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ハロウィン班

狭い廊下。

黄ばんだ照明がぼんやりと灯っている。


原はアヤの部屋の前に立っている。


ドアを叩く。

反応はない。


後ろではミナが周囲を見回している。


原はもう一度ドアを叩く。

今度は強く。

コン。

コンコン。


返事はない。


少し離れた場所で扉が開く。

年配の女性が顔を出した。


近所の女性

「まあ、原さん。どうかなさいましたか?」


原慧

「小林さんが帰っているかご存じですか?」


女性が眉をひそめる。


近所の女性

「昨日の夜から帰っていないと思いますけど……」


沈黙。

原は少し迷う。

そして口を開く。


原慧

「こんなことをお願いするのは申し訳ありませんが...合鍵はまだお持ちですか?」


女性が視線を逸らす。


近所の女性

「ええ……まあ……」


原はその目を見る。


原慧

「お願いします。無事かどうかだけ確認したいんです」


_


数秒後。


扉がゆっくり開く。

部屋の中は真っ暗だった。


原が先に入る。

ミナも後に続く。


照明が点く。

整った部屋。

綺麗に片付いている。

荒らされた形跡はない。


だが。

アヤはいない。


ミナ

「これからどうするんですか?」


原が小さく息を吐く。

考える。


ミナ

「防犯カメラとかないんですか?」


原慧

「ない...アヤは監視されるのを嫌う。だからここに住んでいるんだ」


ミナがソファに倒れ込む。


ミナ

「じゃあ……ネズミにでも聞かない限り...どこへ行ったか分からないってことですか」


その瞬間。

原の表情が変わる。

何かを思い出した。


引き出しを開ける。

棚も探す。

部屋中を探し回る。


ミナは首を傾げる。


やがて。

原の手が止まる。

古い腕時計。


原がミナを見る。

そして近づく。

腕時計を差し出す。

アヤの物だ。


ミナが眉をひそめる。


ミナ

「これで何をしろって言うんですか?」


原慧

「手袋を外せ」


ミナの表情が固まる。

すぐに立ち上がる。

逃げるように。


ミナ

「無理です。私、そんなのできません...難しすぎます。絶対失敗します」


原慧

「ミナ」


静かな声。


原慧

「アヤが危険な目に遭っているなら何かしなければならない」


ミナ

「でも……私、アヤさんのことそんなに知らないし。大事な物を使って記憶を見るなんて...そんな意思の力ありません」


原慧

「やれ」


短い沈黙。


原慧

「ここまでついて来たいと言ったのはお前だ。ならやってみろ」


静寂。

原が続ける。


原慧

「もっと任せてほしいと。ずっと言っていただろう。なら今がお前の番だ」


ミナが大きくため息をつく。


ミナ

「どうやればいいんですか?」


原慧

「人に触れればアウレアスはその人間の記憶を見ることができる。だがその人間にとって大切な物でも同じことができる。成功すればアヤに何が起きたのか分かるはずだ」


***


納屋。

湿った空気が重く漂っている。

アヤは今も椅子に縛られたままだ。


アヤ

「シオ……ごめんなさい」


ハタ シオ

「そんなことしか言えないのか?」


重い沈黙。


ハタ シオ

「君は一体何者なんだ?」


アヤ

「私は……全部を話すことはできない...でも……私たちのことは本当だった。全部」


ハタ シオ

「それじゃ納得できない」


アヤが小さく息を吐く。


アヤ

「私の本当の名前は小林アヤ。個人的な理由でその名前を捨てたの。でも信じて...あなたへの気持ちは本物だから……」


短い沈黙。

シオの視線がアヤへ向く。


ハタ シオ

「こんな状況でも...君は綺麗だな」


アヤがわずかに頬を染める。


ハタ シオ

「さて。どうにかしてここを出る方法を考えないとな」


短い沈黙。


ハタ シオ

「はっきり言っておく俺は黙っているつもりはない」


アヤ

「駄目!」


ハタ シオ

「アヤ。俺はレスベスト・メディアに十年いた。その結果がこれだ。こんなことで終わらせるつもりはない」


アヤ

「お願い、シオ。私はもう友達を一人失ってる。だから信じて。危険すぎるの」


シオがため息をつく。

遠くから列車の音が聞こえる。

単調で。

重苦しい音だった。


***


ミナが勢いよく目を開く。


アヤの腕時計を握っていた。

激しい眩暈が引いていく。

荒れている。


隣で原が見つめている。


原慧

「どうだ?」


ミナ

「分かりません……でも列車の音が聞こえた気がします。それに……寒かったです」


突然。

窓ガラスが弾ける。

円筒形のカプセルが部屋の中へ転がり込む。

直後。

紫色のガスが噴き出す。


原が即座に動く。


ミナの手を掴む。

入口へ走る。

ドアに手をかける。

開かない。

鍵がかかっている。


二人が視線を交わす。


原慧

「クソッ」


次の瞬間。

轟音。


アパート全体が爆発する。

衝撃波が全てを飲み込む。


ミナと原の身体が吹き飛ばされる。

割れた窓の外へ。


原が咄嗟にミナの手を引く。

そして投げる。

向かいの建物のベランダへ。


ミナの身体が宙を舞う。

原はそのまま地面へ叩きつけられる。


轟音。

コンクリートが砕ける。

地面に巨大なクレーターが生まれる。


静寂。


ミナは次々とベランダを飛び移る。

軽やかに。

迷いなく。


やがて原の元へ辿り着く。

路地の照明が明滅する。

不自然だった。


誰も出てこない。

悲鳴もない。

警報も鳴らない。

静かすぎる。


その先。

紫の霧の奥に人影が見える。


セイラム。


原はすぐに気付く。

ゆっくり立ち上がる。


視線がぶつかる。

今度は違う。

ミナがいる。

二人なら終わらせられる。


だが。

紫の霧が揺れる。

その奥から現れる影。

一つ。

二つ。

三つ。

六つ。


全員が仮面をつけている。

鬼を思わせる異様な仮面。

黒い制服。

その姿は。

シェイドやセイラムを思わせた。

冷たく。

威圧的で。

不気味なほど統一されている。


ハロウィン班。


セイラム直属の部下たち。

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