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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 右近衛将監(左兵衛佐)


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第59話 ドラゴンスレイヤー


 「破戒僧」どもが残した宝箱を調べると、いや調べる前から臭いで分かっていたが爆弾の罠が仕掛けられている。


 そういえば、この世界には黒色火薬が存在するにもかかわらず、なぜ火器が使われていないのだろうか?


 地上の錬金術師の店では硫黄も普通に流通していたし、硝石も氷菓子を冷やすのに使用されているのを目撃している。


 木炭なんて言わずもがなありふれた物質であるから、あとはこれらを混ぜ合わせるだけで黒色火薬となるのだが。


 というか、黒色火薬の現物がいま目の前にあるじゃないか。

 …迷宮で生み出される物と地上のテクノロジーに因果関係があるかどうかは知らないが。


 それはさておき、例によって単純極まるウォード鍵を解除すると、中からは硬貨と宝石、そして直剣が出てきた。


 こうして宝箱から出現する武具の中には、ときおり禍々しい気配を発して明らかに手に取ってはならないと分かる物もあるのだが、これは違うな。

 むしろ、良質な魔力を感じさせる。


 こうした魔力を秘めた武具は地下3階層から稀に出現するようになり、地下4階層では前回の探索の通りその頻度が高まってくる。


 その結果、前回は大量の胸甲を持ち帰ることとなったわけだ。


 さてこの直剣。

 鞘を抜き払ってみると60cmほどの鋭利な刀身が現れ、片手握りの拵えも堅牢で良い出来だ。


 いわゆるショートソード分類の剣だろうが、ボドワンに渡した物より一回り大ぶりで…、あ、そうだこれはボドワンに良さそうだな。


 俺はやはり片刃刀剣の方が手に馴染むし、これはボドワンに土産としてやるか。


 ちなみに、何も馴染みだけで片刃刀剣を選択しているわけではない。

 刀剣の構造上、片刃の方が峰の厚みに対して鋭い刃を形成できるのだ。


 まあ、刀身の横幅いっぱいを片方の刃に向けて使えるので、その分だけ三角形の頂点を鋭角に出来るという当たり前の理屈である。


 そして当然、弱点もある。

 片方しか刃が無いので斬撃の際は刃面を相手に向けないといけないし、なにより突いて使うには両刃剣に軍配が上がるだろう。


 刀が湾曲しているので突きにくいということも勿論あるが、目標に突き刺さる際に片刃なので峰が進入の抵抗となるのだ。


 その点、両刃ならば切っ先から刃まで均等に広がっていくので抵抗が少なく、たとえどちらかに侵入角が偏ったとしても、どちらも刃なので問題が無い。


 まあ要するに、斬ることに優れた片刃剣と突くことに優れた両刃剣という、おおよそのイメージ通りの話である。


 ボドワンの突き技を起点する技法には、この剣はうってつけだろう。




 次なる標的を求めて彷徨う俺の知覚に、巨大な魔物の気配が飛び込んで来た。

 俺は迷宮の一角にある扉に身を寄せて中の様子を窺う。


 ふむ、ドラゴンだな。

 コイツなら投擲の目標としても申し分ないが、その前にもう一つ試したいことがあるぞ。


 俺は腰袋から伸びる剣の柄を掴み、三尺ほどの美々しい刀身を持つ直剣を抜き放った。

 これは前回の探索で発見した武器で魔法効果が不明だった代物だが、漂人局の鑑定でその正体が判明した。


 名称は『ドラゴンスレイヤー』

 その名の通り、竜の眷属に対しては恐るべき毒刃として作用する魔法効果を持つらしい。


 エリカからは高値での買い取りが可能だと言われたが、俺はその魔法効果に興味を持ったのでこうして所持する武器の一角に加えているのである。


 なんでもドラゴンの被害が多い地方の領主が常時求めていて、金銭だけでなく名誉や知遇も得られるそうだが。

 興奮しながら売却を勧めてきたエリカには悪いが、俺は地上のことにはあまり興味が無いんだ。


 …それよりも、恐るべき毒刃とやらを見てみたいじゃないか。


 俺は高まる鼓動を抑えながら、努めて冷静に室内の気配を分析する。

 ドラゴンの数は3、落ち着いていけば難しい数ではないな。


 よし、いくぞ。

 頑丈な扉を蹴り開け、俺は一陣の疾風となって室内に吹き荒れた。


 手近なところで首を下していた1匹に薙ぎ斬りを浴びせ、その首を刎ね飛ばす。

 これでは魔法効果も何も分からん!


 返す刀で左にいる1匹の胸元に振り下ろしの斬撃を浴びせた。

 お、これは!?


 ドラゴンの鎖骨を断ち割り体内に進入した刃は、俺の身体から一瞬で魔力を吸い出しドラゴンへと送り込んでいく。


「ギョアアアアア!」


 飛び退って様子を窺うと、斬撃を受けたドラゴンは苦痛に身悶えして…、爆ぜた。

 あたかも体内で爆弾がさく裂したかのように四分五裂したドラゴンの肉片が、周囲に飛び散りやがて塵と消える。


 こりゃあ、毒どころじゃないぞ。


「ギュギュッ!?」


 残りの一匹のドラゴンは、同胞の変わり果てた姿を目撃して臆したか巨体をこわばらせている。


 戦意喪失だろうか? いや、喉を膨らませて、乾坤一擲の吐息を準備している。

 それをさせてやるつもりは無いぞ。


「ギュブ!?」


 一足で彼我の距離を無にした俺は、身体ごとぶつけるようにして直剣の切っ先をドラゴンの胴体に捻じ込ませた。

 やはり、直剣は突きに適しているな。


 今度は剣の作用に任せるだけでなく、俺の方からも渾身の魔力を送り出す。

 凄いぞ、自分の身体以上に魔力が良く通る。まるで超伝導体だ。


「キョ…バァ!」


 猛烈な内圧に晒されたドラゴンは四分五裂どころか百分千裂となって室内の全ての面に飛び散り、暗緑色の染みとなったかと思えば忙しなく塵と化していく。

 途端に強い倦怠感が俺を襲い、不覚にも迷宮の石畳にへたり込んでしまった。


 はぁ、はぁ…。

 面白かったが、少しはしゃぎ過ぎたな。



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