『殺害』
森の中。
木々の隙間から差し込む光が、地面に揺れる影を落としている。
風は穏やかだ。
すべてが静かに見える。
木々の間には、小さなテントがひっそりと隠されている。
テントの中は蒸し暑い。
紙があちこちに散らばっている。
名前のリスト。
書き込みが加えられ、
いくつかは線で消されている。
エマはその上に身を乗り出している。
集中している。
顔には疲労がにじんでいる。
サムは横になりかけた姿勢でぐったりしている。
サム
「三時間ずっと死亡記事を読まされてる気分なんだけど……」
エマは顔も上げない。
エマ
「だって、実際そういうことだもの。」
サムはため息をつく。
原はテントの入口近くにしゃがみ込んでいる。
手にはスマートフォン。
画面を見る。
やはり圏外だ。
わずかに顔を上げ、
周囲を見渡す。
そしてスマートフォンをしまう。
原
「もう十分だ。
今日はここまでにしよう。」
エマは苛立ったように顔を上げる。
エマ
「は?」
原
「これ以上進展はない。」
間。
原
「それに、あまり長く学校を離れるわけにもいかない。」
エマは勢いよく身を起こす。
限界に近い。
エマ
「じゃあ戻って続ければいいじゃない。」
原は首を横に振る。
原
「だめだ。」
エマ
「なんで?」
原
「ここでやっていることは、すべてネットワークの外に置かなきゃならない。
シェイドはどんなシステムにも侵入できる。」
サムが少し身体を起こす。
サム
「最高だな。
つまり俺たち、これからテント暮らしってこと?」
エマ
「馬鹿げてる……
私の家なら百倍は効率よく調べられるのに。」
原
(冷たく)
「その分、百倍危険だ。」
沈黙。
エマは歯を食いしばる。
原は荷物をまとめ始める。
原
「続きは明日だ。
別の場所を探しておいてくれ。
人目につかない場所を。」
彼は立ち上がる。
もう出ていくつもりだ。
エマは苛立ちながらため息をつき、
再び資料へ目を落とす。
一枚めくる。
さらにもう一枚。
視線が機械的に文字を追っていく。
そして――
止まる。
何かに気づく。
目が釘付けになる。
エマ
「……待って。」
原が振り返る。
エマは一つの名前を見つめている。
エマ
「青山美樹……」
サム
「それがどうした?」
エマは顔を上げる。
エマ
「私……
この人、知ってる。」
原は眉をひそめる。
サム
「は?」
エマ
「私がいた孤児院で働いてた人なの。」
サム
「ってことは――」
エマ
「……うん。」
原
「何の話だ?」
エマは原を見る。
エマ
「私とユウトは同じ孤児院にいたの。」
沈黙が落ちる。
森の音さえ消えたように感じられる。
原
「冗談でしょう……?」
原はテントを出る。
エマがその後を追う。
エマ
「待って!」
原
(苛立って)
「それを今まで黙っていたのが賢明だと思ったんですか?」
エマ
「言ったはずよ。
私の動機はあなたには関係ない。」
原
(苛立って)
「正気ですか!?
その孤児院の人が亡くなっているなら、酒井がエマさんの存在も把握している可能性がある。何を考えているんですか?
二十四時間以内に死にたいんですか!?」
その瞬間、
エマは何かに気づく。
エマ
「そうだ……
その通りだわ……」
彼女は再びテントの中へ戻る。
原
「本当に頭おかしいですよ……」
エマは答えない。
再びリストへ目を落とす。
探す。
エマ
「……遺体で発見……」
原が近づく。
エマは指先でリストをなぞる。
視線が下へ下へと移動する。
そして――
止まる。
エマ
「嘘でしょ……
なんで今まで気づかなかったの……」
原
「何だ?」
エマ
「見て。」
原は身を乗り出す。
読む。
沈黙。
エマ
「他の人たちはみんな……」
指を滑らせる。
エマ
「『死亡』……
『行方不明』……
『自殺』……」
間。
そして指が止まる。
エマ
「でも、酒井ユウトだけは……」
沈黙。
エマ
「『殺害』。」
原は顔を上げる。
原
「事件は事故として処理されたはずだ……」
エマは彼を見つめる。
真っ直ぐに。
エマ
「そう。」
間。
エマ
「だったら、どうしてシェイドは『殺害』って書いたの?」




