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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 右近衛将監(左兵衛佐)


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第48話 ネズミ狩り


 どれほどの時間が経っただろうか、俺は迷宮の一部になってしまったかのように静かに潜伏し続けている。

 部屋の中にいる迷人どもの、その一挙手一投足を脳裏に焼き付けるために全身の神経を集中しているのだ。


 やがて、五感を超えて伝わってくるエネルギーの波動も分析できるようになった。

 これまでただ魔物の有無を探るためだけに受信してきた波動だが、感覚を研ぎ澄まして波動に意識を向けると、その種類が判別できるのだ。


 たとえば、扉の中には4人の魔法タイプの迷人がいると推定できるが、その波動を詳細に分析すると2つの種類に分かれている。


 片方はかつて俺に火炎の魔法を浴びせた「魔法使い」の迷人と同系統の波動。

 もう片方は、俺に初めて魔法の洗礼を与えた聖職者風の迷人、これは「破戒僧」と呼ばれるタイプの迷人だろう。


 重装甲の迷人はやはりこの地下4階層で遭遇した甲冑迷人と同系統の波動で、もう一人の気配を殺した迷人は…、分からない。

 伝わって来る波動そのものが微弱過ぎて、解析を試みてもすぐに霧散してしまうのだ。


 だがまあ、こうした性質の波動はすぐに類型が見つかったので、推定はできる。

 その類型とは、俺自身である。


 今まさに迷宮の暗闇に潜伏している俺自身が、これに似たタイプの波動を極々僅かに漏らしているのだ。


 つまり、気配を消した迷人の正体はニンジャだろう。

 この世界では「暗殺者」と呼ばれているようだが、どう見てもニンジャなので俺はニンジャと呼んでいく。


 さて、できる限りの偵察情報を集めることはできたし、もうここを離れなくてはならない。

 なぜならば、俺の潜伏している通路の先から別の魔物集団の気配が接近しつつあるのだ。


 危険な迷人部屋のすぐ近くでドタバタと戦闘を行うわけにはいくまい。

 ここは大人しく撤退しよう。


 気配を消したまま、俺はゆっくりと後退を開始する。

 あまりに長時間静止していたためか、全身の筋肉からはギシギシと抗議の声が上がった。


 通路の先から向かってくる気配はおそらくネズミ人間。

 こちらを発見している様子はなく、ゆっくりとした進行速度なので俺も無理せずに少しずつ後退していけばよい。


 挟み撃ちに陥らないように前後の気配を慎重に探りながら、例の迷人部屋から十分に距離を取ったところで、俺は奇襲の態勢に移行した。


 凝り固まった身体を解すためにも、こいつらに協力してもらおう。

 俺は袖から棒手裏剣を引き抜くと、両手に握り込んでネズミ人間が射程内に踏み入る時を待つ。


 …あの迷人部屋を攻略するための課題に、早速取り組んでみるか。

 すなわち、開幕の投擲で魔法タイプの迷人4人を必ず仕留めなければならない。


 投擲の直後には重装甲迷人やニンジャ迷人との接近戦に突入するだろうから、そこで魔法タイプを一人でも打ち漏らしていると致命的なことになってしまう。


 一息で確実に4人に命中させる。

 しかも、女戦士風の迷人を棒手裏剣で仕留め損ねた例があるので、確実に一投一殺を実現する威力も必要だ。


 魔物の隊列が見えてきた。

 丸盾と曲刀を携えたネズミ人間、数はおあつらえ向きに4体だ。


 俺は集中力を高めながら、投擲動作を何度も脳内で繰り返して最適化する。

 そうこうするうちに、ネズミ人間が全て射程内に入った。


 行くぞ。


「キッ!?」


「ヂャッ!?」


「キュッ!?」


「…!?」


 ちっ、4体目に盾で防がれた。

 3体までは首尾よく額を棒手裏剣で貫けたが、投擲している最中に4体目には反応されてしまった。


 可能な限り迅速に投擲したのだが、本番を想定してほぼ正面から仕掛けたため、やはり防御されるまでの時間的猶予が少ない。

 さほど強力な魔物でもないネズミ人間が相手でもこれなのだから、もっと鍛錬が必要なことは明らかだ。


 さて、もうこのネズミ人間に用は無いので片付け…、いや待てよ。

 俺の投擲を警戒して盾を掲げているネズミ人間を見て、俺はふと思いつく。


 あの迷人部屋を攻略するには投擲の回転速度も必要だが、必ず一撃で仕留める威力も必要なのだ。

 ネズミ人間が掲げている粗末な木製盾くらいは、貫いて仕留めるべきではないか?


 …よし、ネズミ人間をなるべくたくさん探し出して標的にしよう。



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