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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 左兵衛佐


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第86話 食卓


 朝の空気の中、俺は庭に設置した特注のスクワット台枠の中でバーベルを担いでいる。


 呼吸を整えて胸を反らし、腹圧を高めて腰の革ベルトのテンションを感じたら、地面に対して真っすぐに尻を降ろしていく。


 太ももが地面と水平になるまで降ろしたら、今度は膝を伸ばして立ち上がる。


 この時に勢いをつけたりせず、膝もロックしないで、なるべく骨格に重量を負わせずに下半身の筋肉で受けて止めていくのだ。


 最近は10回ワンセットでは時間が掛かって仕方ないので、トレーニング理論的にはどうかと思うのだが20回ワンセットで各種目を行っている。


 どうも位階上昇のせいか異常なまでに筋持久力も高まっているので、こうでもしないと丸一日かけてもトレーニング種目が終わらなくなってしまうのだ。


「ふうぅ…ぐ!」


 俺は息を吐き出しながら20回目のスクワットを終え、がしゃん、とスクワット台枠にバーベルを下した。


 ちなみにスクワットのトレーニング重量は現在540ディブラで、これが何㎏相当なのかは相変わらずよく分からない。


 …まあ迷宮内で発揮されている身体能力からすると、これも専門のウェイトリフティングの競技重量に近いような重さなのかもしれない。


 最近はウェイトプレートが大きくなりすぎるので、鍛冶屋に相談したところ値は張るが鉄よりも比重の重い合金を使ってくれている。


 よし、呼吸が戻ったらすぐにもう一度いこう。

 朝飯までにはもう1種目終わらせたいからな、そうしないとマジで一日で終わらん。


 まあこれも、全てのトレーニングを1日に詰め込むことをやめればいい話なのだが…。

 でもそうすると迷宮探索をする日が減っちゃうからね。


 俺はスクワット台に乗せられたバーベルを再びくぐり、大腿四頭筋の力でゆっくりと持ち上げた。





「シュウさ~ん、朝ごはんにしますよ~」


「お、わかった。今いく」


 母屋のエリカが朝食の支度ができたことを教えてくれた。

 先日にエリカとアデリナさんの入居も無事済んで、昨夜からはタマラたちと共に家事を担当してくれている。


 一気に女手が増えたものだから随分楽だとドロテア婆さんも言っていたし、ジーナやヴィクトルもすぐに懐いてくれたので、現在の俺の生活拠点は中々よい感じになってきているんじゃないだろうか。


 というわけで、トレーニングの間に朝食を挟んでいこう。

 いや、たぶん3食全て挟まるのだが。


 俺は食卓が据えられている部屋に入ると、長いテーブルの一番奥の席についた。


 別に俺は家長権を主張した覚えはないんだが、みんな何かにつけて俺を首座に座らせようとするので、まあ抵抗するのも面倒なので受け入れている。


 皆もう席について待っていた様子で、これも待たなくていいと言ったんだがこうなってしまっている。


「遅くなって悪かったな、じゃあみんな食べよう」




「あんたのドッタンバッタンは、どんどん長くなっていくねえ…」


 俺がテーブルの真ん中に置かれたパンを人数分に千切っていると、ドロテア婆さんが呆れたように言う。


 たしかに、当初婆さんのポーション店の庭で始めたときは半日くらいで済んでたからな…、いずれ一日で収めるのは無理になってくるだろう。


「シュウ兄ちゃん、ありがとう!」


 俺からパンを受け取ったヴィクトルが喜んでいる。

 最近、ポーション店時代よりも柔らかくて良いパンを見つけたので、それ以来この食べ盛りはご機嫌という訳だ。


 あ、そうそう。

 どうも家族のパンを千切って分けるのも家長の仕事っぽいのだが、その役割を振られてよく分からずにやっていたら後から知ることになった。


 …まあ、俺が家族として認められているなら、何の役割であれ文句はないか。


「ところでシュウ兄ちゃん、なんで夜中に鍛錬してたの? エリカ姉ちゃんと組み打ちしてたでしょ」


 ガシャン、と音を立ててエリカがスプーンを取り落とした。


 慌ててタマラがヴィクトルの口を押さえようとするが、ヴィクトルは剣術ごっこで鍛えた上半身スウェーでそれを躱している。ふむ、だいぶいい動きになったな。


「ほんとだよ! トイレに起きたら、ちょっとドアが開いてたんだ! でもシュウ兄ちゃん酷いんだよ! エリカ姉ちゃんはもう許してって、何回も降参してるのに…むぐぐ!」


 やっとタマラの手がヴィクトルを捕捉して食卓に平穏が帰って来た。

 顔を赤くして俯くエリカ以外の、家族の視線が俺に集まる。


 …謝ったらいいかな?


「うふふ。ちゃんと、ドアを閉めてくださいね? 私にもこの子の声がちょっと聞こえてきました」


 ほんわかとしたアデリナさんの追撃が入ったところで、俺は頭を下げて今後は注意することを家族に誓った。



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