表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 右近衛将監(左兵衛佐)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/85

第52話 エリカ


「ていっ!」


 コボルトの直剣にショートソードを絡ませたボドワンは、巻き落とすと同時に手首のスナップで巧妙にコボルトの小手を切り裂く。

 ふむふむ、突きが主体の剣術だけあって小手撃ちの技法も充実しているわけか。


「…はっ、はっ、もう無理だよ! シュウ、助けて!」


 3体目のコボルトの胸を突いて仕留めたところで、ボドワンは泣きを入れてきた。


 彼の弱点は体力だろう。

 無駄な動きの少ない洗練された剣術を駆使しているというのに、あっという間に息が上がってしまうのだ。


 しかしそれは鍛錬次第でどうとでもなるし、なによりこの世界には位階上昇がある。

 剣術の基礎を修めている彼ならばそう難しい話でもないだろう。


 俺が槌鉾を振って残りのコボルトを砕くと、ボドワンはまた石畳に突っ伏してしまった。


「もう無理だよ…。僕はもう動けない」


 とか何とか言っているが、目の前に魔物を追い立てると剣を取って戦うので次々と魔物を嗾けているところだ。

 まあ、それももう終わりではあるが。


 迷宮の通路の先には、地上の光が差し込む階段が見えている。

 それを伝えるとボドワンは俄かに元気を取り戻し、俺を急き立てて速足に階段を目指し始めた。


 やっぱりまだ動けるじゃないか。





「シュウか! お前また5日も潜りやがって、口止めされてもエリカには…、お、まさかそいつは?」


 迷宮の入り口に詰めていた衛士のウーゴは、目ざとくボドワンが新漂人であることを見抜く。

 まあ毎日探索者の顔ぶれを見ているだろうし、新顔にはすぐ気づくのだろう。


「ああ、新しい漂人だ。地下1階層の奥で発見した」


「でかしたぞ! おい、だれか漂人局へ行ってこい!」


 わたわたと衛士たちが動いて、ボドワンをねぎらう者やら漂人局へ向けて走る者やらで一気に騒がしくなった。

 これでエリカも来てしまうだろうが、ボドワンの対応にかかりきりになるだろうから叱責は回避される寸法である。


「ボドワンと言います。ここには急に来てしまって、何が何だか…」


「ああ、それは今から来るのが説明してくれるぞ。しかし、一人で来た奴が無事に地上にたどり着くとは幸運だぜ」


 そういうものなのか。

 そういえば、以前に俺が救援したブラスたちのパーティも、3人組で元の世界からやってきた漂人とこの世界の探索者3人による混成だと聞いたな。


 シーロたちのパーティは全員が漂人だが、初めから6人全員でこの世界にやって来たとか。

 初めから複数人でやって来るケースが多いのか、それとも1人で来た者は地上にたどり着けないことが多いのか。


 これから地下1階層を通る際は、新たな漂人が来ていないか注意することにしよう。

 などと考えていると、漂人局の方から聞きなれた声が聞こえて来る。


 よしよし、駆けつけたエリカは狙い通り衛士たちと話し込んでボドワンを…、あれ?

 もう一人女性が来ているな。誰だろうか。


 見慣れない女性がボドワンの対応に当たり、漂人局の建物へと誘導していく。

 そして俺の眼前にはエリカだけが残った。


「シュウさん。お手柄ですが、その前にお聞きしたいことがあります」


 いや、その。

 5日間も迷宮探索をしていたせいか、俺も疲れがあって…。


 あ、まさにそのことについて話があると?

 はい。




 ボドワン救出の手柄のお蔭か、俺はエリカの叱責から小一時間で解放された。

 戦利品の提出の前にエリカから聞き出したいことがあるので、まずそちらから着手することにしよう。


「エリカ、実は俺からも話がある」


「なんですか? 珍しいですね」


 俺の真剣な様子に気付いたのか、エリカも椅子に座り直してまっすぐに視線を向けて来る。


「以前に指摘された通り、俺は迷宮で闘うことに喜びを見出している。そのために、この世界にやって来たんだ」


「…」


 エリカは口を開かず、俺の言葉を聞いている。

 真剣な表情で背筋を伸ばしているが、どこか物悲しそうな気配を漂わせていて、俺は言葉を続けることに僅かな罪悪感を覚えた。


 しかし、避けては通れん。


「俺は今回、地下4階層に潜った」


「…!」


 驚きの色と、諦めの色が混じった感情が見て取れる。

 本当にクルクルと表情の変わる、面白い娘だ。


「そこで、勝てないと思わせる敵に出くわした。教えてくれ、過去に地下4階層で強敵が現れたという記録はあるか?」


「…」


 俺の問いに今度は逡巡の色を浮かべている。

 知らない、という反応ではなさそうだな。


 あの迷人どもに打ち勝つためにも、ここで是非とも情報を聞き出したい。

 俺はエリカの手を取り、その瞳を覗き込んだ。


「エリカ。俺は迷宮の奥底に惹きこまれそうになったとき、お前のことを思い出して地上に帰還することができた」


「…私が?」


「ああ、そうだ。お前のおかげで、俺は帰って来ることができる」


 エリカは俺の言葉を反芻しているのか、視線を伏せてなにやら考えた後、意を決して力強い眼差しを俺に向け直した。


「…次も。次も必ず帰って来ると約束してくれるなら、教えてあげます」


 こりゃ、約束を破ると怖そうだな。



★★★★★やブックマークはもちろんのこと謎スタンプもいただけますとモチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ