隠されたファイル
センは布団の上に横たわっている。
眠っている。
ケイリンは彼の手をそっと握り、静かに古い言葉を唱えている。
やがて立ち上がり、センを休ませるためにその場を離れる。
外へ出る。
縁側で、信夫が近づいてくる。
信夫
「センの様子はどうですか?」
ケイリン
「大丈夫です……
(間を置き、声を強めて)
さて……本当のことを話してください、信夫。
あの子は何者なのですか?」
信夫
「原さんから何も聞いていないんですか?」
ケイリンは素早く竹の棒で信夫の肩を叩く。
信夫
「痛っ! っていうか……何するんですか!」
ケイリン
(冷たい声で)
「待っている時間はありません。
知っていることを話しなさい。
今すぐに。」
信夫はためらう。
だが、もはや逃れられないと悟り、ため息をつく。
信夫
「分かりました……
(間を置き、声を落として)
センは……酒井隼人の息子です。」
ケイリンは眉をひそめる。
ケイリン
(冷たい声で)
「綾柳の族長のことですか?」
信夫は頷く。
信夫
「実は、実の息子ではありません……
センは五歳の時に養子として迎えられました。
ただ、知り合いの記者が、本当は隼人さんの実の息子かもしれないと言っていて……
まあ、とにかく複雑なんです……」
ケイリンはしばらく黙り込み、その話を整理する。
そして歩き出す。
信夫
「原さんがその話をしたかどうか分かりませんが……」
ケイリンは足を止める。
信夫
「センは以前、鏡の木で幻視を見たことがあるんです……」
ケイリン
(目を見開いて)
「ヴァレン?
アエノラの鏡ですか?」
信夫は不安そうに頷く。
信夫
「あなたは、センに何が起きていると思いますか?」
ケイリン
「彼から目を離さないでください。
そして目を覚ましたら、すぐに私に知らせなさい。」
ケイリンは背を向ける。
その足取りは力強く、揺るぎない決意に満ちている。
***
アサの家は静まり返っている。
薪のはぜる音と、壁掛け時計の規則正しい秒針の音だけが空間を満たしている。
アサは机に身を乗り出し、古いノートや年代物の品々に囲まれている。
そのいくつかには埃が積もっている。
彼女はある資料をじっと見つめている。
『ミナモト計画 ― TSUMUGI LABS』
彼女はそれを見つめる。
執拗なほどに。
そして――
コンコンコン。
アサははっとする。
アサ
(警戒しながら、きっぱりと)
「誰?」
沈黙。
そして――
ミナ(ドアの向こう)
「わ……私です……ミナです。」
アサは一瞬、動きを止める。
驚いた表情を浮かべる。
そしてドアを開ける。
ミナが立っている。
フードを被り、背中にはリュックを背負っている。
アサ
「ミナ……
こんな時間にどうしたの?」
ミナは答えずに中へ入る。
アサはすぐにドアへ鍵をかける。
ミナは机の上に広がる書類の数々を見回す。
アサはその視線に気づく。
素早くノートや資料をまとめると、別の場所へ片付ける。
アサ
「お父さんは、あなたがここにいることを知っているの?」
ミナ
「いいえ。」
間。
ミナ
「聞きたいことがあるんです。」
アサは反応しない。
ただ待つ。
ミナ
「母のことを、どこまで知っているんですか?」
アサ
「前にも話したでしょう……
幼なじみだったって。」
ミナは首に掛けたペンダントを引き出し、見えるようにする。
オーレアス。
ミナ
「これのことです。」
沈黙。
アサはためらう……
ミナ
「お願いします……
ただ、何があったのか知りたいんです。」
アサ
「お父さんは何も話していないの……?」
ミナ
「私を守るために死んだって……
崩壊の時に。」
アサは頷く。
そして暖炉のそばに腰を下ろし、炎を見つめる。
沈黙。
その隙にミナは、アサが先ほど隠そうとしていた資料へ目を向ける。
その中に、『ミナモト計画』と書かれたファイルを見つける。
アサ
「誰が引き起こしたか知ってる?
崩壊を……」
ミナ
「綾柳一族です。」
アサの口元に、かすかな苦笑が浮かぶ。
ミナはそっとファイルを引き寄せると、鞄の中へ滑り込ませる。
アサ
「正確には、そうじゃない。」




