表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/65

その瞳

翌日。


センは目を開ける。

視界がはっきりするまで、数秒かかる。

あの木。

鏡。

ビジョン。

原の言葉。

すべてが――断片的に、戻ってくる。

そして――

ざわめき。

最初は遠く。

だんだんと、はっきりしていく。


――


センは部屋を出る。


寮の廊下は、生徒たちでごった返していた。

興奮した空気。

あちこちでグループができている。

直前まで見直しているやつもいれば、露骨にパニックになっているやつもいる。


生徒

「やばい、めっちゃ緊張する…」


生徒

「わかる…最下位とかだったらどうしよ…」


センは人混みの中を進む。


雄輝

「おーい!酒井!」


雄輝とヒラキが近づいてくる。


雄輝

「昨日の夜、悪かったな…」


ヒラキ

「マジでパニクっててさ…」


セン

「だろうな。」


雄輝とヒラキは気まずそうに顔を見合わせる。


雄輝

「まあ、それはいいとして…問題、手に入った?」


セン

「いや…全然。何も見つかんなかった。」


雄輝は爪を噛む。


雄輝

「終わった…」


ヒラキ

「落ち着けって、雄輝。とりあえず、できるだけやろうぜ?」


雄輝はじっと彼を見る。


雄輝

「“できるだけ”ってさ…そういうこと言うやつって、大体人生終わってるよな。」

センは思わず小さく笑う。


***


校門の前は、警備が強化されていた。

バリケードが設置され、記者たちは列を作って順番を待っている。

その様子を、黒沢が鋭い目で見張っていた。

信夫は記者たちを対応している。

手際よく、無駄のない動き。


――そのとき。


小さな声。


「……ねえ。」


信夫は眉をひそめる。

周囲を見回す。

誰もいない。


「ねえってば!」


信夫は近くの茂みに近づく。


ゆっくりと――


サムが顔を出す。


信夫

(小声で)

「サム?お前、何してんだよ。ダメだって言っただろ」


サム

「お願いだって、いとこ……おじいちゃん、俺たちが助け合ってるの見たらさ、絶対喜ぶって」


信夫

「その“おじいちゃんカード”出すな!こっちはクビになるかもしれないんだぞ!」


サムは両手を合わせる。


サム

「頼むって……これ、人生最大のチャンスなんだよ。俺たち、ちゃんと大人しくするから。ほんとに」


信夫は目を細める。


信夫

「“俺たち”?」


一瞬の沈黙。


そして――


エマが、茂みからゆっくり顔を出す。

信夫は目を閉じ、額を押さえる。


エマ

「お願いします、信夫さん。ご迷惑はおかけしません」


信夫は二人を見つめる。

サムとエマはまったく同じ表情をしている。

無垢な目。


信夫は深くため息をつく。


少し離れた場所、校舎の影の中で――

原慧は様子を見ている。

無言で。

その視線が、信夫から――二人の記者へと移る。

信夫がサムとエマを校舎の入口へ案内していくのを見届ける。

……そして、視線を外した。


***


全校生徒120人が、コンテストのために大ホールへ向かっている。

ミナは、不安そうな表情で歩いている。


ミナ

(心の中で)

「なんでセン、昨日部屋にいなかったの…?

まさか…お父さんの話、聞いてたとか…?

やばい…それはさすがに気まずすぎる…」


そのとき、人混みの中にセンの姿が見える。

フードをかぶり、視線を落としている。


ミナは歩くスピードを上げる。


ミナ

(心の中で)

「……どうしよう。なんて声かければいいの…?」


その瞬間――

声に遮られる。


アヤメ

「日野。」


アヤメがミナの前に立つ。


アヤメ

「今日の服、もうちょっとどうにかならなかった?

同じチームなんだけど、一応。」


ジュン

「いいじゃん、アヤメ。

どうせ記者はあんたしか見ないって」


アヤメはくすっと笑う。


アヤメ

「まあね。」


ミユが一歩近づく。

じっと見下ろすような視線。


ミユ

「そもそもさ…あの子に興味持つ人なんていないでしょ」


三人が笑う。

ミナは少しだけ視線を落とす。


その直後――

ミユが軽く肘で押す。


強くはない。

けれど――

十分だった。

ミナのバランスが崩れる。

よろける。

手をつかない。

そのまま――

落ちる。

喉が締まる。

力が抜ける。


――そのとき。

誰かの両手がミナを受け止める。

ミナは顔を上げる。


センがそこにいる。


灰色の目が、まっすぐ彼女を見ている。


数秒のあいだ、ミナはそのまま彼の目に引き込まれる。

センの瞳の奥に――

白い、奇妙な靄が広がる。

まるで、何かに覆われているかのような。

どこか、異様なほどに澄んだ光。

ミナはわずかに眉をひそめる。

目を逸らせない。

抗えないまま――その異様な感覚に、引き込まれていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ