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倉庫 ― 影

三人の仮面の男たちが、原慧とミナに向かって突進する。

原慧は拳銃を構える。

銃身に刻まれたルーンが、青白く輝く。


狙う。

撃つ。

光の弾丸が空気を裂く。

弾丸は、男の手を貫く。

男のナイフが床へ落ちる。

そして――

轟音。

手が、血と光を撒き散らしながら爆発する。

男が悲鳴を上げる。


二人目は、すでにミナへ迫っていた。

刃が、恐ろしい速度で空気を裂く。

だがミナは、攻撃が届く前に動いている。

滑るように攻撃の間を抜ける。

一歩。

回転。

紙一重の回避。

まるで、攻撃される前から見えているみたいに。


センはその場で固まる。

目を逸らせない。


ミナは掌を向ける。

目の前に、光るルーンが浮かび上がる。

次の瞬間――

衝撃波が炸裂する。

男の身体が倉庫の向こうまで吹き飛ぶ。

金属の壁に激突する。

耳をつんざくような轟音が、倉庫中へ響いた。


ミナ

「第一ルーン!」


間を置かず、ミナと原慧が互いの手を重ねる。

指先が、一瞬だけ絡む。

そして、勢いよく引き離す。

まるで空間そのものを引き裂くみたいに。


ミナと原慧

「マグナ!」


二人の指の関節に、ルーンが浮かび上がる。

エネルギーが脈打つ。

激しく。

不安定に。


三人目の男が即座に襲いかかる。

原慧は身体を捻る。

刃がコートをかすめる。

そのまま男の腕を掴む。

体勢を崩し――

ミナの方へ投げ飛ばす。


ミナが跳ぶ。


ドゴッ。


蹴りが男の胸へ叩き込まれる。

衝撃で、足元の床が砕ける。

粉塵が周囲へ爆発する。

男は重く地面へ落ちた。

気絶している。


手を失った男が、痛みに歯を食いしばる。

そして突然、横へ走る。


原慧が即座に反応する。

撃つ。

弾丸が男の足を貫く。

男は悲鳴を上げながら床へ崩れ落ちる。

だが、すでに――

最後の男が、真っ直ぐミナへ突っ込んでいた。

速すぎる。


センは考えるより先に動く。

小さな彫刻用ナイフを握ったまま飛び込む。

ガキィン――

刃が男の手へ突き刺さる。


攻撃が、ミナの顔の数センチ手前で止まる。

刃の風圧が、彼女の髪をわずかに揺らした。

ミナが勢いよく振り向く。

その目がセンとぶつかる。


原慧は無言で、その光景を見ていた。

そして――

ほんの一瞬。

センの瞳が白く染まる。

薄い膜に覆われたみたいに。

だが次の瞬間には消えていた。

元通り。

センは何も気づいていない。

何も感じていない。

だが、ミナは見た。

原慧も。


背後で、苦しげな呻き声が響く。

傷を負った男が、まだ動こうとしていた。

原慧はゆっくりとセンから視線を外す。

そして、床の男へ銃口を向ける。


原慧

「ショーは終わりだ……

泣くなら今だぞ」


引き金を引く。

弾丸が男の股間を貫く。

絶叫。

男の頬を、涙が流れ落ちる。

センが顔をしかめる。

ミナですら、わずかに目を逸らした。


原慧は男の前にしゃがみ込む。

落ち着いている。

周囲では、すでにガスが広がっていた。


原慧

「さて――

誰のために動いている?」


男が口を開く――


ザシュッ。

沈黙。


身体が止まる。

血がコンクリートへ流れる。


センが一歩後ろへ下がる。

誰も攻撃を見ていない。

男の首が、重く床へ落ちた。


ミナは呆然としている。

その時――

闇の中から声が響く。

静かで、冷たい声。


謎の男

「死人は、滅多に喋らない」


足音。

ゆっくり。

金属的な音。

カツン。

一歩。

カツン。

二歩目。

カツン。

巨大な影が、ガスの中からゆっくり現れる。

大きい。

全身黒づくめ。

鬼のような仮面。

仮面の暗い隙間の奥に、目は見えない。

倉庫の空気が、急に重くなる。

原慧は即座に銃を構える。


原慧

「ミナ。第四ルーン」


返事はない。

原慧の視線が動く。

そして止まる。

ミナが消えている。

センも。


原慧の心臓が、一瞬だけ強く脈打つ。

ガスが周囲をゆっくり渦巻いている。

謎の男も消えている。


原慧は銃を構え直す。

目が、わずかな動きも探している。

深く息を吸う。

冷静さを保とうとしながら。


原慧

「……幻覚か?」


指先が、銃に刻まれたルーンへ触れる。

瞬間、ルーンが光を放つ。


原慧

「姿を見せろ!

お前は誰だ?!」


男が、背後に現れる。


謎の男

「シェイド。

お前には止められない影だ」


原慧は振り向きざまに拳を叩き込む。

だが、その拳は幻を貫くだけだった。

男の姿が霧みたいに消える。

粉塵が舞い上がる。

さらに霧が濃くなる。

仮面の男が、数メートル先に現れる。

静かに。

圧倒的な存在感を纏いながら。


原慧

「幻術を使える一族は、一つしかない」


シェイド

「もし俺が綾柳なら――

(間)

お前は、もう死んでいる」


その瞬間、原慧の視線が止まる。

男の手首。

そこに取り付けられたガス散布装置。

慧の脳内で、状況が高速で組み立てられていく。


原慧

「綾柳じゃないなら……何者だ」


シェイドが飛び込む。

二人の身体が激突する。

鈍い衝撃音。

容赦はない。

息をつく暇もない。

拳が空気を裂く。

衝撃音が、ガスに満ちた倉庫へ響き渡る。

原慧はストレートを防ぐ。

フックを逸らす。

だが次の拳が脇腹へ突き刺さる。

身体が揺れる。

さらに二撃。

速い。

速すぎる。

それでも原慧は崩れない。

その目は、一切揺れていなかった。

拳に刻まれたルーンが輝く。

荒々しいエネルギーを脈打たせながら。

慧は歯を食いしばる。

身体を捻る。

そして、凄まじい速度で拳を叩き込む。

拳が残像みたいに霞む。

エネルギーを纏った右フック。

シェイドの側頭部へ直撃する。

凄まじい衝撃。

男の身体が数メートル吹き飛ぶ。

金属床を滑り、そのまま再び霧の中へ消えた。

原慧は片膝をつく。

荒い呼吸。

ほんの数秒。

呼吸を整えるためだけの時間。


その瞬間――

悪寒。

シェイドの姿が再び現れる。

今度は別の場所。

まるで、現実と現実の隙間を移動しているみたいに。


シェイド

「お前は、理解できないものと戦っている。

……もう負けている」


声が、どこからともなく響く。

原慧はゆっくり立ち上がる。

口元の血を拭う。

目が細まる。


原慧

「お前を倒す必要はない……」


鋭く振り向く。

霧の中の曖昧な影へ銃口を向ける。

銃のルーンが、眩く輝く。


原慧

「幻を壊せばいいだけだ」


引き金を引く。

ルーンが、太陽みたいな光を放つ。

圧縮された爆発みたいな閃光が、霧の中を一直線に貫く。

空気が震える。

裂ける。

轟音が壁を揺らした。

光が――

幻を焼き払っていく。

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