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倉庫 ― 後編

轟音が、なお空気を震わせている。

まるで建物の奥底から響いてくる残響みたいに。

細かな埃が、ゆっくりと降り続ける。

灰色の粉塵。

崩れゆく世界に降る灰みたいに、静かに積もっていく。


その静まり返った混沌の中で――

シェイドが立ち上がる。

肩と黒い仮面から、砂埃がさらさらと滑り落ちる。

軽く咳き込みながら、視界を覆う霧を払う。

周囲を見渡す。

すべてが灰色だった。

すべてが霞んでいる。

輪郭のはっきりしたものは、もう何一つない。


シェイドは慎重に歩き出す。

やがて――

床に倒れたまま動かない人影を見つける。

原慧。


シェイドは近づく。

そして、その身体を見下ろすように立つ。


原は動かない。

気を失っている。


シェイドは無言で彼を見つめる。

観察するように。


その時――

足音。

センとミナが駆け込んでくる。


シェイドは即座に姿を消す。

粉塵の中へ溶けるみたいに。


ミナが原の隣へ駆け寄り、膝をつく。


ミナ

「大丈夫?!」


原慧

(息を切らしながら)

「ああ……問題ない……」


センも原の元へ駆け寄る。

身体を支え、立ち上がらせる。


原慧

「ここを離れるぞ……

建物が崩れる前に」


センは最後にもう一度だけ振り返る。

濃い霧の奥。

敵が消えた場所へ。

悪寒が背中を走る。

なぜかは分からない。

だが、確信していた。

――また会う。


建物が、不気味に軋む。

天井の一部が崩れ落ち始める。


ミナ

「酒井……早く!」


センは原とミナの後を追い、走り出した。

_


ギリギリのところで、三人は外へ飛び出す。

センが振り返る。

倉庫が、少しずつ崩れ始めていた。


セン

「危なかった……。

で、誰か説明してくれませんか――」


最後まで言い切る前に。


原が、センの襟を掴む。


_


次の瞬間。

センは原に襟を掴まれたまま、原の執務室へ放り込まれていた。


セン

「おい!」


ミナ

「ちょっと、やりすぎです!」


原は部屋の入口に立つ。

ミナの前へ身体を滑り込ませるように。


原慧

「ミナ。

今は関わるな」


そう言って、背後で扉を閉める。


ようやく二人きりになる。

原とセン。


センは警戒していた。

距離を取ったまま。


セン

「……今度は俺をどうするつもりですか」


原は、暗い目でセンを見つめる。

重い緊張が空気を満たす。


セン

「殺す気ですか?」


原が、わずかに笑う。


原慧

「どうしてそう思う?」


セン

「その目、知ってるからです。

俺も同じ目をしてた。

兄貴が死んだ時」


その瞬間――

原の眉から力が抜ける。

まるで、心のどこかが予想外に静まったみたいに。

沈黙。


原はゆっくり息を吐く。

ようやく決断したみたいに。


彼は部屋の大きな時計へ歩いていく。

何年も止まったままの時計。

文字盤に刻まれたローマ数字が、薄暗い光の中で鈍く輝いている。

原は迷いなく、III と VII を押す。


カチリ――

小さな音。


次の瞬間。

止まっていた歯車が動き始める。

本棚の壁が、ゆっくりと左右へ開いていく。

その奥から――

下へ続く階段が現れる。


センは思わず近づく。

呆然としていた。

何も言えない。

ただ、その光景に呑まれている。


原慧

「降りない選択もできる。

その場合は――

お前の記憶から、今夜のことを消す」


静かな声。


原慧

「だが、降りるなら……

覚悟しておけ。

この先でお前が何になるのか――

もう、お前自身でも止められなくなる」


センは考える。

迷う。

深く息を吸う。

握っていた拳が、ゆっくりほどける。

まだ迷っている。


それでも――

センは、一歩目を踏み出した。


その瞬間。

階段の松明が、一つずつ灯っていく。

揺れる火が、壁に影を踊らせる。

センは圧倒されながらも、目を逸らさない。

決意を宿したまま。

一段ずつ、下へ降りていく。


原慧

「……まあ。

そもそも俺、記憶の消し方なんて知らない」


二人は、そのまま階段を降りていく。

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