回想――タミはどこだ?
トンネルは地下の広間へと続いている。
戦闘によって引き裂かれた、古い聖域の入口。
折れた柱。ひび割れた古代の紋様。砕けた石片が、床に散乱している。
抵抗勢力は、兵士たちの進行を食い止めようとしていた。
だが――
防衛線は、メートルごとに崩れていく。
銃撃が跳ね返る。
叫び声が、爆発音に混ざり合う。
原慧は、速度を落とすことなく広間へ入る。
視線が空間をなぞる。
次の瞬間。
鋭く旋回。
すでに銃口は照準を合わせていた。
一発。
銃声が響く。
弾丸が石の柱を――紙のように貫く。
岩を粉砕し、そのまま兵士のヘルメットを撃ち抜く。
その兵士は崩れ落ちる。
地面に触れる前に、すでに死亡していた。
左側で、動き。
側面の通路から、兵士が飛び出す。
慧は跳ぶ。
その身体は、完璧な弧を描く。滑らかで、制御されている。
空中で、射撃を調整。
抑えられた銃声。
弾丸が、兵士の装甲を貫通する。
武器を持ち上げる間もなく。
慧は低い姿勢で着地する。
すでに、次の動きへ。
黒い拳銃が、彼の手の中で静かに脈動する。
銃身に刻まれたルーンが、一瞬だけ光る。
まるで――武器が、彼と共に呼吸しているかのようだった。
慧は進む。
一発。
また一発。
射撃は正確で、外科的。
兵士たちは次々と倒れていく。
脅威の正体を理解する前に――刈り取られる。
慧は、混沌の中心に道を切り開く。
周囲の爆発など、意に介さない。
そして――
止まる。
指を二本、喉に当てる。
原慧
「サマン。」
喉に、ルーンが現れる。
不安定な光で脈動する。
原慧
「タミ……どこにいる?」
――何もない。
ルーンが揺らぐ。
原慧
「タミ!」
それでも、応答はない。
ただ、戦闘の喧騒だけが響く。
その背後。
兵士が一人、忍び寄る。
慧は旋回する。
手首のわずかな動き。
〈スペクトラル照準のルーン〉が起動する。
世界が、遅くなる。
弾丸が――止まって見える。
慧は撃つ。
一。
二。
三。
三人の兵士が、ほぼ同時に崩れ落ちる。
その身体は重く地面に倒れ――
まるで静止した映像のように固まる。
時間が、再び動き出す。
その背後で。
クロダは、口を半開きにしたまま見つめていた。
冷たい感覚。
慧の一歩一歩は、計算されている。
だが――ためらいがない。
まるで。思考が及ぶ前に、すでに身体が答えを知っているかのように。
慧はクロダの肩を掴む。
物陰へと引き寄せる。
その視線は、厳しく、切迫している。
原慧
「守護者たちはどこだ?!」
***
爆発音は、次第に遠ざかっていく。
慧は、崩れた最後の通路を抜ける。
そして――
アエノラの神殿、主室へ。
対比は、激しい。
ここでは――混沌が、止まっているかのようだった。
巨大な空間。
奥の壁には、巨大な鏡。
淡い光が差し込む。
その表面は、完全に滑らかではない。
わずかに揺らいでいる。
まるで、凍りついた水。
わずかな遅れを伴って、部屋を映し出していた。
床には、ルーンの円。
数メートルにわたって広がっている。
古く、摩耗しているものもある。
いくつかは、まだかすかに光る。
他は、ひび割れ、消えていた。
側面。広間を見下ろす位置に、五つの石の座。
威圧的な造形。
神殿そのものから削り出されたもの。
一つは無傷。
残り四つは――砕かれている。
広間では、人々が動き回っている。
負傷者を起こす者。
支える者。
全員が黒いスーツ。
発光する線は、埃と血でくすんでいた。
中央。
一人の若い女性。
避難を指揮している。
暗い髪を束ねている。
疲労の中でも、鋭い視線。
首元のネックレス。
まだ機能している。
石が、明るく光っていた。
慧は、すぐに彼女を認識する。
原慧
「アサ。」
アサは振り返る。
集中から――驚愕へ。
アサ
「慧! 酒井隼人がすぐそこまで来ている!」
原慧
「タミはどこだ?」
アサは歯を食いしばる。
アサ
「慧……聞いて—」
原慧
「妹。どこだ。」
低い声。容赦がない。
沈黙が落ちる。重い。息苦しいほどに。
そして――
気配。
アサの背後。
空気が凍りつく。
人影が現れる。ゆっくりと。
まるで――影から引き出されたかのように。
高い。動かない。
長い黒のローブ。硬い線。
その上を走る発光の糸。
脈動はない。
まるで、古い傷跡のように刻まれている。
その男は――老いている。
盲目。無表情。
額の中央。淡い縦のルーン。
――糸の守護者。
アサの身体が、強張る。
アサ
(小声で)
「……守護者。ここを離れてください。今すぐ。」
守護者は答えない。
その顔は、慧へと向けられている。
糸の守護者
「タミ・原は裏切りの罪で裁かれた。」
原慧
(抑えた怒り)
「ふざけるな。」
糸の守護者
「タミは、トラメの均衡を損なう形で、異常を隠蔽した。」
慧は一歩前に出る。
手の中の拳銃が、わずかに震える。
原慧
(抑えた怒り)
「完全に狂ってる。」
アサ
「慧……」
糸の守護者
「どうやらお前も……原慧。
その……異常の隠蔽に関与していたようだな。」
低い轟音。
神殿を走る。
原慧
(怒り)
「妹はどこだ?!」
守護者は、わずかに頭を傾ける。
糸の守護者
「タミの運命は、すでにトラメの手に委ねられている。」
鈍い鼓動が響く。
広間全体に。
そして――
爆発。
広間が、引き裂かれる。




