれがご飯の甘みと合わさると、もう止まらなくなる」


「言われると食べたくなるな」ともう一人が言った。「俺は納豆だけど」


「納豆は強い」と最初の男が言った。「でも塩辛ほど深みがない」


「納豆をバカにするな」と三人目が笑った。「あのネバネバがご飯に絡んで、辛子の刺激が鼻に抜けて、タレの甘じょっぱさがまとまって、一口ごとに旨みが増していくんだよ。しかも混ぜれば混ぜるほどうまくなるっていう」


「混ぜる回数で味が変わるの、科学的に証明されてるらしいよ」と最初の男が言った。


「そうなの?」


「百回以上混ぜると一番うまくなるって話がある」


「じゃあ俺毎日損してたかもしれない」


健太がカウンターに戻ってきた。少し聞いていたようだった。


「俺は明太子だと思います」と健太が小声で私に言った。


「そうですか」


「あのプチプチした粒が弾けて、塩気と辛みと旨みが一気に来るやつ、最高じゃないですか」


「そうですね」


「マスターは何ですか」


「さあ」


健太が少し不満そうな顔をした。


「変わり種でもいい?」とカウンターの男子の一人が言った。ちょうど三人目だった。


「変わり種?」と最初の男が言った。


「俺、バターご飯が好きで」


「バターご飯」ともう一人が言った。「それ、おかずじゃなくない?」


「だから変わり種って言ってる」と三人目が言った。「熱々のご飯の上にバターをひとかけ乗せて、しょうゆを数滴垂らして、溶けていくのを少し待ってから混ぜるんだよ」


「待つの?」


「待つ。半分溶けかけたくらいが一番いい。全部溶けてからじゃなくて、まだかたまりが少し残ってるくらい。そこにしょうゆが染みて、ご飯の熱でじわじわと広がっていく」


「わかる気がする」と最初の男が言った。


「バターの濃くてミルキーな香りと、しょうゆの焦げたような香ばしさが合わさって、ご飯の甘みを全部引き出す感じがするんだよ。一口食べたら、また一口食べたくなる。気づいたら茶碗が空になってる」


「それ絶対美味いやつじゃん」ともう一人が言った。


「変わり種、もう一個言っていい?」と三人目が続けた。


「言いなよ」


「マヨネーズご飯」


「それは流石に邪道では?」と最初の男が言った。


「邪道だけどうまいから聞いて」と三人目が言った。「キューピーのマヨネーズを、熱いご飯にたっぷりかけて混ぜるんだよ。マヨネーズの油がご飯の一粒一粒をコーティングして、酸味とコクが混ざって、ご飯全体がクリーミーになる」


「太りそう」


「太るだろうけどうまい。あの卵の濃さとほんのりした酸味が、白米の淡白な甘みと合わさるのが最高で。しかもしょうゆを少し垂らすと、なんかもう別の料理になる」


「別の料理」


「うん。マヨネーズしょうゆご飯。騙されたと思って一回やってみて」


私はグラスを磨いていた。


「俺が一番うまいと思う変わり種を言っていい?」と最初の男が言った。


「言いなよ」


「塩昆布とバター」


しばらく間があった。


「塩昆布とバター?」ともう一人が言った。


「熱々のご飯に、塩昆布をひとつかみ入れて、バターをひとかけ乗せて、全部混ぜる」


「どんな味になるの」


「昆布の出汁の旨みと、バターのコクが合わさって、塩昆布の塩気がちょうどよく全体を引き締めて、なんか和風なんだけど洋風でもある味になる。ご飯の粒がバターで光って、昆布の緑が混ざって、見た目からしてうまそうで」


「見た目まで語るの」と三人目が笑った。


「食べ物は見た目も大事だよ。あのご飯全体がうっすら光ってる感じ、たまらないんだよ」


「ちょっと待って」ともう一人が言った。「さっきから腹が減ってきた。昼食べたのに」


「俺も」と三人目が言った。


最初の男が笑った。


健太がまた私のそばに来た。


「塩昆布バターご飯、知らなかったです」と健太が小声で言った。


「そうですか」


「マスター、やったことありますか」


「ないですよ」


「今日の夜やってみます」健太が言った。少し目が輝いていた。


「報告しなくていいですよ」


「報告します」


私はグラスを棚に戻した。


「正統派の話に戻ると」ともう一人の男子が言った。「やっぱり焼き鮭だと思う」


「焼き鮭」と三人目が言った。「それは強い」


「強いでしょ。皮をカリカリに焼いて、身はしっとりふっくらで、ほぐしながら食べるんだけど、あの鮭の脂が染み出てきて、塩気がご飯を引き立てて、皮の香ばしさが全体を締める」


「皮が大事なんだよ、焼き鮭は」と最初の男が言った。


「大事。皮を食べないのはもったいない。あのカリカリとした食感と、凝縮した旨みが皮には詰まってる」


「わかる。皮だけで飯が食えるレベル」


「食えるよ。あと大根おろしを横に添えて、ちょっと絞って鮭にかけると、さっぱり感が出てまたいくらでも食えるようになる」


「またいくらでも、の発想がすごい」と三人目が笑った。「一杯食べ終わったのに、もう一杯いけるようになる」


「それが焼き鮭の力」


「豚の生姜焼きも強いよね」と三人目が言った。「あの甘辛いタレがご飯に滴って、豚の脂の旨みと生姜のピリッとした香りが鼻に抜けて、気づいたらご飯が消えてる」


「消えてる」と最初の男が言った。「タレをご飯に吸わせて食べる部分が一番うまい」


「タレご飯の話が出ると止まらなくなるんだよな」ともう一人が言った。「肉汁が染みたご飯の破壊力」


「鶏の唐揚げのレモンを絞った汁がご飯にかかった瞬間も最高だよね」と三人目が言った。


「唐揚げのレモン汁ご飯は反則」と最初の男が言った。「あの揚げ油の香りとレモンの酸味と、衣のザクザク感が崩れながらご飯と混ざるやつ」


「そろそろ限界じゃない」ともう一人が言った。


「限界」と最初の男が言った。「早く帰って飯食いたい」


「昼食べたじゃん」


「食べたけど食べたい」


三人が笑った。


コーヒーを飲み終えて、立ち上がった。


「ごちそうさまでした」


「ありがとうございます」


「マスター」と最初の男が言った。「白米に一番合うおかず、何だと思いますか」


私はしばらく考えた。


「梅干し」と私は言った。


三人が少し黙った。


「シンプルですね……」と三人目が言った。


「シンプルですけど」と私は言った。「あの酸味と塩気だけで、ご飯が進む。余計なものがない分、ご飯そのものの甘みが一番よくわかる気がします」


三人がまた少し黙った。


「なんか、負けた気がする」と最初の男が言った。


三人が笑いながら出ていった。


健太が三人の使ったカウンター席を拭きながら言った。


「マスター、梅干しは反則じゃないですか」


「聞かれたから答えただけですよ」


健太がまだ納得していない顔をしていた。


一人になったのは、それからしばらくしてのことだった。


コーヒーを一口飲んだ。


塩辛、納豆、バターご飯、塩昆布バター、焼き鮭、生姜焼き。三人はたくさんのうまいものを話していった。全部、聞いているだけで腹が減った。


でも結局、一番長く食べ続けているものが、一番合うおかずなのかもしれない。梅干しを初めて食べたのが、いつだったか、もう覚えていない。


なかなか最高のご飯のアテに出会えずさ迷っています。生姜焼きに添えてある千切りキャベツにはサウザンアイランドドレッシングが合うと思います。

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