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届かない

シェイドはゆっくりと立ち上がる。


シェイド

「そうしたいなら、それでいい……

ミナ」


ミナは眉をひそめる。

(なんで私の名前を知ってるの……?)

だが考えている暇はなかった。


ミナが駆け出す。

拳が唸る。

一発。

二発。

三発。

マグナが拳を燃えるように輝かせる。


だが。

全て数センチ届かない。

シェイドが下がる。

一歩。

そしてまた一歩。

まるで水のようだった。

攻撃の隙間を滑り抜けていく。

ミナが身体を捻る。

マグナを乗せた回し蹴り。

地面を薙ぐ。


ドォン!!


土が吹き飛ぶ。

葉が舞う。

石が弾ける。

だが。

シェイドはもうそこにいない。

横。

シェイドが現れる。

黒い刀が弧を描く。


シュン――


ミナは即座にアギスを展開する。

光の障壁。

刀がぶつかる。

轟音。

衝撃波。

粉塵が数メートル先まで吹き飛ぶ。

二人の身体が弾かれる。


シェイドは地面を滑る。

ミナは着地する。

既に次の攻撃へ移る体勢だった。


その頃――

センのナイフが震えていた。

木に突き刺さったまま。

刃に刻まれたルーンが脈打つ。

弱く。

そして徐々に強く。

まるで鼓動のように。


ミナが再び仕掛ける。

正拳。

膝。

肘。

マグナが全てを強化する。

ヴィディヤが隙を探す。


だが。

シェイドはそこにいる。

いや――

どこにもいない。

刀だけが見える。

全ての攻撃の前に。


キィン!!

キィン!!

キィン!!


受け流される。

また。

そしてまた。

刀がミナの拳を掠める。

血が一滴。

葉の上に落ちる。


ミナは即座に距離を取る。


その瞬間。

シェイドが一歩踏み出す。

たった一歩。

それだけなのに。

空気が重くなる。

圧力が増す。


その時――

センのナイフが木から引き抜かれる。


ブォン!!


二本の刃が空を裂く。

木々の間を突き抜ける。

一本がシェイドの顔の横を通過する。

刀が動く。


キィン!!


ナイフは弾かれる。

だが。

その一瞬で十分だった。

ミナが飛び込む。

マグナが爆発する。

蹴りが振り抜かれる。


ドォン!!


シェイドが受け止める。

衝撃が森全体を震わせる。

そして次の瞬間――

アギス。

衝撃波が放たれる。


ドォォォォン!!


シェイドの身体が吹き飛ぶ。

数メートル先へ。

葉が渦を巻く。

そして初めて――

シェイドの体勢が崩れた。


ミナは荒く息を吐く。

胸が激しく上下する。

筋肉が悲鳴を上げている。

それでも目は逸らさない。

シェイドを見据える。

強い意志を宿して。


なぜなら――

ミナは気づいてしまったからだ。

これだけやっても。

これだけ追い詰めても。

シェイドはまだ――

本気で戦っていない。


***


原とセイラムの戦い――


まだ粉塵が空気中を漂っている。

砕けた破片が床をゆっくり転がった。

その向こうで。


セイラムが立ち上がる。

二本の刃が再び回り始める。

ゆっくりと。

そして徐々に速く。

金属の唸り声が室内に響く。


原は呼吸を整える。

視線は一度も逸れない。

見ているのは刃ではない。

手首。

肩。

重心。

探している。

ずっと。

たった一つの綻びを。

そして――

見つけた。


ほんの僅か。

ほとんど気づけないほどの違和感。

セイラムの重心が、ほんの僅かに後ろへ残る。


原が踏み込む。

刃が襲い掛かる。

横薙ぎ。

続いて縦斬り。

原は身を沈める。

身体を捻る。

一撃目が首元を掠める。

二撃目が袖を裂く。

それでも止まらない。

さらに前へ。

さらに近くへ。


セイラムが加速する。

刃が残像になる。

紫色の鋼鉄の嵐。

原は手を伸ばした。

アギスが輝く。


ドォン!!


衝撃波が炸裂する。

刃と衝突する。

そして初めて――

回転が乱れた。

セイラムが半歩後ろへ滑る。

それだけで十分だった。

原が懐へ潜り込む。


肘打ち。

腹への一撃。

そして顔面へのストレート。

セイラムは最初の一撃を受け止める。

二撃目を受ける。

三撃目で後退を強いられる。


パンッ!!


ルーン銃が火を吹く。

弾丸がセイラムの胸部へ直撃する。

爆発。

轟音。

衝撃が室内を揺らす。

巨体が宙へ浮く。

背中が壁へ激突した。


凄まじい音。

石壁に亀裂が走る。

粉塵がゆっくりと舞い落ちる。

原は銃を構えたまま動かない。

呼吸は重い。

視線は鋭い。

なぜなら――

既に分かっているからだ。

セイラムのような男が。

こんな程度で倒れるはずがないことを。


***


ミナがシェイドの目前へ飛び込む。


マグナが拳を燃えるように輝かせる。

そして――

叩き込む。


ドォン!!


拳が刀のガードへ激突する。

同時に。

アギスが腕の周囲で炸裂した。

衝撃波が空き地を駆け抜ける。


ミナの足が地面へ沈み込む。

大地が震える。

葉が舞う。

土埃が巻き上がる。

シェイドは数歩後退する。

それでも。

体勢は崩れない。


その少し離れた場所で。

センは歯を食いしばっていた。

ルーンナイフが周囲を旋回する。

刃に刻まれたルーンが微かに脈打つ。


センは意識を集中させる。

シェイドへ向ける。

左。

違う。

右。

ナイフが軌道を外れる。

まるで従うことを拒んでいるようだった。

一本が木の幹を掠める。

もう一本は茂みへ突き刺さった。


センは舌打ちする。

力は感じる。

確かに応えている。

だが――

まだ、自分の意思までは届いていない。

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