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センへのインタビュー

生徒たちの流れは、そのまま続いていく。

まるで何も起きていないかのように。

アヤメたちの笑い声が、少しずつ遠ざかっていく。

ミナは、センの視線に囚われたまま動けない。

言葉も出ない。

センの両手が、しっかりと彼女を支えている。


セン

「……大丈夫?」


ミナは口を開く。

けれど、声が出ない。

一度だけ視線を逸らす。

恥ずかしさを隠すように。

それでも、もう一度センを見る。

センはすぐには手を離さない。

まだ数秒、彼女の腕に触れたまま――

ちゃんと立てているか確かめるように。


ミナ

「……うん」


ようやく、センは手を離す。

それでも視線は外さない。

責めるわけでもなく。

冷たいわけでもない。

ただ――心配しているだけ。


セン

「そっか。行くぞ」


ミナはうつむく。

まだ、センの手の温もりが残っている。

胸が締めつけられる。

痛み。

安心。

そして――名前のつけられない感情。


それ以上言葉を交わすこともなく、

二人は再び歩き出す。

大ホールへ向かう、生徒たちの流れの中へ。


***


大ホールはざわめきに満ちていた。

カメラのフラッシュ。マイク越しの声。椅子を引く音。

生徒たちは小さなグループで順番を待っている。

緊張で固まっている者もいれば、騒がしく話している者、ぼんやりと考え込んでいる者もいる。


エマは三脚の列の後ろに座り、椅子の背にもたれかかる。

大きくため息をつく。

周囲を見渡す。


バッジをいじり続ける緊張した生徒。

インクが漏れたペンに悪戦苦闘している記者。

奥で小声で話す教師たち。

――つまらない。

その一方で――


サムは、この混沌の中でひとり輝いていた。

マイクを手に、満面の笑み。

震えるほど緊張している生徒に身を乗り出す。


サム

「読書が好きになったきっかけって、何ですか?」


生徒

(少し落ち着きながら)

「父の影響で……小さい頃、家に大きな本棚があって。なんていうか……あそこが、二人だけの場所だった気がします」


サムは心から感心したようにうなずく。

まるで、その答えが世界で一番素晴らしいものかのように。


サム

「いい話ですね。ありがとうございます!コンテスト、頑張ってください!」


生徒は少し照れながらも、安心したような笑顔で去っていく。


そのとき――


センとミナが大ホールに入ってくる。

インタビューの喧騒が空気を満たす。


雄輝

「酒井!こっち!」


センは、即席の列に並ぶ雄輝とヒラキのもとへ向かう。


セン

「何してんの?座らないのかよ」


ヒラキは芝居がかったポーズを取る。二本の指を立て、どこかの観客に応えるように。


ヒラキ

「見ての通り、インタビュー待ちってやつだよ……」


セン

「俺はパス」


雄輝

「いいじゃん、ちょっとくらい!」


センは呆れたように目を逸らす。


一角では、原慧が記者たちの対応をしている。

彫像のように、微動だにせず。

その視線が、ゆっくりとホールを見渡す。

そして――止まる。

ほんの一瞬。

センの姿に。

次の瞬間――

原慧はわずかに身体をずらす。

エマの視界が開ける程度に。

その瞬間、エマがセンの姿に気づく。


動きが止まる。

目を見開く。


そしてサムの腕を何度も肘でつつく。


エマ

(小声で、興奮気味に)

「サム!見て!あそこ……酒井セン!」


サムが勢いよく振り向く。

目が輝く。

カメラを掴み、さっきの生徒をそのままにして走り出す。


エマも後を追う。

二人は、獲物を見つけた捕食者のようにホールを横切る。


雄輝は二人が近づいてくるのに気づく。


雄輝

「お、ちょうど――」


言い終わる前に。

エマがすでにマイクを突き出していた。


エマ

「酒井さん!お兄さんが亡くなったとき、その場にいたんですよね?!

あの夜、何があったんですか?!

本当に事故だったと思っているんですか?!」


――凍りつく。

空気が、一瞬で止まる。

ざわめきが消える。

動きも、音も。

すべてが、消える。

無数の視線がセンへと向く。

驚き。

恐怖。

好奇心。

爆弾のように投げられた言葉に、誰もが釘付けになる。

センは動かない。

灰色の瞳がわずかに揺れる。

呼吸が、止まりかける。


世界が、息を呑む。


原慧は、その様子を見つめている。

微動だにせず。


センは、反応する暇もない。

すでに――

何十ものカメラが向けられていた。


記者たち

「彼じゃないか?!

酒井センだ!

酒井さん、こちらです!」


記者たちが押し寄せる。


エマ

「どいて!最初に見つけたのは私よ!」


記者たち

「酒井さん、こちらを向いてください!」


エマ

「本当に、目の前でお兄さんが亡くなるのを見たんですか?!」


センは答えない。

答えられない。

その瞳から、少しずつ光が消えていく。

視線は遠くへ滑っていく――まるで、割れたガラスの向こう側へ消えてしまうみたいに。


エマの問い。

――何かが、壊れる。

センだけじゃない。


原慧の中でも。

まるで――

自分が、その質問を向けられたかのように。


フラッシュが止まらない。

その光が、交互に照らしていく。

センの顔を。

そして、原慧の顔を。

まるで――

誰が記者たちの獲物なのか、分からなくなっていくように。

質問が、銃弾のように飛び交う。

まるで――

センと原慧、どちらに向けられているのか分からないほどに。


記者たち

「酒井さん! 以前の学校で生徒を殺しかけたのは、この件が原因なんですか?! 」


記者たち

「お兄さんの死以降、問題行動を起こすようになったというのは本当ですか?! 」


記者たち

「なぜお父様はこの件について一切インタビューに応じないんですか?! 」


その瞬間――

一本の手が、センの目の前にあったカメラを掴む。


全員の動きが止まる。

センと記者たちの間に、巨大な影が立っていた。


原慧。


次の瞬間――

わずかな手首の動き。

――バキッ。


カメラのレンズが砕け散る。


誰も声を出せない。

その場にいる全員が、ただ呆然とその光景を見ていた。


センはゆっくりと顔を上げる。

自分の前に立ち、壁のように記者たちを遮る原慧を見つめる。

一筋の涙が頬を伝う。

本人は、それにすら気づいていない。


原慧

(記者たちに)

「……出て行ってください。」


空気が、凍りつく。

その場にいた全員が、本能で理解していた。

逆らってはいけないと。

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