レベル2
ミナの心臓が激しく脈打つ。
目が見開かれる。
分かっていた。
もう一撃も耐えられない。
シェイドが近づく。
一歩。
また一歩。
黒い刀が持ち上がる。
ミナへ振り下ろされようとしていた。
その瞬間――
ドォォォン!!
眩い光。
凄まじいエネルギー。
何の前触れもなく炸裂した。
シェイドの身体が吹き飛ぶ。
激しく。
抗う間もなく。
刀が手から離れる。
根が砕ける。
木々が裂ける。
轟音が森を揺らした。
まるで森全体が震えているかのようだった。
***
その頃――
陸上競技場。
誰もが息を呑んでいた。
鈍い爆音が響く。
足元の地面が震える。
生徒たちの間から驚きと恐怖の声が上がった。
ユウキ
「はぁ!?
今の何!?」
何人もの生徒が森の方を振り返る。
すでにスマートフォンを取り出している者もいた。
不安が瞬く間に広がっていく。
ヒラキ
「おい、ユウキ……」
周囲を見回す。
ヒラキ
「酒井と日野、見なかったか?」
少し離れた場所で。
黒沢が眉をひそめる。
視線は既に爆音のした方向へ向いていた。
黒沢
(数人の警備員を指差しながら)
「お前たち四人。
俺と来い」
その近くでは。
信夫が日野先生と視線を交わしていた。
言葉は必要なかった。
二人の視線が群衆を探る。
一度。
そして二度。
さらに三度。
ミナの姿がない。
センも――。
***
エネルギーの奔流が消えていく。
粉塵がゆっくりと舞い落ちる。
原慧
(サマン越し)
「ミナ!?
ミナ、返事をしろ!!」
ミナが咳き込む。
原慧
(サマン越し)
「よかった……
何があった!?」
ミナはゆっくりと身体を起こす。
そして自分の手を見る。
指の関節に刻まれたルーンは、まだ輝いていた。
だが――
何かが違う。
マグナはもう手だけに留まっていない。
光の紋様が前腕を這う。
肘まで。
アギスも変化していた。
かつて掌から生まれていた光が。
今は生き物のように手首を巡っている。
ミナは言葉を失う。
心臓が激しく脈打つ。
新しい力が全身を巡っていた。
ミナ
(呟くように)
「レベル2……」
原慧
(サマン越し)
「何だと!?」
ミナは答えない。
不意に。
視線が引き寄せられる。
正面。
舞い落ちる粉塵の向こう。
白い影が現れる。
シェイドが立ち上がる。
ゆっくりと刀を拾う。
そして顔を上げた。
その先にいるものを見る。
白い人影。
その瞬間――
シェイドの頭に鋭い痛みが走る。
一瞬だけ。
まるで短い偏頭痛のように。
やがて。
粉塵が晴れていく。
白い光が消える。
そこに立っていたのは――
センだった。
服は破れている。
呼吸も荒い。
それでも立っている。
両腕と手にはルーンが輝いていた。
ミナと同じルーン。
センは何も言わない。
視線だけがシェイドを捉えている。
戦いが始まってから初めて。
彼はもう生き残ろうとしている少年には見えなかった。
戦う覚悟を決めた少年に見えた。
そして。
サマンの中へミナの声が響く。
弱々しく。
わずかに震えながら。
ミナ
(サマン越し)
「セン……ルーンを発動したんです……」
さらに小さな声。
ミナ
(サマン越し)
「一人で」
――
原の目が見開かれる。
原慧
(愕然として)
「……あり得ない」




