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原の頼み

ミナ

「何様のつもりよ、そんなやり方で?」


セン

「ここから出るのを手伝え……そうすればネックレスは返す。」


ミナは瞬きをする。突然、調子を崩される。


ミナ

「出るって?……なんで?」


センは答えない。

ただ無表情のまま見つめる。その視線は、説明するつもりがないことをはっきり示している。

ミナは立ち上がる。苛立ちを隠さずに。


ミナ

「じゃあもういい。勝手にすれば。手伝わないから。」


セン

「そうか。なら、これは預かっておく。」


そう言うと、ためらいもなく窓を閉める。

その動きは落ち着いていて、どこか無駄がない――だが、ひどく腹立たしい。

ミナは一瞬固まる。口を開けたまま。

そして――爆発する。


ミナ

(叫びながら)

「ちょっと!!待って!開けて!今すぐ返して!!」


窓を叩き、今にも割りそうな勢いで揺らす。歯の間から文句を漏らしながら。

その瞬間――信夫がどこからともなく現れる。

まるで騒ぎに引き寄せられたかのように。


信夫

「日野!またお前か?!何をしてる!」


ミナは凍りつく。

手はまだセンの窓に張りついたまま。


一瞬の沈黙。


そして次の瞬間、パニックになり、その場から一気に駆け出す。

茂みの向こうへと消えていく。

信夫はため息をつく。すでに疲れ切った様子で。


***


パトカーのライトが、夕暮れの芝生に流れる血を照らしている。

ひとりの男の体が、地面に横たわっている。

重く張りつめた静寂を、ひとりの少年の叫びと嗚咽が引き裂く。


――


突然、センは目を覚ます。


汗で全身が濡れている。

呼吸を整えるのに、数秒かかる。


――ギシッ。

上の階から、何かを引きずるような音。


センは小さく息を吐き、目を閉じる。

そのまま、もう一度眠ろうとする。


***


翌朝。


中庭は活気に満ちている。朝の光が木々の葉や湿った石畳を照らしている。


センは頭を下げたまま、本館へとまっすぐ歩く。周囲の生徒の集まりには目もくれない。

さりげなくミナのネックレスを確認し、それをポケットにしまう。


そのとき、聞き覚えのある声が彼の足を止める。


雄輝

(大声で、興奮気味に)

「おーい!酒井!」


雄輝が勢いよく駆け寄り、その後ろからヒラキもついてくる。いたずらっぽい笑みを浮かべている。


雄輝

「俺とヒラキでさ……ちょっと話してたんだけど、もし時間あったら、今日の昼、一緒に飯どう?」


ヒラキ

「しかもな、今日は本気で作ったんだぜ。インスタントじゃねぇ、本物の料理だ。」


セン

「いや……遠慮しておく。腹減ってない。」


雄輝とヒラキはぴたりと止まる。まるで足元の地面が消えたかのように。


雄輝

(どもりながら)

「えっ……いや、今じゃなくてさ、昼の話なんだけど……」


ヒラキ

「おい酒井、マジでいいのか?後悔するぞ。俺のカレーは伝説級だぞ。」


センは表情を変えず、そのまま歩き続ける。


雄輝

「なんか……変なやつだな、あいつ。」


ヒラキ

「そのうち慣れるって。気長にいこうぜ、雄輝。」


***


朝の空気はひんやりとしていて、光に満ちている。

賑やかな廊下では、生徒たちが教室へと急ぎ足で向かっている。

声が重なり、足音が磨かれた床に響く。

ミナは自分の教室へ向かっている。

視線は落ちたまま、何かを考え込んでいる様子だ。

人混みの中を進み、かすめる鞄や肩をほとんど気にせず歩いていく。


そのとき――

誰かにぶつかる。

顔を上げる。

原校長。


動かない。

まるで、最初からそこに立っていたかのように。


「日野…ちょっと付き合ってくれ。」


ミナは一瞬だけためらい、それから小さくうなずく。彼の隣に並ぶ。

原校長は背筋を伸ばし、手を後ろに組んだまま歩き出す。周囲の喧騒など存在しないかのように。


少し離れた場所で、日野先生が教室から出てくる。

その視線がすぐに二人を捉える。

動きが止まる。

眉をひそめる。

だが、それ以上は何もしない。


ミナは周囲をちらりと見渡す。

生徒たちの足がわずかに緩む。

視線が集まる。

小さなざわめきが広がる。


ミナ

「なんか…みんな見てるんだけど。ちょっと気まずい…」


原は答えない。

いや――その言葉を受け流した。


「酒井センのこと、どう思う?」


ミナは目を瞬かせる。驚いた様子だ。


ミナ

「酒井セン?えっと…よく分かんないけど…なんで?」


「彼に近づけ。」


ミナは眉をひそめる。


ミナ

「は?なんで私が?」


「酒井は、もうお前のことを信頼してる。本人は気づいてないけどな。」


ミナは立ち止まり、その場で固まる。


ミナ

「…は?」


原はそのまま歩き続ける。

まるで会話が終わったかのように。

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