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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 右近衛将監(左兵衛佐)


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第63話 世話焼き


 すぽん。


「わーっ、すごーい!」


 すぽん、すぽん。


「シュウ兄ちゃん、カッコイイ!」


 俺がコボルトの首を刎ね飛ばすたびに、ジーナとヴィクトルから歓声が上がる。

 コイツらさっきまでメソメソしてた割には、魔物との戦闘を見ることにはそれほど忌避感が無いんだな。


「シュウさん、すみません…。ほら、あなたたち、静かになさい!」


 長女のタマラに叱られて二人はいっとき口をつぐむが、俺が魔物と戦闘に突入するたびにまた歓声を上げる。

 まあ、暗くなるよりはいいか。


 3人が地下1階層の奥地で遭難していたため時間が掛かったが、ようやく地上への階段が見えてきた。




「おい、また漂人を見つけて来たのかよ!?」


「見ての通りだ。すまんがエリカを呼んでくれ」


 俺が3人を連れて迷宮から姿を現したものだから、衛士のウーゴは目を丸くして驚き固まっている。

 やがて再起動したウーゴは、隣にいた年若い衛士に声をかけて漂人局へと走らせた。


「しかし、こんなにポンポンと漂人が来るのも珍しいけどよ、子供ばっかりの漂人てのも初めて見たぜ…いや、そうか…」


 ウーゴはそこまで言ったところで、何かに思い至って渋面を作った。

 …うん、まあそうだろうな。


 現にタマラたちは子供ばかりの3人でこの世界にやって来た。

 しかしウーゴは過去にそのような例を見たことが無いという。


 つまりは、過去に子供たちだけでやって来た漂人は、生きて地上に到達することが無かったのではないだろうか。


 今回も偶然あのタイミングで俺が地下1階層に戻って来なければ、3人はどうなっていたかわからない。


「シュウさん! 子供の漂人を見つけたって!?」


 お、来たか。

 エリカには色々と説明しなくては。






「お婆さん、月影草をすり潰しました。これでどうですか?」


「どれどれ…、ちょっとまだ筋が残ってるね。もっと均等に手早くやるのさ」


 タマラが掲げた薬研を覗き込んで、ドロテア婆さんはすぐに瑕疵を見抜く。


 さすが婆さんはベテランの薬師だけあって知見が深いな。

 俺には薬の良し悪しは分かるが、何をどうしたらよいというアドバイスまでは出来ないからな。


 姉弟たちを婆さんに引き合わせて2日、いま俺たちは総出で店に出すポーションの仕込みをしているところである。


「婆さん、こっちの腑分けも終わったぞ」


「すごい…、あんなに早く…」


 俺はポイズントードの解体と毒腺の処理を担当していたが、クラスのアシストもあってかまたたく間に今週分の下拵えを終わらせた。

 それを見たタマラは何やらしょんぼりしてしまっている。


「タマラや、シュウと比べたらいけないよ。あんなのと比べたら、いずれアタシだって廃業しなきゃならないさ。アンタは丁寧で筋がいいんだから、今度はこうやってごらん」


 いやぁ、俺のポーションでは味が酷すぎて売れないと思うがな…。


 それにしてもドロテア婆さんは随分とタマラを気に入ったみたいだな。

 今も手取り足取りと言った様子で薬研の擂り方を指導している。


 下の2人も手伝いで薬房を動き回っていて、ドロテア婆さんからの評価も上々である。

 まあ、末っ子のヴィクトルは俺が鍛錬を始めると、薬房を抜け出しては見学に来てしまうのだが。


 何にせよ姉弟は住み込みで働いていけそうだな。

 俺の想像通りタマラには「薬師」のクラスが確認されたし、若すぎてまだクラスが不明の2人も、何かしら手に職がつけばこの世界で暮らしていけるだろう。


「あ、そうだ。婆さん、俺はこのあと出かけるから、夕飯は4人分だけでいいぞ」


「なんだい、アンタもう迷宮かい?」


 ドロテア婆さんは俺が連日の迷宮行をすると勘違いしてか、しかめ面をしている。

 これが悪くするとエリカに告げ口されるので、婆さんの機嫌も軽視できないんだよな。


 しかし、今回はその心配は無用だ。


「いや、このあとエリカが迎えに来るからな。迷宮探索じゃない」


 詳細を説明すると長くなるので要約するが、引退後の計画について考えることを忘却していた俺は、エリカの憤怒に直面してしまい、苦し紛れに資産運用について協力を頼んだのだ。


 するとエリカは早くも不動産の目星をつけて来たので、今日はそれらの下見に行くわけである。

 などと俺が考えていると、急にドロテア婆さんが気色ばんだ。


「なんだって!? それを早くお言いよ! それで、どこまで行くんだい?」


 えーと、東区とかなんとか言ってたな。

 俺はこのポーション店と漂人局、迷宮の他はいくつかの店舗しか知らないし、土地勘が無いからよく分からんぞ。


「東区だね…、じゃあここがいいよ。ここは清潔で昔から評判がいいんだ」


 婆さんは街区の地図板を持ち出して来て、俺に何やら説明を始めた。

 なんだ? 婆さんもおススメの不動産があるのか?


「婆さん、そこには何があるんだ?」


「何って、そりゃ連れ込み宿だよ。ここは知り合いの店だから、安心おし」


 …何を言ってるんだ、この婆さんは?


「それから、これは食後に飲むんだよ。これ一粒で朝までできるからね。」


 いや、だから何を言ってるんだ、この婆さんは?


「ああでも、アンタので朝までされたんじゃあ、エリカの方が持たないね。じゃあこっちの薬をエリカに…」


 いや、だから落ち着けよ婆さん。

 何の誤解をしてるのかは知らんが…あ、この気配は。


「シュウさーん、いらっしゃいますかぁ?」


「さぁ、上手くやるんだよ!」


「タマラ姉ちゃん。シュウ兄ちゃんは何を上手くやるの?」


「ダ、ダメよ。静かに応援してなさい」


「お兄ちゃん、頑張ってね!」


 なんなんだこのカオスは…。



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