↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
106/111

私情

センは瞑想用の座布団に座っている。


眼下には寺が広がっている。

静かだ。

薄闇を見つめ、

夜の音に耳を澄ませている。


そこへ――

提灯を手にした信夫が、

静かに近づいてくる。

隣に腰を下ろす。

二人とも何も言わない。


沈黙が流れる。

長い間。


信夫

「ミナが攫われた。」


センがわずかに信夫の方を向く。

身体が固まる。


信夫

「……シェイドに。」


センは言葉を失う。

数秒、

視線を逸らす。


セン

「……どうやって?」


信夫

「分からない……

(間。)

日野とミナは、

ビーヴ村の家にいた。」


センが立ち上がる。


信夫

「どこへ行く?」


セン

「ミナを探しに行く。」


信夫も立ち上がる。


信夫

「どこにいるかも分からないんだぞ。

(間。)

一度、学校に戻るべきだ。」


セン

「……戻ってください。」


信夫が小さく息を吐く。

センの肩に手を置く。


信夫

「酒井……」


センが信夫へ手を伸ばす。

その瞬間――

見えない力が信夫を弾き飛ばす。

信夫の身体が数メートル後ろへ滑る。

すぐに体勢を立て直す。

眉をひそめる。


そして――

動きを止める。


セン

「もう……」

(間。)

「二度と。その名前で呼ばないで。」


センはそのまま歩き去る。

信夫は動けない。

ただ、

遠ざかっていくセンを見つめている。

そして、

今まさに現れ始めたセンの力に、

言葉を失う。



***



シェイドがようやくアジトへ戻る。


冷煌との戦いの傷が、

まだ身体に残っている。

一歩進むたびに、

痛みが走る。


ハロウィンのメンバー二人に支えられながら、

監視室へ向かう。

シェイドが扉を開ける。

十数台のモニター。

ABMニュース本社ビルの爆発映像が、

繰り返し流れている。


記者

「当局は今回の爆発について、

シェイドと名乗るテロリストによる犯行と見ています。

救助隊の迅速な対応により、

幸い死傷者は確認されていません……」


部屋を沈黙が包む。

義はモニターから目を離さない。


「……何があった?」


シェイドは答えない。

ヨシがようやく振り返る。


「俺たちは何年もかけて……

この計画を築いてきた。」


セイラムは黙ってシェイドを見ている。


シェイド

「必要だった。」


義が乾いた笑いを漏らす。


「違う。

(間。)

あれは私情だ。」


再び沈黙。


「俺の知ってるシェイドは、

感情に任せて動いたりしない。」


一歩、

シェイドへ近づく。


「今じゃ、どのメディアもお前の話ばかりだ。

(間。)

街中が酒井の味方につく。」


さらに一歩。


「なら教えてくれ……

(間。)

そこまでの代償を払って、

何を得た?」


その瞬間――

シェイドが義の襟元を掴む。

一気に持ち上げる。

鬼の面からは、

何の感情も読み取れない。


だが、

掴む手に力がこもる。

義の呼吸が詰まる。

苦しそうにもがく。


セイラムがシェイドの肩に手を置く。

ただ、

それだけ。

シェイドの手から、

ゆっくりと力が抜ける。


義が床へ落ちる。

荒く息を吸う。


シェイド

「出て行きたいなら……

出て行け。

(間。)

だが――

理解できない決断を……

(さらに間。)

俺たちの大義への忠誠心の欠如と、決して混同するな。」


義は目を伏せる。

何も答えない。

そのまま部屋を出ていく。


静寂が戻る。

セイラムは数秒待つ。


セイラム

「……これからどうする?」


シェイドはもう一度、

モニターを見る。

炎。

記者たち。

鳴り響くサイレン。


シェイド

「娘を斎藤に引き渡す。

(間。)

予定通りだ。」


それ以上、

何も言わない。

シェイドは部屋を後にする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。