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回想――始まり

原慧は、妹タミの動かない体を抱え、アエノラの神殿を後にする。

石が遠くで崩れ続けている――取り返しのつかない敗北の苦い余響。


慧は森の中へと進む。足取りは重く、機械的だ。

腕の中で、タミを強く抱きしめている。

彼の視線は、ただ彼女だけに向けられている。


その顔は動かない。

あまりにも、動かなさすぎる。


男の声が静寂を破る。


信夫

「慧!!」


続いて、もう一つ。

不安にかすれた声。


アヤ

「タミ!!」


慧は足を止める。


数メートル先、三つの人影が木々の間から現れる。

信夫、日野、そしてアヤ。


彼らの足が、その場で止まる。

タミの動かない体が兄の腕の中にあるのを見た瞬間、時間が止まったかのようになる。


押し潰すような沈黙が森に落ちる。


アヤは震える手で口元を押さえ、悲鳴を押し殺す。

そのまま足の力が抜ける。


アヤは地面に崩れ落ち、目を逸らすことができない。


信夫は立ち尽くす。

表情のないまま、衝撃に凍りついている。


日野の唇が震える。


日野

「アサ……?」


慧は何も言わない。


日野は前に進む。迷いのない足取りで。

慧の横を、目も向けずに通り過ぎる。


日野の視線は、山の上にあるアエノラの神殿へと向けられている。

まだ間に合うかのように。

行けば届くかのように。


原慧

(低く、砕けた声で)

「日野……」


ただ一言。


日野は止まる。

ぴたりと。


肩が固まる。

手が強く握り締められる。


日野は振り返らない。


理解している。


その後に訪れる沈黙は、どんな言葉よりも重い。

もう手遅れだ。


風が木々の間を吹き抜ける。


日野は神殿を見つめる。唇が震えている。

そして、感情を押し殺すように、ゆっくりと頭を下げる。


***


空は低く垂れ込み、灰色の雲が大地を押し潰すように覆い、重苦しい静寂が広がっている。

砂利道の先に、一軒の古びた家がぽつんと立っている。周囲には静まり返った畑と、動かない木々。


公式の式はない。

弔辞もない。

ただ、閉ざされた表情だけがある。


家の庭の中央に、大きな木。

太い幹には時の痕が刻まれ、広がる枝は自然の屋根のように空間を覆っている。風が葉を揺らす。


その木の根元に、ひとつの墓。

新しい土に覆われている。


簡素な石。

タミ・原。


慧は墓の前に立っている。動かない。

拳は強く握られ、関節が白くなっている。


数歩後ろで、アヤは視線を地面に落としたまま立っている。

信夫は少し離れた場所に、まっすぐに立ち、沈黙している。まるで固まったように。

少し後方で、日野がそっと眼鏡を直す。涙を隠すかのように。


誰も口を開かない。


木が静かに軋む。その根は、まるで墓を抱きしめるように絡みついている。


慧の頬を、ひと筋の涙がこぼれる。

彼はすぐにそれを拭う。まるでその弱ささえ拒むかのように。


そして踵を返す。


アヤが後を追う。


アヤ

「慧……」


慧は足を止める。振り返らない。


短い沈黙。


アヤ

「これ、受け取って。」


慧はわずかに顔を向ける。


アヤは古びたネックレスを差し出す。

タミのネックレス。


慧はそれを見つめる。二度と見たくなかったものを目にしたかのように。


「自分で渡せばいいだろ。」


アヤ

「いいえ。」

(間)

「あなたがやるべきことよ。分かってるはず。」


慧はしばらく目を伏せる。

そして妹の墓へと向き直る。


タミの墓の前に、一人の少女が立っている。五歳ほどの小さな子ども。大きすぎるコートに包まれている。

栗色の髪と、ほとんど金色に近い瞳。彼女は理解できないまま、木の葉を見上げている。タミの娘、ミナ。


慧はミナを見つめる。長く。


その視線は拒絶と、認めたくない悲しみの間で揺れている。


アヤ

「約束したでしょ……」


慧はようやくアヤを見る。

その言葉が、刃のように胸に突き刺さる。


しばらくして、彼は手を伸ばす。ゆっくりと。

まるで気が進まないかのように。


指がネックレスを掴む。


冷たい金属に触れた瞬間、タミの顔が慧の脳裏に浮かぶ――鮮明で、痛みを伴い、振り払えない。


消えることのない記憶。

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