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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 左兵衛佐


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第93話 潜入


 さて、地下6階層のエレベーターに到着した。

 青いリボンをかざすと、魔力が反応し左右の扉がスライドしてエレベーターの内部空間が現れた。


 エレベーター内のスイッチは「6」が点灯しており、今回の探索でも順調にエレベーター可動範囲を拡張できたことを示している。

 …うん、その点は実に順調なんだ。


 実際、今回の探索では装備の更新と予備武器の獲得がよく進んで、つい先ほどまでは内心ウキウキでいたんだ。

 でもなぁ…。


 股間と太もものあたりに視線を落とすと、綿甲と衣類がやはり黒焦げになっている。

 こんなの絶対怒られるじゃん…。


 …こうなれば、新たな漂人が到来していることに期待するしかない。

 まさか二連続で運否天賦になってしまうとは…、あの時の甘い戦闘判断が悔やまれる。


 俺は祈るような気持ちで「1」のスイッチを押下した。





 …ダメか。

 いや、他人の受難を希うような浅ましい心を恥じよう…。


 エレベーターの扉が開いて地下一階層の気配を感知したが、新たな漂人がやって来ている気配はない。

 俺は念のため、エレベーターを動かして地下2階層や地下3階層に遭難中の探索者パーティがいないか気配を探ってみるが、そのような気配は感じられなかった。


 …いや、いいんだ。

 誰も危機に陥っていないことは、素直に喜ぶべきなんだ。


 今回は率直に油断したことをエリカに謝って…、叱責を受けている間はなるべく神妙な表情を崩さないようにして…、ああでも嫌だなぁ…。


 懊悩する俺のテンションは下がり続け、コボルトどもを相手に行うクールダウンにも身が入らないまま地上を目指していた。

 そしてとうとう、地上に通じる石階段が視界に収まる。


 …ん?

 これは、もしや…。


 俺は早足で石階段を登る。

 なぜならば、地上の光に目を慣らす必要が無いからだ。


 地上に踏み出してみると、果たしてそこには夜の帳が下ろされた静寂の世界が広がっている。


 俺は夜番の衛士に確認するが、間違いない。

 …今は真夜中だ。


 またしても天は我を救いたもうた。

 俺は南区方面へと家路を急ぎながら、途中で焦げた綿甲とズボンを脱ぎ捨てて区境を流れる川に遺棄した。


 鎖帷子の他は下穿きだけの不審人物になってしまったが、真夜中であるし潜伏を駆使しながら移動すれば問題ではない。

 誰に見つかることもなく、俺は自宅に到着していた。


 …気配を窺うと、寝静まる家族の気配と不寝番を務める…これはベニートだな。

 そう、いま我が家には警護の人員を置いているのである。


 なんでもこの規模の商家が警護を置かないのは不用心らしく、実際に我が家の入り口付近にも宿直用の部屋が元から用意されている。

 傭兵の斡旋をエリカは提案してきたが、俺は交流のあるブラスたちに声をかけることにした。


 彼らは迷宮でパーティを半壊させたことで探索者を引退していたが、不労所得で生活するほどの基盤は構築していなかったのだ。

 今は地上で警護の仕事などをしていると俺は知っていたので、3人とも我が家の警護に雇い入れたというわけである。


 この場面、警護の3人の中では斥候のセルヒオがもちろん一番手ごわいのだが、他の二人もベテランの探索者あがりで油断はできない。

 俺は慎重に我が家の塀を越えて敷地内に侵入すると、そろそろと母屋に忍び込む。


 …ベニートは中央のホールに陣取っているな。

 たしかにあそこなら、奥の部屋に行くにも2階に上がるにも必ず通る場所である。


 壁際から様子を窺うと、蝋燭の灯りを片手にもう片方の手は腰の長剣の柄に置いて真面目に警護の任についているベニートが見えた。

 頼もしいことだが…ちょっと今日は困るな。


 死角を盗むか…さすがにベニートは臨戦態勢でないらしく、その穏やかなクロックは死角を盗みやすい。

 俺は断続的ではなくどっぷりと死角に潜ったまま、ベニートの脇を抜けて屋敷の奥へと滑り込む。


 そして寝室の扉を慎重に開けると、安らかに寝息を立てているエリカが見えた。

 静かに装備類を外して俺用の櫃に納めて…、完全に下着だけになった俺はエリカの隣に滑り込む。


「…ん、んぇ? シュウさん…?」


「…帰ったぞ」


 さすがに目を覚ましてしまったエリカに俺は口づけをして、無事の帰還を報告する。

 戸惑っていたエリカだったが、俺が抱き締めていると落ち着いたようだ。


 そうなると当然、俺は両手を徐々にエリカの曲線へと沿わせていく…。











 …ああ、俺は帰って来たんだ。


 家族に聴かれてはなるまいと声を潜めるエリカと俺は、忍ぶように密やかに幾度も幾度も幾度も愛を交わすうちに、抑えがたい熱情の昂りにどちらからともなく流されて、やがて夜の屋敷に響きわたる悦声と俄かに引き起こされる地揺れにより、家族の全員が俺の帰還を認識するに至るのであった。



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