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繰り返される悪夢

セイラムが低く唸る。

ひび割れた壁から背中を離す。

肩から埃が落ちた。


戦闘開始以来――

初めて。

本当にダメージを受けたように見えた。


だが。

セイラムは立ち上がる。

二本の刃が再び回り始める。

ゆっくりと。

そして徐々に加速する。


金属の唸り声が再び室内を満たした。


原は待たない。

踏み込む。


マグナがルーンを輝かせる。

ヴィディヤが感覚を研ぎ澄ます。

セイラムの動きが鮮明になる。

より明確に。

より読みやすく。


刃が走る。

原は首を傾けて躱す。

二本目が迫る。

原は身体を捻る。


切っ先が脇腹の数センチ横を通過する。

それでも前へ出る。

さらに近くへ。


マグナを乗せたストレートがセイラムの顔面へ放たれる。


キィン!!


刃が拳を受け止める。

衝撃が部屋中へ響く。

粉塵が床を這うように広がった。


セイラムが後方へ跳ぶ。


原慧

(サマン越し)

「ミナ?

そっちは大丈夫?」


――


森の中――


ミナが拳を振るう。

そしてまた。

さらにもう一撃。

そのたびに。

葉が舞い上がる。

土が弾ける。

粉塵が広がる。


マグナが四肢を燃え上がらせる。

アギスが衝突のたびに炸裂する。

ドォン!!

ドォン!!

ドォン!!


だが。

シェイドは避ける。

何度でも。

横へ一歩。

身体を捻る。

刀を振るう。

まるで嵐の中心で踊っているようだった。


ミナ

(サマン越し)

「もっとマシな日もあったわね……」


その瞬間。

シェイドの姿が消える。

ミナの心臓が跳ねる。

次の瞬間――


シュン!!


黒い刀が斜めに走る。

ミナは後方へ跳ぶ。

だが。

間に合わない。

頬に細い傷が走る。

一滴の血が肌を伝う。

ミナは即座に距離を取った。


原慧

(サマン越し)

「センは見つかったか?」


ミナは袖で血を拭う。

視線はシェイドから逸らさない。


ミナ

(サマン越し)

「ええ……

(短い沈黙。)

一人じゃなかった」


――


原慧

(サマン越し)

「どういうことだ?」


ミナは答えない。


その頃――

原は再びセイラムへ踏み込む。

ストレート。

投げ。

肘打ち。

セイラムが応じる。

刃。

そしてもう一本の刃。

二人は嵐のように会場を駆け抜ける。

テーブルが吹き飛ぶ。

ガラス片が宙を舞う。

ひび割れた柱が崩れ落ちる。

粉塵が噴き上がった。


そして――

二人は同時に動きを止める。

数メートル。

互いを隔てる距離。

荒い呼吸だけが響く。

原は銃を構えたまま。

セイラムは無言で見つめていた。


やがて。

わずかに首を傾ける。

何かを決めたように。


セイラム

「素人が相手だと思っていた」


仮面の奥から笑い声が漏れる。


セイラム

「どうやら違ったようだ」


沈黙。

妙な静けさだった。

不気味なほどに。


セイラム

「だが――

(短い間。)

お前が辿り着く頃には、もう手遅れだ。……また」


原の目が細くなる。


原慧

「どういう意味だ?」


セイラムは答えない。

最後にもう一度だけ刃を回した。

その瞬間。

周囲の粉塵が浮かび上がる。

何かに引き寄せられるように。

ブォォォッ――

紫色の煙がセイラムを飲み込む。


原は即座に飛び出す。

遅い。

手が煙を貫く。

何もない。

空だった。


粉塵がゆっくりと落ちる。

瓦礫も静止する。

そこには誰もいなかった。


そして――

世界が戻る。

サイレン。

悲鳴。

救助隊の声。

警備員たち。

サーチライト。

混乱。


アヤ

「慧!!」


アヤが瓦礫を越えて駆けてくる。


そして。

勢いよく原へ抱きついた。


アヤ

「どこ行ってたのよ!?」


だが。

原にはほとんど聞こえていなかった。

頭の中を回り続ける言葉。


――一お前が辿り着く頃には、もう手遅れだ。


……ミナ。


原慧

「……シェイド」


原はそっとアヤを離す。

そして走り出した。

説明もせず。

立ち止まりもせず。

アヤだけを混乱の中に残して。


アヤ

「慧!?」


***


ミナが再び突っ込む。

だが。

シェイドはそこにいない。

横。

次の瞬間には背後。

そして前方。

まるで森そのものがシェイドの領域だった。


全ての攻撃が流される。

全ての隙が生まれる前に潰される。


シュン――


黒い刀が空を裂く。

直後。

突風が炸裂する。

木々が大きくしなる。

ミナの身体が宙へ吹き飛ばされた。

数メートル。

さらにその先まで。


バキィッ!!


背中が木の幹へ激突する。

樹皮が弾け飛ぶ。

ミナは木の根元へ落ちた。


セン

「ミナ!!」


センが駆け出す。

だが。

シェイドが再び刀を振るう。

突風。

センの身体も吹き飛ばされる。

数メートル後方へ。


数秒間。

ミナは動かない。

膝をついたまま。

片手は地面へ。

もう片方は脇腹を押さえていた。

呼吸が乱れる。

息を吸うたびに顔が歪む。


原慧

(サマン越し)

「ミナ!

そこから離れろ!」


ミナの口から乾いた笑いが漏れる。

血が葉の上へ落ちた。


ミナ

「それをもう少し早く言ってくださいよ……」


シェイドが歩き出す。

ゆっくりと。

刀を手にしたまま。

焦りはない。

まるで結末を知っているかのように。


その時。

原の目が見開かれる。

ある考えが頭をよぎった。

馬鹿げている。

危険すぎる。

それでも――


原慧

(サマン越し)

「二つ目のルーン。

(短い沈黙。)

レベル3」


ミナが顔を上げる。

そして。

信じられないというように小さく笑った。


ミナ

「本気?

(短い沈黙)

私たち、まだレベル2も使いこなせてないのに……」


――


原は全力で街を駆けていた。

息が切れる。


それでも止まらない。

通行人たちが振り返る。

原は探していた。

タクシー。

何でもいい。

少しでも早く辿り着ける手段を。


原慧

(サマン越し)

「ミナ!

言う通りにしろ!!」


――


森の中。

シェイドが歩く。

ゆっくりと。

黒い刀を携えたまま。


シュン――


刃が微かに空気を鳴らす。

枝が折れる。

一本。

そしてまた一本。

シェイドはもう目の前にいた。


ミナの心臓が大きく脈打つ。

ミナは反撃を試みる。

拳を放つ。

最後の足掻きのような一撃。


だが――

シェイドが手首を掴む。

あまりにも容易く。

そして。

地面へ叩きつけた。


原慧

(サマン越し)

「ミナ!!」


原の声には焦りが滲んでいた。

脳裏に浮かぶ。

妹。

タミ。

あの日交わした約束。

もしミナを失えば――

それはタミをもう一度失うのと同じだった。


だが。

またしても。

自分は間に合わない。

あの日と同じように。

何も守れない。

誰一人として。


シェイドが立つ。

ミナの前に。

刀がゆっくりと持ち上がる。

振り下ろされようとしていた。

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