学園祭 ③
センはミナを見つめる。
まだ呼吸が落ち着かない。
言葉も出てこない。
ぎこちなく立ち上がる。
視線が重なる。
恐怖。
戸惑い。
そして。
二人とも理解できない何か。
短い沈黙。
センは足元を見る。
倒れたグラス。
こぼれた飲み物。
周囲の生徒たちが不思議そうな顔でこちらを見ていた。
ミナは何も言わない。
そのまま背を向ける。
そして歩き出した。
備品室へ向かう。
掃除道具を取りに行くつもりらしい。
センはその場に立ち尽くす。
迷う。
だが。
気付けば後を追っていた。
少し離れた場所。
原がその様子を見ている。
眉がわずかに動く。
何かがおかしい。
それだけはすぐに分かった。
センは明らかに普通じゃなかった。
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ミナは備品室の扉を開ける。
中へ入る。
バケツを探し始めた。
その直後。
センも入ってくる。
セン
「話がある」
ミナ
(冷たく)
「本当に台無しにするの得意だよね」
ミナはセンを見ない。
棚から雑巾を取る。
その時。
原が近づいてくる。
原慧
「酒井?大丈夫か?」
センは反射的に扉を閉める。
勢いよく。
そして鍵を掛けた。
カチリ。
原は固まる。
完全に予想外だった。
ミナも振り返る。
驚いた顔。
ミナ
「何してるの?」
扉の下から光が漏れている。
会場の照明。
音楽に合わせて色が変わる。
赤。
青。
金色。
セン
「行く前に話したかった」
ミナ
「おじさんから聞いた」
センは目を逸らす。
セン
「簡単な話じゃないんだ」
ミナ
「いつもそう。センは何でも複雑にする」
沈黙。
遠くから音楽が聞こえる。
セン
「俺が望んでることじゃない」
扉の向こう。
原がノックする。
原慧
「酒井?ミナ?」
ミナ
「うん。今出る」
原慧
「今すぐ出てこい」
足元を光が横切る。
二人の顔を照らす。
ミナ
「何が言いたいの?」
再びノック。
セン
「よく分からない……」
沈黙。
色とりどりの光が揺れる。
そのたびに。
センは少しずつミナへ近づいていく。
無意識だった。
セン
「でも……何がしたいのかは分かってる」
ミナは何も言わない。
二人の間の空気が変わる。
張り詰めていたものが。
少しだけ柔らかくなる。
センが近づく。
さらに。
もう一歩。
離れようとしても離れられない。
そんな感覚だった。
ミナ
「セン……何してるの……?」
呼吸が重なる。
センはゆっくり手を伸ばす。
指先がミナの髪に触れる。
視線が絡む。
離せない。
周囲の世界が遠ざかる。
音楽が消える。
残るのは鼓動だけ。
時間が止まる。
唇が触れそうな距離。
その瞬間。
扉が勢いよく開かれた。
二人は同時に距離を取る。
荒い呼吸。
原慧
「出ろ。今すぐだ」
沈黙。
ミナは目を逸らす。
頬が赤い。
何も言わないまま外へ出る。
原は困惑した表情でそれを見送る。
センも続く。
だが。
原が腕を掴んだ。
原慧
「何をしている」
センは答えない。
視線も逸らさない。
その時だった。
日野が走ってくる。
息を切らしている。
日野
「原!今すぐ来てくれ!黒沢が……シェイドを見つけた!」
原の表情が変わる。
センの腕を放す。
原慧
「話は終わっていない」




